第15話 サブスクリプション

文字数 1,489文字

 最近よく聞くサブスクリプションとは顧客が企業の商品やサービスを長期にわたって購入し続けるビジネスモデルの事を言う。略してサブスクと言われる事も多い。
 具体的に言えば毎日自宅に届けられる新聞やテレビの有料放送、インターネットを使ったスポーツ中継の有料動画配信サービスなどの事だ。又、不動産会社にとってマンション販売は顧客に販売した時点で顧客との関係は終了するが、賃貸事業の場合は所有する商業ビルをテナント募集して企業に貸し出せば、顧客である企業からは継続的に賃貸収入が得られるのでサブスク事業と言える。
 このようにサブスク事業は企業にとって定期的に収入がはいって経営は安定する。それに対して物売りは売れてしまえば顧客との関係が途切れてしまい、常に販売をし続けなければならない。その為、経営は安定しないので新しい商品を開発する余裕はなくなる。
 しかし、いくら長期的に顧客と契約を結んでも永遠に契約が続く事はない。契約を長く継続するする為には、顧客を満足させる価値を常に創出させなければならないのである。
 競争相手は常に存在する。最近では同業他社だけでなく異業種からの新しく参入してきた競争相手にも気をつけなければならない。一旦、契約を結んでもそれに安心して顧客サービスを怠れば契約途中であっても解約されて、競合会社に顧客を奪われかねない。
 例えばサブスクビジネスの代表格であった新聞は何年も発行部数を落としている。その理由は新聞にとって代わる速報性のあるメディアが増えてきたからである。テレビが普及した時に新聞社は危機を迎えたが、テレビ局を自社の傘下に置く事でその危機を乗り越える事ができた。しかし、インターネットによる情報配信はユーザーがいつでもどこでも情報を引き出せると言うメリットがあり新聞にとって発行部数を落とす原因になっている。さらにインターネットの情報配信をしている会社は海外から進出してきた巨大企業が多く、日本の新聞社が傘下におけるような規模の会社ではない。
 そうした状況の中で日本の新聞社も各社とも記事をデジタル配信するようになった。そして有料で定期的に記事をユーザーに配信するサービスを続けているが、一方では紙の新聞の販売システムも残っていて成功するビジネスモデルを構築する事が出来ていないのが現状である。
 確かにサブスク事業は顧客と長期的な契約を結べば定期的に収入も入り、企業にとっては魅力的だが続けていくには大変な努力がいるのである。企業に対する信頼感、イメージを高める為にブランディング戦略を行って常に新しい価値を作り続けていかなければ顧客との関係は途切れてしまうのである。
 「継続は力なり」という言葉がある。例えばスポーツの野球のバッティングは毎日練習すれば上達してヒットを多く打てるようになるし、音楽であればギターの演奏テクニックは上がっていく。しかしただ毎日同じように練習をしていても駄目なのである。毎日の練習において自分なりの気づきや工夫を加えていくから練習を続けていく事で成果が上がっていくのだ。単に毎日同じ事を繰り返ししているだけの練習では本人も退屈してしまい継続することは出来ないのである。
 企業がLTV(顧客生涯価値)の向上を目指して、今後はサブスク事業を重視していくと言葉で言うのは簡単だが、重要なのは顧客の満足出来る価値をいかにして提供し続ける事ができるかどうかだ。その為、サブスク事業も顧客のニーズを探って自社の持っている価値に合わせたサービスを提供すると言う点においては、今までにあったビジネスと同じで重要な事は変わらないのである。
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