第17話 ビジョンドリブン 直感と論理をつなぐ方法

文字数 1,270文字

 以前は出来もしないような大きな事を言ったり、根拠もないとりとめのない事を想像する事は良いとはされていなかった。それよりも現実に基づいて着実に一歩一歩前に進む事のほうが良いとされてきた。
 その背景には、かっての日本企業は「知の深化」を着実に進めて製品の品質を向上させていった。そして海外の企業が生産する製品よりも品質において上回っていた。その結果、日本企業が生産する製品は顧客から信頼感があり、海外の企業との競争には打ち勝っていた。
 だが、それが最近では通用しなくなってきた。原因としては日本企業は長年の成功体験に慣れてしまって外部環境の急激な変化には対応出来なかった。さらに産業の垣根を超えて異業種から革新的な製品が出現してくるようになると、「知の深化」に偏って良いものをさらに工夫して進化させるという日本のビジネスモデルは顧客のニーズとはかけ離れて通用しなくなってきたのである。
 そのように日本企業の成長の鈍化が顕在化してきた2019年に出版されたのが「直感と論理をつなぐ思考法 ビジョン・ドリブン」(佐宗邦威 ダイヤモンド社)である。ビジョン・ドリブンとは右脳で思いついた直感や妄想を左脳で考えて論理につなげて戦略に落とし込む思考である。具体的には思いついた事を論理につなげて手を動かしながらプロトタイプ(試作品)を作り、ブラッシュアップさせながら完成品に近づけていこうというものである。
 ところで今の日本社会においては「どうすれば他人が満足するか」を優先して考える他人モードが強くなっていて、「本当の自分は何を感じて何がしたいのか」という自分モードの考えが出来なくなってしまっている。
 しかし大切なのは「本来の自分は何を考えて、何をしたいのか」という心の内側から湧き上がってくるものを実行する事である。この事は企業経営にも通じて現在の企業は「売上、利益、株主、競合」の事ばかりに心を捉われてしまって、大切な企業の原点である「そもそも会社は何をしたかったのか」を見失ってしまっている。
 著者の佐宗邦威氏はこうした状況においてビジョン思考が日本には必要だとした。世の中は物凄く早いスピードで変化していっている。そうした環境が素早く変化する中で企業や個人が持っている能力を発揮出来るようにするにはビジョン・ドリブンの思考は欠かせない。毎年の重要な課題を決めてそれを達成する為のイシュードリブンの発想では社会や環境の変化に対応していく事は出来ないのである。
 人間誰しも本当は子供の頃から何かしたい事があったはずである。その人が感じる独特ものがあったはずである。人間は自分の心の奥底にある考えや自分なりに感じた事を論理に繋げて実現しょうとする事が必要だ。そして仮にそれが失敗して実現しなくても気にする事はない。
 大切なのは、多くの人が忙しい日常生活に没頭して、本当の自分は「こんな事をしていて良いのだろうか」と本来の自分がしたい事は何なのか?と考えることだ。そうすれば目標から大きくそれてしまった事に後で気がついて後悔する事はなくなる筈だ。
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み