第5話 ファーストペンギン

文字数 1,360文字

 貴方はファーストペンギンになれるか?と聞かれたら多くの人は戸惑うだろう。人間である自分がペンギンになれるわけがない。そう考えるのが普通である。
 ファーストペンギンとは例えの一つで、集団で生活するペンギンは生きていくには食べ物である大量の魚を獲る必要がある。その為には自分を襲う天敵のシャチやオットセイがいるかもしれない海へ、一羽のペンギンが一番最初に飛び込こんで魚がいるか確認しなければならない。その最初に海に飛び込む勇気ある一羽のペンギンの事を言う。
 ペンギンの世界だけでなく人間も何事も人に先んじて行うタイプの人と、誰かがやったのを確認してから動くというタイプの人と大きく分けて二通りのタイプに分かれる。そして先んじて物事を行う人は、まだ誰もやってない事だから競争相手もいないので先行者利益を得る可能性が高い。例えばまだ誰も思いつかないような新しい製品を開発して売り出せば、その市場には競争相手がいないので価格を決めて市場を独占出来る。
 だが成功する可能性もあるが失敗する可能性もある。新しい製品を販売してもそれが消費者のニーズに合っているものなのか、実際にやってみないと分からないからである。当然売り出す前には市場調査をして新製品のニーズがあるのか?売れるかの予測をしている。だがその予測が当たるとは限らないのである。
 それに対して行動する時には、自ら先頭になつて動く事はなく他の人が先に行動した後で安全を確認してから動くと言うタイプの人がいる。こういうタイプの人は前例があるだけに大きな失敗をする事はない。だが開拓者としての大きな利益を得る事はない。
 どちらのタイプが良いか?決めるのは難しい。大事な事は自分に合っているのはどちらのタイプかと自分を良く知る事だ。常に新しい事にチャレンジする事が好きな人、人の先頭に立って何かをしたい人はファーストペンギンになれば良いのである。逆に誰かがやったのを確認して安全だったら動くタイプはそのようにすれば良い。全員がファーストペンギンになる必要はないのである。
 プロ野球でも開幕当初に首位にいたチームが優勝するとは限らないし、マラソンでも最初に先頭をきって走っていた選手が最後までTOPであるのは難しい。プロ野球やマラソンは抜きつ抜かれずの競争をして最終的にトップの座にいる事が最も重要だ。
 新製品を出した場合も重要なのは誰が最終的に市場での勝利者になれるかである。新製品を出した時にはファーストペンギンが先行者利益を得て有利な立場あるが、暫く経てば改良した製品を出した後発メーカーの製品の方が売れて立場が逆転する事もある。このようにお互いが切磋琢磨して競い合う事でより良い製品が消費者に提供されるのは良い事だ。
 だが改良に改良を重ねた製品が消費者に受けるかわからない処がある。消費者のニーズは余分な機能などいらないでシンプルで低価格の製品の方に惹かれるのに変わるかもしれない。人は気まぐれな処もあり、常に論理的に行動するとは限らないのである。
 そうした不確定要素に左右されるのはファーストペンギンが勇気を出して海に飛び込んだものの魚がいない事もあるのに共通する。人もペンギンも何事も思う通リにならない事があるのが現実だが、それを糧として乗り越えていかなければならない。
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