第7話 トレードオフの関係

文字数 1,316文字

 ビジネスでの「トレードオフの関係」とは、例えば企業が顧客のニーズに応えて付加価値の高い製品を作るとコストがかかり価格に転嫁せざるを得なくなる。そしてその結果として価格が高くなった製品は顧客から受け入れられなくなって、シンプルで低価格の製品を売り出したライバル企業に顧客を奪われる事になる。企業は顧客を満足させるために付加価値の付いた高性能の製品を作るのと価格を高くしないで付加価値の高い製品を作る事の両立は出来ないという例えだ。
 そして個人のビジネスマンの「トレードオフの関係」は、例えばビジネスマンは給料を高くしてもらおうとして残業したり、仕事に集中して成果を上げようとする。しかしその結果として給料は高くなっても、お金を使う時間がない。自分の趣味の時間を犠牲にして仕事を優先した結果、給料は高くなったが自分の自由に使える時間が少なくなると言う事が起きる。
 又、仕事と離れた日常生活においても「トレードオフの関係」は多く存在する。例えば、独身時代には男女とも多くの恋愛を経験してベストパートナーを探す自由があった。しかし、結婚をすれば独身時代のように自由に恋愛をするのは一般常識からは良くない事とされている。中には結婚をしても夫や妻以外の異性を好きになり一線を超えた男女の仲になる人もいるが、基本的にはタブーでありしてはいけない行為とされている。結婚をすれば安定が得られるが自由に恋愛する事は出来なくなると言うのが一般的だ。
 このようにビジネスや個人の生活においてふたつの物事があってひとつを選択すれば他方が成り立たなくなるのを「トレードオフの関係」という。
 同じような意味を持つ言葉に「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉がある。こちらもふたつの事を同時に成し遂げようとすると結局どちらも失敗すると言う事だ。
 確かに物事は「トレードオフの関係」にあると認識する事は重要である。しかし、大事な事は
「トレードオフの関係」に物事はあると言う前提を認識した上で、何をして良くて何をしてはいけないかを見極めるのが大事な事である。
 先程の企業の例で言えば、顧客のニーズに応えて付加価値を高めるのと同時にどうしたら価格が高くなるのを抑える事が出来るか見極める事が必要だ。企業の業績を上げる為には顧客の要望を全てかなえる必要はない。重要なのは何が企業にとって、そして作りだす製品にとって一番重要かを見極める事だ。
 ビジネスマンが自分の自由な時間を削って仕事をして給料が高くなった。その分、自由な時間が少なくなったかもしれないが、少なくなった自分の時間でもお金をかければ今までとは違う楽しみ方が出来るかもしれない。
 又、結婚をすると自由な恋愛が出来なくなると男女の関係を「トレードオフの関係」で説明したが、この問題は人それぞれである。独身時代から同時に何人もの相手と交際しているのが好きな人がいれば、そうではない人もいる。又、結婚しても一人の相手では満足出来なくてリスクを犯してもパートナー以外の人と付き合おうとする人もいる。結局、個人の心や感情までは説明する事は出来ない。男女の関係のように「トレードオフの関係」では説明出来ないものもある。
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