第47話 さくら道(2)

文字数 600文字

 名古屋は久しく通過地点である。
二十余年の歳月を経て、娘夫婦に伴われて訪ねた。
「太平洋と日本海を桜で繋ごう」と夢のような夢を実現させ
桜守りとたたえられた故佐藤良二さんの植た一号桜を見るために。
 二十数年を経てなお、花の季節が来ると、思い出すあの桜街道。
思い叶って遂に一号桜と再開することができた。
一世紀の四分の一を瞬時に渡った花のかけ橋。
「花の心が一つになって人々が仲良く暮らせるように」
いしぶみもそのままあった。紛れもなくあの一号桜である。
大地にしっかりと根を張り幹も私の胴体ほどあろうか?
逆算すれば樹齢は四〜五十年になるか。
 花越しに見上げる四月の太陽は眩しかった。
旧友に巡り合えたような、ちょっといい話を地で行くような、
心和むひととき、こんどは何回もシャッターを押した。
 その後の、さくら道の桜は道路工事などで、万全ではないらしい。が、
「さくら道270KMウルトラ遠足」と題して名古屋をスタート、
48時間の制限時間で金沢まで走るマラソンがあった。
 良二さんは没後三十数年を経ても、沿線では、国鉄の良ちゃんとして、
その足跡は語り継がれているときく。
 篠田三郎さんの主演していた「さくら」がよみがえる。
 病と戦いながら夢を追い、夢を実現させ47歳の若さで散った良二さんに
思いを馳せながら、名古屋城のほとりを二回りもした。
 桜は散り始めていた。
 年を重ねると別れは、いつも今生の別れのような気がする。










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