第68話 極楽への道(2)

文字数 631文字

 供養されない霊、この世に大きな想いを残した霊は、
恐山で蠢いていると、その道の人はいう。
 生まれながらの霊能者は2ツの世の橋渡しをした。
「イタコ」はその役割を果たしたのだ。
「イタコ」に会うて、まず母の霊界の声を聞きたい。報告
したいことも色々ある。母の次には誰と語ろう。
思いは大きく膨らんでいた。が、「イタコ「は老齢化して少なくなり
予約して、7月20日以降でないと会えないという。
もっと早く調べておくべきだった。残念この上ないが、
恐山へ旅できたことだけでもよしとしよう。
  澄み切った砂浜に向かって黄泉の女性を呼ぶ男性を見かけるというが、
女性が男性を読んでいる姿はまだ見たことがないという話を
不思議な思いで聞いていた。
 賽の河原の砂浜は真っ白、河原の水は青く、さざなみが寄せている。
今もガスが噴いているので魚は住めないそうだ。
 数珠も線香も忘れているので風車と線香を買った。
風車は御供養に地獄に立てた。
 所々でガスが立ち上がり、線香もたなびいている。
 やがて死ぬんだからと地獄、娯楽への岐路を見極めた。
下見したのだから、私は迷わず極楽への道を選べると信じる。

 好天に恵まれたから陰は感じなかったが、逢う魔がどきや
しと降る雨の時は、異常な雰囲気を醸し出すのでないかと?
 もうくることはないだろう霊山を振り向かずに橋を越えた。
 三途の橋を後にして、大きく現世の空気を吸い込んだ。
 ここはこの世の極楽。取り立てていうこともないが、
 これは、きっとよい老後だと信じる。









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