第30話 パリへ(2)

文字数 726文字

 パリ滞在の5日間は、セーヌ川の辺り15区にある日航
ホテルだった。対岸の16区は、パリ1番の高級住宅地だという。
なるほど夜景もさることながら、朝焼けに映える町並みは絵画
以上のものだった。

 こんな青空はめったにないというパリの空に、縦横無尽に伸びる
飛行雲が生まれて解けて、セーヌ川に消えてゆく。

 パリっ子は自己中心的だと聞くし、友人もパリの人達は気取って、
オスマシだと言うが、私は少々にぶくてピンとこない。

 オペラ座の近くの有名ならしい珈琲店で、9州から農場を視察に来た
という3人連れの青年にあった。知古にでもあった気がして話が弾んだ。
「パリへ来れば、アメリカ人でもお洒落なイギリス人でも皆『お上りさん』
だ」と言う。なるほど言い得て妙と納得した。

 次の日、件の青年に教えられた通り友人とタクシーをチャーターして郊外
へ出た。運転手はフランス語、私たちは四国の方言。珍道中だったが、身振り
手振りも通じるもの。

 武蔵野のおもかげを残したような落葉樹の細い道を走る。
フォンテーヌブローの森の外れにひっそりとたたずむ小さな村、バルビゾン。

 村の入り口には「画家たちの村」と書かれた看板が何気なく立っていた。

 村をしばらく歩いた。
逆さに吊るした傘の絵に魅せられて中に入った。老画家がいて絵筆をとって
いた。ここに住みついた画家たちを牧歌的風景と重ねてしばらく見入っていた。
軒を連ねる画家たちの小さい家そのものは、芸術であるかも?

 この後、運転手の母親が住んでいると言う、パリの標準的な家庭を案内
してくれた。ママとちょっと会い、少しだけ話した。

 20数年昔の、走り書きに筆を加えてを構成した。今のパリを知らない。
 パリと異なるところがあるかもしれない。その節はご容赦を。


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