第54話 十日遅れのGW

文字数 706文字

 久しぶりの人間の大移動は終わった。
十日遅れのGWといっても、毎日が連休だから格別
新鮮味はない。道路やホテルはよく空いていた。

 弟の家まで、バスに乗った。この路線バスに乗ったのは
初めてだ。いつも見ている景色が、もの珍しく、新鮮に映る。

 ハンドルを握っていない無防備さだろうか?

 高知安芸を目指して弟の家を十一時出発する。運転手は弟。
途中、海南で世界初という、汽車とバスを兼ね備えた
乗り物DMV(デュアル・モード・ビークル)と遭遇した。
 
 それは高知県東洋町と徳島県海洋町を結んでいる夢の自動車。
観光客は未知数のようだ。運行している町の第三セクターでは
緑、蒼、赤の三台を所有しているらしいが、線路を走っていた自動車も
道路を走っていたのも、遭遇したのは赤ばかりだった。線路を走る赤い
自動車は、現実離れしていた。

 滴る緑の下を走る対向した赤いバスにちょっぴり夢を乗せて、手を振った。

 空の青と海の蒼の海岸線を眺める。やっぱり水平線は丸みを帯びていた。
 途中、半時間余のランチタイムをとり三時無事ホテル着いた。

 今年始めて使うゴーツーの旅である。
このホテルの支配人は淡路島で営業マンをしていた時代から妙にウマがあって、
長いお付き合いをしている。

 二年ぶりということで話が弾んだ。
「私が生きているうちに淡路島の支配人になって帰ってきてね」
「もう四年ここに居てるから、そろそろと転勤を覚悟している」
「転勤したら、またそっちへ追っかけてゆくわ」

 温泉に浸かって、四肢を伸ばした。
小さくてもやっぱり旅はいいなぁと寛いでいる。

 ホテルの下を奈半利行きのローカル線が通っている。
コトコト、音を残して玩具のようは汽車は過ぎて行った。
 

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