第11話 ペンション
文字数 840文字
車を止めて坂を歩き当時から変わらない扉を開けた。
「あら、航くん。久しぶりじゃない。こんな時間にどうしたの?」
「お母さん、久しぶりです。ごめん、突然なんだけど訳ありなんで泊めてくれない?」
彼女はお母さんでも無いが俺はいつもそう呼んでいる。
「良いけどどうしたのよ?そちらさんは彼女?」
「春奈といいます」
彼女が答えた。
「俺の彼女なんだ」
俺は妻と言わず
「ちょっと悪い奴らに追いかけられているんだ」
「そうなの、訳は聞かないけどゆっくりして行きなさい」
「いつもありがとう」
俺たちは落ち着きを取り戻し出してくれた軽めの食事を済ませて、これからどうするかを話合う事にした。
「取り敢えず、銃は捨てよう持っていたらダメだ」
「そうね」
「渡辺組は君をいつまでも狙ってくる。やはり警察で事情を話すしかない。浩一も味方だし」
「そうね。そうするしかないみたいだね」
同じ話を何度も繰り返しているが結論が出ない。
「それと俺たちのことだけど......」
「どういうこと?航は私と別れたいの?」
「ああ、その方が互いにいいような......」
そう切り出したがまるで俺は逃げているような不快な感覚に陥った。
嘘で固められた二人で過ごした日々をどう理解したらいいのか混乱していた。
「私は別れたくない。とても幸せだったから」
俺はふと心をどこかに持っていかれた。
その言葉を聞いて笑顔でいっぱいだった春奈が蘇ってきてそれだけで幸せだった日を思い起こさせた。春奈を失えば俺はどうなるのか想像もできない。俺は春奈を幸せにできるだろうか。選択を間違えれば一生後悔するに違いない。どうしたらいいんだ。素直になれ。心に従え。
「俺も別れたくはない」
はっきりとそう言った。そう言い切れた事が自分でも不思議だった。
「航くん!逃げて!」
お母さんの大きな声が廊下から聞こえてきた。
奴らが追って来た。
「あら、航くん。久しぶりじゃない。こんな時間にどうしたの?」
「お母さん、久しぶりです。ごめん、突然なんだけど訳ありなんで泊めてくれない?」
彼女はお母さんでも無いが俺はいつもそう呼んでいる。
「良いけどどうしたのよ?そちらさんは彼女?」
「春奈といいます」
彼女が答えた。
「俺の彼女なんだ」
俺は妻と言わず
彼女
と言ったが、今ではそれが正解かどうかも怪しかったし、本名ではなく春奈
と答えた彼女はどの様な心境なのかも俺には計り知れない。「ちょっと悪い奴らに追いかけられているんだ」
「そうなの、訳は聞かないけどゆっくりして行きなさい」
「いつもありがとう」
俺たちは落ち着きを取り戻し出してくれた軽めの食事を済ませて、これからどうするかを話合う事にした。
「取り敢えず、銃は捨てよう持っていたらダメだ」
「そうね」
「渡辺組は君をいつまでも狙ってくる。やはり警察で事情を話すしかない。浩一も味方だし」
「そうね。そうするしかないみたいだね」
同じ話を何度も繰り返しているが結論が出ない。
「それと俺たちのことだけど......」
「どういうこと?航は私と別れたいの?」
「ああ、その方が互いにいいような......」
そう切り出したがまるで俺は逃げているような不快な感覚に陥った。
嘘で固められた二人で過ごした日々をどう理解したらいいのか混乱していた。
「私は別れたくない。とても幸せだったから」
俺はふと心をどこかに持っていかれた。
その言葉を聞いて笑顔でいっぱいだった春奈が蘇ってきてそれだけで幸せだった日を思い起こさせた。春奈を失えば俺はどうなるのか想像もできない。俺は春奈を幸せにできるだろうか。選択を間違えれば一生後悔するに違いない。どうしたらいいんだ。素直になれ。心に従え。
「俺も別れたくはない」
はっきりとそう言った。そう言い切れた事が自分でも不思議だった。
「航くん!逃げて!」
お母さんの大きな声が廊下から聞こえてきた。
奴らが追って来た。