第５話　ある日．．．　

　その日は本当に雲一つない良い天気で俺は気分も良かった。　
　
　前夜は遅くまで二人で映画を観ていたが俺は途中で眠ってしまっていたようだった。つまらない恋愛もので途中までありきたりの展開のため疲れてしまったのだ。春奈は我慢強く最後まで観ていたらしくエンディング間近の大どんでん返しに興奮したらしい。
　朝、そんな会話をし俺は見逃したことに少し残念な気持ちで会社に向かった。
　
　昼が過ぎ、その映画の結末を想像しながら俺は得意先に向かって車を走らせていた。
　
　信号が赤になり車を止めた。
　
　ふと何気なく交差点の向こう側で何かトラブルらしくもめている二人が見えた。
　
　何しているんだろうと注意深く見るとそのひとりがとても春奈に似ていた。
　まさかと思い目を凝らしもう一度よく見た。人はそこに居るはずもない人がいたら言葉が出てこず頭の中が混乱するらしい。まさにそれだ。
　
　彼女はキャップ帽を被りサングラスをかけマスクをしているが春奈だ。
　俺にはわかる。間違いなく春奈だ。
　その日は確かにスーパーマーケット井田の定休日だった。そこにいても不思議はない。
　ただ、相手を見ると若い男でどこかで会ったことのあるようなチンピラに見える。春奈らしき人がそのチンピラに何か迫っているようにも感じた。
　
　すぐに俺はドアを開け車を降りようとしたが信号が青に変わり、後ろの白のセダンにクラクションを鳴らされたので車を少し走らせ路肩に車を寄せて春奈を探した。

　すでにそこにはいなかった。

　見間違いなのか。

　その晩、春奈にその状況を説明し真相を確かめた。

　それは私じゃないとの返事だった。