第十五話

文字数 3,010文字

 入学式、事実上三日目の夕方。
 普通、入学式はそんなにどんちゃん騒ぎするような行事ではない。行われた場所にもよるが。しかし、今年の英雄学園東京本校の入学式は一味違う。
 そこらじゅうで飲めや歌えやのお祭りムード。無論、この学園都市にいるのは学生が九割のため、お酒はNG。大人は個人スペースで嗜む程度。しかし、熱気は連絡橋を挟んでいても東京まで伝わるほど。
 その熱気の理由は、今まさに校内を歩く、お人よしとお嬢様な女子二人。
「……しかし、お父様が当日と翌日ここだけ祝日だ、とか宣いましたが……ほとぼりが冷めるであろう平日の三日目までこの熱気は続きますの? 私たちどれだけの影響力持ってますの」
「まあまあ、祝ってくれてるわけだし有難く受け取っとこうよ! 何より、お肉いっぱい食べられるから満足!」
 廊下で堂々と歩き食い。漫画でよく見るような骨付き肉を両手に持ち、ふごふご言いながら満喫しているのは、先日あった事件解決の功労者その一、瀧本礼安。そしてその側で呆れかえっているのが功労者その二、真来院。先日大衆の面前で発表された、学園長の実の娘二人である。
 そんな二人はなぜ人があまりいない校内を歩いているかというと、学園長直々に召集がかかったためである。別に悪いことをして叱られるわけではない。
 肉親に会う、となったら二人とも背筋が伸びるもの。なんせ二人とも入学式を除くと、父親に会う機会がめっぽう無いためである。何なら、礼安に関しては小学生卒業以来である。
 院は服装を正し、礼安は両手の肉を一瞬にして胃袋の中に入れる。
「――――コホン、失礼いたししますわお父様」
 丁寧に二回ノックを済ませ、学園長室へと入る二人。
 学園長室内部は、学園都市を一望できる街側一面の窓ガラス以外、トレジャーハンターも兼任している彼らしい、とても個性の強い部屋であった。
 怪しい壺、怪しいカーペット、怪しい槍に、怪しいお面。東西南北、ありとあらゆる世界の部族から譲ってもらったんだか知らないが、間違いなく日本の骨董品店では一つもお目にかかれないレアな怪しいグッズばかり。
 怪しさの度合いで言ったら、青木が礼安に売りつけようとした効果の欠片もない壺を累乗したような。少なくとも、こんな部屋で寝泊まりしていたら、変なものに呪われて気が狂いそうになる……かも。正直この部屋でまともなものは、学園長の机と椅子、来客用のテーブルに最高級ソファくらい。
 しかしそんな中でも、学園長……もとい、二人の父親の態度は、娘にデレデレな父親そのもの。温度差で風邪をひきそうになる。
「やあやあ未来の英雄である二人とも、待っていたよ! お小遣い足りないかな? 五十万くらい渡そうか??」
 実に模範的な親バカっぷり。会えなかった期間を考えると妥当、と思いたくはなるが、金額の桁がまさに富豪。週のお小遣い五十万はやり過ぎである。
「……お父様、お小遣いは十分足りてますの!! こら礼安、お父様の甘やかしをそのまま受けないの!! お父様礼安が可愛すぎるからとはいえさらに五十万上乗せはダメですわ、調子に乗らないでくださいまし!!」
 最早どっちが親だか分からない。

 一通りほとぼりも冷め、コーヒーを啜る信一郎。ちなみにこのコーヒーもコピ・ルアク。お高い。
「――いやあ、ごめんね院。二人が可愛すぎるがあまり甘やかしちゃうんだなあ、これが」
 可愛がられた礼安は、というと、院の横でお茶とお茶菓子を行ったり来たり。さっきうんと肉を頬張っていたのに、胃袋がブラックホールである。
 しかし、これほどまでに甘やかすのも、院としてはどこか合点がいってしまう。あれだけ酷い過去があったら、これからの人生を楽にしてあげたいのは親心。限度はあるが。
「んじゃ、戯れもほどほどに、本題に入ろっか。簡単な答え合わせタイムとこれからについて、だね」
 淹れたてのコーヒーをグイ、と一気飲みする信一郎。火傷なんてお構いなしのストロングスタイルである。
 しかしそれが、彼の仕事のスイッチを入れるルーティンなのである。
「君たちは、正直周りの子たちよりも圧倒的に強い。今回、首席で入学してきたあの子、いるじゃあないか? あの子のおよそ三倍、君たちは強い。なんせそれほどの環境に身を置いていたわけだし。私が丙良君に頼んで正解だったよ、真相を知った後こっ酷く怒られたけどね」
 それはそう。まず、学園長直々に育成してくれ、と頼んだ対象はその学園長の娘二人。万が一命を落としたら、なんてことを考慮していない時点で末恐ろしい。
「ま、それはうちの学生を信じているさ。ある程度の実績があって、かつ短期間で強くなるためには丙良くんのピースは不可欠だったさ。あの子自身が強くなるためにも、誇りの娘二人は必須事項だったんだ」
 信一郎は懐から一枚の紙を取り出す。一般市民や並の英雄たちには知らされることのない、上流階級の人間から仕入れた情報であった。
 日本で著名な予言者が、そう遠くないうちに日本に厄災が訪れる、と予言したのだ。これが大したことない預言者なら、日本の権力者など動きはしない。しかし、この予言者の的中率は驚異の九十%越え。無視するわけにはいかなかったのだ。
「君たち二人に学園長としての私からお願いだ。君たち同級生たちのステップアップのために、適度に先生になってあげてほしいんだ。そう遠くないうちに訪れるとされている、厄災……それに我々英雄が主力となって対抗する、そうして欲しいってお国からのお触れが出たんだ」
 あらゆるトラブルやハプニング。それらに耐性のある一般市民ですら、多少なりざわつくほどの緊急事態≪エマージェンシー≫。その話を聞かされた二人は、先ほどまでのふわふわとした空気感など忘れ去り、真剣な表情で聞き入っていた。
「この話は、我々だけの秘密さ。だけど……すでに知っているのは礼安たち以外には丙良君とエヴァ君がいる。もし信頼できる、共に戦えると真に思えた学生には、声をかけてもいいかもね」
 ソファからすっくと立ち上がる信一郎。重く考える二人をよそに、いつもの礼安のような笑みを浮かべサムズアップする。
「大丈夫、この作戦には私も同乗する。何も、有望な学生だけで戦わせるなんて、外道な真似はさせない。原初の英雄として、やれることはやるつもりさ」
 その笑みは、どこかこの重苦しい空気すらも晴らす、不思議な力があったようで。院の表情に安堵が戻った。
「……丙良先輩がやったようなことを、私たちもやる、ということで相違ないでしょうかお父様」
「何もあそこまでしろ、ってわけじゃあないさ。丙良君がやったことからグレードダウンしたって構わない。皆の支えになってあげてほしいのさ」
 ふと礼安の方を見ると、難しい表情のままであった。
「――そういえば礼安、ずっとその顔のままでしてよ。重くとらえましたの……?」
 院と信一郎はそれぞれ不安になってしまうが、そんな不安をかき消す礼安の一言。
「……話が難しくって、よく分かんない」
 昔のバラエティのようなずっこけをすることになるとは、信一郎も院も思っていなかった。

 そんな他人にまだ聞かせることのできない話を、知らずに聞いてしまった存在が、一人。
「――――」
 静かに歯を食いしばり、怒りを露わにするその人物。
「ふざけるなよ……あんな奴、認めるもんか……あんな――全てにおいて恵まれた奴に負けてたまるか」
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登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


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エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


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真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


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天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


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丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


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瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


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