第二十五話

文字数 7,470文字

 所変わって、英雄学園特訓施設の一部。そこには、透をはじめとした三人がドライバーで変身しつつ、疲労困憊状態で倒れ伏している状態にあった。犯人は、無論稽古をつけていた本人である信一郎である。
「えー、こんくらいでへばっちゃう?? リクエストのあった学園長ーズブートキャンプ短期集中コース、このままじゃあ期間内に終われないよ??」
 実に飄々とした態度であった上に、いつも通りのかっちり漆黒のスーツ姿に最高級の革靴。それで激しい運動などやったら最後、どれだけ動きなれていようと靴擦れや過度の疲労等に悩まされるはず。それに、世間一般的にオヤジとも言える年齢層のはず。体力や筋力の老化や加齢臭等に悩まされる年齢であるだろう。
 それなのに汗一つかくことなく、さらに息一つ乱すことなくへらへらと笑っていたのだ。
「原初の英雄って……すげえなマジで……アンタ五十三だろ……?」
「そーだよ、迫りくる加齢臭の悩みが常なフィフティースリーオールドよまったく……あと禿げたくないし!!」
 そう憂う信一郎を腫れものでも見るような目で見つめる三人。しかし目的は別にあった。
「やーね?? 実際問題いろいろ育毛剤とか探し始めてんのよ、それに消臭剤とか! 我が愛しの娘ちゃん二人に『臭い!』なんて言われたら本当に大号泣しそうで……」
 そう顔を覆う仕草をした瞬間、剣崎と橘はお互いに視線を合わせその場から跳躍、信一郎の顔面に回し蹴りを叩きこむ。
 しかし、その蹴りは易々と受け止められ、それぞれが散らばるように投げ飛ばされ、壁に容赦なく叩きつけられる。その止めともいえる一撃で、二人は疲れも相まって変身解除、気絶してしまう。
「いやあ、意識の逸らし方はちょっとうまくなったね。戦闘は単純な力比べ、ってだけじゃあない。知識比べでもあるんだから……でも正直起点はバレバレだったね。殺気駄々洩れだったし。頭は使いようだよ、話術で場を制するのも重要なんだよ」
 態度はへらへらとしていたが、目元が一切笑っていない。まるで精神を完全に掌握されているような、肝の冷える感覚があった。
 彼女たちの特訓内容は、信一郎に対して『明確な一撃』を叩きこむことであった。


 五日前のこと、あの高速道路の一件からほんの一時間ほど後のこと。最初、その条件を聞いた三人は、呆気にとられてしまった。
「え? 『そんなん簡単じゃーん』とか思っちゃった??」
 信一郎はおどけた様子で三人に笑いかける。しかし、三人は学園長の圧倒的な強さを目の当たりにしているために、そんな慢心などなかった。故に、三人はとても不服そうな表情をしていたのだ。
「……いや、ウチらまだ基礎すらわきまえてないんスよ? だからあの高速道路でもやられたわけだし……」
「俺は……いや俺でも無理だ。何ならあの礼安でも無理だろ」
 戦々恐々としていた三人に対し、実につまらなさそうに口をとがらせる信一郎。
「なんだよォ、少しくらいありがちなやり取りやってくれても良くないかい?? そこで中国の古き良きアクション映画よろしく『まだまだ甘いな坊主』みたいなやり取り憧れるじゃん!?」
「いや俺アクションはアクションでも洋画派なんだわ」
 その透の一言にひどく肩を落としながらも、三人がこれから特訓日程の間を過ごす場所へと辿り着く。
 そこは学園内の特訓施設の中でも、あまりにもハードすぎて『そこを扱うのは学園長だけ』と言われているほどに負荷が重すぎる、超重力空間。そのフルパワーカスタム環境下において、信一郎と修行する、という流れである。
 透が望んだように、五日間ここで缶詰となる。
 学園長も同じように生活を営むも、透たちは初体験の領域。礼安たちですら経験のない最悪の環境下での生活は、否が応でも成長はするものである。
「――ってちょっと待て。俺らはまだしも……学園長、アンタもここで過ごすのかよ」
「そうだよ? 深夜とか寝静まった時間帯でもいい一発叩き込めたら、その時点で修行終了だし。何か問題ある??」
 三人はいくら地球上における最悪の環境下であるその場所でも、異性としての防衛本能が働いたのか、信一郎に対して冷ややかな目を向ける。
「どのタイミングでもチャンスがあるのは理解したが――風呂覗いたりしたらマジで殺すぞ、学園長と言えど」
「覗かないよ!!」
 最初は何とも和気あいあいとした雰囲気で、その修行空間に入ったのだが――それがいけなかった。
 信一郎は何気なしにその空間をフルパワーで起動すると、一瞬にして透たちは地に伏した。肺を徹底的に潰し、骨が砕けるくらいの圧が、急激に自分たちを圧し潰したのだ。
「「「――、――――!?」」」
 そう、三人共通で彼を、学園長の地力を嘗めてはいなかった。信じられないほどの実力者として、圧倒的上位存在として知覚していた。
 だからこそ、この空間を侮っていたのだ。いくら英雄養成施設であるとはいえ、限度と言うものがあるだろうと。大概段階があって、それで慣らしながら修行するのだろうと。
 さながら、レベル一の勇者たった一人を、ラスボスのダンジョンに放り込むような、サディズム極まったような思考。
「ああ、やっぱりこうか。やっぱり私基準で施設作るとこうなるのか。やりすぎって駄目だねやっぱり」
 おどけている学園長を何とかにらみつけるも、それ以外のことが一切できない三人。しょうがなく重力のレベルを地球の十倍程度に緩めると、三人は何とか立ち上がる。
「馬鹿、野郎…………!! 急に、重力をぶち上げるかよ…………!!」
「アタシたち……呼吸できなくてマジで死にかけたんスけど……!?」
 先ほど設定した重力を名残惜しそうに見つめる学園長と、対照的に息絶え絶えな三人。
 しかし学園長は、三人の方に常軌を逸するほどの冷徹な殺気で包み込む。
「じゃあ君たちは――敵に不意打ちを食らうことに対して、一般人目線で『お気持ち表明』をするのかい??」
「「「……!!」」」
 まず、これが敵陣地だとしたら。どこからか飛んできた攻撃によって深く傷を負うことは実に当たり前。いつだってその可能性を孕んでいる中で、急にその攻撃に対してケチをつけることは愚の骨頂。
 さらに、自分たちが「短期間で修行をつけてくれ」と頭を下げた中で、時間がない中での修行と言うものは決まって超スパルタ。そうじゃあなかったら、一日寝るだけで最強になっているアイテムを作る以外にない。しかしそんな便利グッズなどこの世に存在しない。
「違うだろう、君たちは未来明るき英雄の卵、パンピーなんかじゃあない。どれだけ理不尽な状況下に置かれようとも、戦い抜かなきゃあいけないだろう? それぞれの――『願い』や『欲望』のために」
 弛んでいたのは、自分たちだった。そう自覚したら、やることは一つ。透たちは頬を自身の両手で何度か叩き、気合を入れなおす。
「――悪かった、でも……気は引き締めた」
 信一郎は、我が子の成長を見守る親のような慈しみの目を向け、不敵に笑んだ。
「……じゃ、学園長ーズブートキャンプと洒落こもうか??」


 時間は戻り、今に至る。
 どれだけ寝込みを襲おうと、まず信一郎は寝ていない。だからこそ普通ならチャンスタイムと言える夜の時間帯ですら、疲労を回復させるためにも眠るしかない。
 それに、信一郎が風呂に入っているタイミングなど三人は狙いたくない。最初に「覗くな」と言っただけに、こちらがそれを反故にしてしまうのは、どうも透自身の良心が許せなかった。
 そのため、今日にいたるまでの間で、互いにルールを作り出した。それは、『休息の時間帯透たち三人は一切の攻撃行動を行わない』こと。自主トレーニングは良いとして、攻撃を仕掛けに行く行動を自分たちの意思でやめにしている。
 それゆえに。難易度が跳ね上がったのだ。
 常に変身を保つわけにもいかず、ぶっ通しで変身していられる一日当たり二時間、回復すればそれが一日数回ある中で、何とか有効打を叩きこもうと画策。しかし、結局今まで一発たりとも入れられていない。
 透は、これは成功するのか、と内心弱気になっていた。弱音を吐く二人を元気づけようと鼓舞していた一方で、眼前の脅威がたまらなく巨大な壁のように思えて、仕方なかったのだ。
「――流石に、ここまでかな。五日間で頑張った結果だけど……結局こうなったわけだ。まあ……正直予想はしていたさ」
 一回当たりの変身時間の限界を超えてもなお、立ち向かう彼女たちの頑張り。それを考えても残り数時間で回復しきるとは思えなかった。
 顔色を見る限り、血の気はぐっと引いて、もはや生命の危機に瀕する一歩手前。通常ならドクターストップがかかってもおかしくはない。
 しかし、それでも尚透はフラフラな状態で信一郎に立ち向かう。
「――止めておきな。確かに一発入れられることは叶わなかったが……この地球の二十倍の重力環境下で修行した結果、君たちはしっかり成長している。それは確かだ」
 いくら非情になったとしても、あくまで教育者。透の疲弊しきった体を考えるに、立つことは出来ても攻撃することは不可能である。
「それでも――それでも……!!」
 ドライバーの両側を力任せにプッシュし、全身にありったけの魔力を帯びさせる。
『超必殺承認!!』
「――なるほど、君の……天音透が自身のうちに眠る英雄へ示した覚悟は……それほどのものなんだね。実に――――『妹弟バカ』の君らしいよ」
 ここで、ノーガードでありったけの力を『有効打』とすることもほんの少しだけ考えた。しかし、ここで加減したらこれまでの数日がふいになる。それだけは、信一郎の心が許せなかったのだ。
「――来な、天音透。君のありったけ、私が『原初の英雄』として全力で防ぐ」
 言語化できないほどに雄叫びを上げながら、その場を跳躍。瞬時に九人に分身し、飛び蹴りの体勢を整える。
「ああぁあああああああああぁああッ!!」
『身外身たちが紡ぐ、勝利への導線≪シンガイシン・シャイニーヴィクトリー≫!!』
 九回の全力が、一点に集約。九回分の衝撃が順々にやってくるのではなく、その九回分の衝撃を刹那の違いなく一回の一点に集約しているのだ。つまるところ、通常の九倍の威力。ここが特殊空間でないならば、それこそあのトラックが戦いの場であるならば。威力の余波によって、余裕で地盤すら砕く超絶威力を放っていることだろう。
その影響か、信一郎のガードを、ほんの少しではあるが圧していたのだ。
(マジかよ、大人げない程度に守り固めてんだけど!?)
 彼女は、本気であった。全てを注ぎ、この無理ゲーとも言える状況をひっくり返そうとしていたのだ。期日が迫る中、自分の兄弟を守るために助力した礼安たちのためになりたい。少しでも、足手まといのような存在ではなく隣で戦いたい。『軟弱者』であることを嫌った透の、覚悟をもった意地の通し方であった。
 そして、魔力を帯びた暴風が、信一郎のガードを無理やりこじ開け、胸部に叩き込まれる全身全霊の一撃。それは、余波でその重力空間にいる気絶していた剣崎と橘を起こすほど。
(――これは、間違いなくあの時よりも強くなった。魔力量、威力、そして天音ちゃんの圧。最初は実に頼りないものだったが……強い『願い』は人を強くするなあ)
 教職者としての歓びに浸りながら、吹き飛ばされ壁に激しく叩きつけられる信一郎。吹き飛ばしたと同時に、その場で力なく倒れ疲労により息絶え絶えな状態の透。
そしてその場で明確に宣言した。飛びかけた意識すら呼び起こすほど、三人が待ち望んだ言葉が。
「――あァ、いい一撃だった。実にいい一撃だったよ、天音ちゃん。このタイミングをもって学園長ーズブートキャンプ短期集中コース……見事合格だよ」

 カリキュラム終了後、まず学園長が行ったことは、三人の治療であった。
 事前に現状についてはエヴァから知らされていたため、何より三人の回復が優先事項であった。特に透。
 彼女は特に成長したため、今回の戦いにおいて大層輝けるだろう。しかし、未だに埼玉で起きている現状を彼女らに話せていないうえに、剣崎と橘の二人に関しては戦地へ送り出すことに迷いが生じていた。
(……馬鹿正直に現状を伝えたら、天音ちゃんは絶対に無理してでも向かうだろう。それだけは避けたい。それと――この剣崎ちゃんと橘ちゃんの二人。確かに成長はしたが……現状のままだと厳しいな)
 学園に待機している救護班に交じって、それぞれに「なる早で」とだけ言い残して、足早に保健室を去る信一郎。
(今の時間ってあの子起きてるかな……?? まあ起きてなくともスタ爆でも何でもして起こすか)
 何とも現代においてパワハラと表現できるような危険思考を持ちつつ、先日かなり世話になったある人物に電話をかける。
『……はい、丙良です』
「あっごめーん丙良くん?? 学園通貨手当学園長権限でマシマシにするからさぁ……ちょーっと今から埼玉向かっ――――」
『嫌です!!』
 まさかの即答に、信一郎はすぐさまビデオ通話に切り替え必死そうな表情を見せる。少しでも誠意を見せるためだろうか。何をするか容易に想像がついてしまう。
「お願いこの通り!! 先日はちょーっと情報の行き違いがあって、我が愛娘二人のお世話を事前情報なしに頼んだことは謝るからさ!」
『今回もそれがらみでしょうに!! 僕あの入学式であの二人がご息女だって初めて知ったんですけど!? 知ったらあんなリスキーな修行させませんでしたよ!!』
 学園長が情けなく土下座しても、画面の向こう側の人物は苦労人ゆえの怒号の嵐。ご機嫌取りともいえる学内『山吹色のお菓子』すら通じず。嘘はつくものではない。
 もし、万が一あそこで帰らぬ人になったら間違いなく丙良の責任になってしまう。まあ知っても知らなくても同じものだが、なんとも無神経である。
「だってェ、エヴァちゃんの計画によると最後の一ピース君らしいんだよ!! それだけ戦力として認められている証ってことでいいじゃあ、ないか~!?」
『駄目です絶対ダメダメ!!』
 年齢を感じるやり取りを経て、丙良は取り付く島もない様子であったことが分かってしまったため、信一郎は分かりやすく肩を落とす。
「じゃあどうすればいいんだよォ……他に頼りになりそうな人は確かにいるけどさあ……」
『――あの『信長』くんは、戦力としてどうなんです??』
 豪放磊落、破天荒な立ち居振る舞いから、『信長』とあだ名されている英雄科二年次の生徒。丙良同様に『仮免許』を所持している。しかし、あまりにも破天荒過ぎるがゆえに、「ルールイズ俺!!」と言い放つことが常なため実に制御し辛い。何より超絶がつくほどの方向音痴なため、埼玉の地で迷子になる心配しかなかった。
「――なんかヤダァ、絶対さらなる面倒ごとになるもーん……」
『英雄学園指導者の頂点がその態度はどうなんですかね!?』
 盛大なツッコミをもらった信一郎は、「ごめんねえ時間もらっちゃって」とだけ言い残して電話を切った。
 しかし、代わりの人間が用意できないと、エヴァの攻城は叶わないだろう。そして埼玉県内で『教会』がより勢力を増していくだろう。そう考えたらどうにかせざるを得なかった。
(だとしても……この一件に生徒会腕利きの二人は……オーバースペックが過ぎるし……武器科の子連れても限界があるし――他に有力な生徒は確かにいるだろうけど……絶対夜遅くからの計画に賛同してくれる子はいないだろうなあ)
 そう考えた末、信一郎は頼りになる人物の中で、最後の一人を思い浮かべた。
「……よくよく考えたら、いろいろ大丈夫かな……??」
 小難しいことをうんうんうなりながら思考し、結局何もかもどうでもよくなった結果。
「――――ま、いっか!!」
 嫌なことを全て忘れきったような快活な笑顔を浮かべ、すっくと立ちあがって学園長室に戻る信一郎。三人の全快はおよそ二時間後との目算なため、そこまで一時間ほど仮眠をとることにしたのだった。

 やがて、二時間後。透たちは重力空間に入る以前よりも、圧倒的に調子が良くなっていた。
 肩を何度かぐるぐると回し、手を開いたり握ったり。ある程度の動作確認を済ませると、透は救護班の面子に静かに一言だけ「ありがとう」と礼をする。剣崎と橘も順に目覚め、「体が軽い」と大いに喜んでいた。
 保健室から出た透たちを待ち受けていたのは、信一郎であった。
「やあ、体の調子は?」
「――最高の気分。ありがとう、ございました」
 三人は信一郎に対し深い礼をする。どうもここまで礼儀正しくされるとむず痒くなるようで。信一郎は何とも言えない表情をしていた。
「――んだよ。俺がちゃんと礼したことが意外かよ」
「いやあ……どうも礼儀正しい振る舞いってのがムズムズしちゃうというかね……誤解内容に言うけど、誰にされるであってもそうよ??」
 困ったような笑みを浮かべる信一郎に、柔らかな笑みで返す透。そのまま、埼玉へと向かおうとしていた。二人もそれについていこうとしていたが、信一郎が引き止める。
「そうそう、君らに一つ提案があるんだ。あの修行の最中で、結構考えるタイミングもあったんだけどね……」
 二人はその信一郎の言葉に首を傾げる。
「……どういうことッスか? やっぱりウチらじゃあ戦力外、ってことッスかね……??」
「や、そういう訳じゃあない。ただ……『もう一つの道』ってのもあるんじゃあないかな、って提案さ」
 何のことか理解できない二人、そんな二人の内に眠る因子を見つめる。それと同時にひとりでに納得した様子の信一郎を見てまた首を傾げる。
「――たまに、どっちつかずの存在ってあるんだよ。それゆえに人によっては本質が見え切らないまま英雄として戦う人もいるというか、なんというか。結果早死にしてしまう、願いを叶えることなく、ね」
 二人の肩をしっかりと持って、いたって真剣な表情で二人に語り掛ける。
「……君ら、『武器科に転身』しない??」
「……は?」「へ??」
 なんとも間抜けな声を上げてしまった二人に、こっそりと耳打ちする信一郎。そしてそれを、相槌を打ちながら黙って聞く二人。
 ほんの少しの後、二人が輝くような笑顔を見せ、信一郎のもとを去り、透のもとへ向かっていく。
「……そう言えばあの子ら、支給品のバイク駄目にしたとか言ってなかったっけ」
 それに気づいてしまった信一郎は三人を呼び止めにかかる。実に締まらないほど大慌てであった。信一郎も三人も。
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登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


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エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


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真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


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天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


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丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


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瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


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