第二十話

文字数 6,355文字

 一通りの治療を受け、礼安たちの元で俯く透。事情を聴くにも、少々難しい空気感に支配されていた。院は先ほどの礼安の問いに静かに答え、礼安は表情をさらに悲痛なものとした。
 しかし、そんな空気を察知したのか、透は自ら口を開く。深い傷を負った左腕を庇いながら。
「……お前ら、俺を助けに来たんだろ。何となく理解できる」
「――そう、あくまで私たちの意思でここに来たんだ。天音ちゃんが家族を守りたいから、ってのは院ちゃんに聞いたけど……例えそれを聞かずとも私は助けたかったんだ」
 そんな礼安のお人よしぶりに頭を抱えながら、透は壁に背を預けた。未だ、学園から来た治療班の施しを受ける七人の子供たち。それらにどういった関係性があるのか、院から全てを聞いた礼安とエヴァは、いてもたってもいられなかったのだ。
「――もう隠すのは無駄か。情かけられんのが嫌だなんだと、ほざくのはもう無理だな」
 そう言うと、ポケットから取り出したのは家族の集合写真。今の透以外にも、助けられた七人が写る、とても微笑ましい写真であった。撮影場所は、埼玉の中のスラム街。透以外の子供の服装はとてもみすぼらしいものであった。写真が撮られた時期的にも、英雄学園に入学が決まった二か月ほど前の事であった。
「……こいつら、元からスラムの出でな。しかもあの『虐殺事件』によって、親を殺されてる。見ヶ〆料がどうだとか、下らない理由でだ。今までそんなこと無かったはずなのに、支払い能力がない奴らを狙って殺害していったんだ。奴等への怒りはそのままに、残されたガキたちは生きていくのもやっと、犯罪者になるしか道は無かったんだ」
 デバイスの電子マネー残高を表示する透。その画面に映る残高は実に雀の涙。再び送金された後の残高である。
「――正直、俺も今のままってのは胸糞悪くてな。どうにかこうにか、行方でもくらまそうと思ってたんだ。俗に言う高飛び、ってやつだ。そうすれば、今治療されているガキどもの平穏な生活、ってのも守れる気がしてな」
 彼女の根底にあったのは、弱いものを守ろうとする優しい心であった。見た目をどれだけ派手に着飾ろうと、偽ることのできない芯の部分。それこそが、今の彼女の表情であった。
「――あのガキどもに、この服貰ってよ。『どこかからパクった訳じゃあない』っていうんで預金残高見たら、あのガキども『日頃世話になってるから』って理由で俺にこんな派手な服装させたんだと。もっと他に欲しいものあっただろうに」
 そこで、礼安はふと疑問を抱いた。それは、彼女が戦う理由について。
「……天音ちゃん、一つ聞きたいの」
「……あんだよ、お前の前で嘘吐けねえのは分かってるんだ、何言ったところで本当の事しか語らねえよ」
 「なら」、と一呼吸おいて実に辛らつな言葉を投げかける。
「そこまでの確かな欲があるのに、何で決闘の時……あれだけ出力が出てなかったの?」
「――ッ」
 それは、まさに正論であった。『スラムに残した仮の家族を養う』という明確な大義があるのにも拘らず、そしてその欲はとても純粋で何者にも犯すことのできない状態にあっただろうに、礼安に完全に劣っていたあの力。英雄としての知名度は確かな物、場数で片づけるには、少々無理があったのだ。
「……それは」
 重い口を開きかけたその時、礼安たちの部屋に救護班がやって来た。しかも、実に神妙な面持ちであった。
「――エヴァさん、礼安さん、透さん。今すぐ医務室に来てくださいませんか」


 『教会』埼玉支部、その拠点にて。債務者から取り立てた金で華美な装飾からより華美な装飾へ。金への歪んだ欲がその場に足を踏み入れただけで理解できる、成金によって作り上げられた下卑た屋敷。至る所に金、金、金。下品極まりないその空間は、人の出世欲や金欲を歪ませるだろう。
 どこで手に入れたか、世界的に有名な芸術作品に、著名な陶芸家によって作り上げられた壺、そして至る所に散らばった札束。はいて捨てるほどある金は、財布や金庫に入れずとも、何ならその札束を一本でも二本でも盗まれたところで痛くもかゆくもないのだろう、だから無防備に放置、あるいは使用されているのだろう。
「良いんですか、あの英雄の卵を追わなくても」
 ひとりの下っ端が跪きながらグラトニーに意見する。その言葉に、グラトニーはやたら高級そうな葉巻をふかしながら恍惚そうな表情で語る。
「まあ、少しくらい債務者が逃げ出したところで、我々の金融業が成り立たない訳ではありません。元より、我々の目的は別にあるのです」
「目的、ですか」
 その下っ端のオウム返しに、目を細め怪しげな笑みを浮かべた。
「ええ。私はあの猿の債務者に少々期待しているのです。学園ではその価値も無いと思っていたのですが……少々『家族』が絡むと人が変わるようで。実に分かりやすい」
 下っ端は怪訝な表情を浮かべながらその場を立とうとする。しかし、それをグラトニーが制止する。その場は冷え切った空気で包まれる。
「――何か、ネズミが紛れ込んでしまったと、そういう情報が我々『教会』埼玉支部にタレこまれたのですが、貴方は何か知りませんか? 『名も知らない貴方』」
「くッ……!!」
 下っ端は冷や汗をかきながら短銃を懐から出し、グラトニーの命を狙う。
 何発か連射するも、『すべてグラトニーを避けるようにして』グラトニーの背後の壁に弾丸がヒット。
「な、何で」
「ああ、何処から来たか分かりませんが……鉄砲玉さん。あまり戦いの心得のない素人ではありますが……死ぬ前に一つ忠告しておきましょう」
 高そうな椅子に座りなおし、深く腰掛け足を組むグラトニー。その表情は実に余裕そのものであった。
「敵陣に突っ込むならば……少しくらい情報を整えてから出直してみてはいかがでしょうか」
 指を軽く手遊びかのように薙ぐと、その人間の胴体が綺麗に分断される。刃物で切ったのではない、実に乱雑な断面。臓器と鮮血が辺りにどろりと零れ出す。
「ああ、クリーニング代くらいは請求しておくべきでしたかねえ。まあどうでもいいでしょう」
 すると、手を軽く叩きこの支部お付きの使用人が複数現れる。何も言わず死体を流れ出た血液や臓器ごと持ち去る。さらに入れ違いのように複数の使用人が高級そうなカーペットをずるりと持ち去っていく。
「いい、実にいい。金というものは人生を豊かにしてくれる素晴らしい発明品だ、今は先人に感謝を」
 空にワイングラスを掲げ、グラスに残ったワインを一息に飲み干す。ため息を吐くと、再び恍惚な表情へ戻る。この世を金と言うモジュールをふんだんに用い、精一杯楽しんでやろうという、快楽および悦楽。それを全身で感じ取っていたのだ。
 人を踏み台にし、得る快楽はただものでは無い。相手を出し抜いて生きる競争社会こそ理想郷。騙し騙され、ではなく騙しぬき続ける。それこそが、グラトニーの何よりもの幸せであったのだ。
「今回の案件……神奈川支部のアイツのようなへまはしません……ええしませんとも。万全を喫し、当然のように英雄に勝利する。それこそが……我ら『教会』に課せられた宿命なのですから」


 三人が向かった先は旅館備え付けの仮医務室。元々通常の部屋を即席で治療ができるように多少なり部屋を改造している。作戦が長引いたとしても手短に終わったとしても傷を癒せるように拠点を移した、という形であった。
 いくつかある病床に寝かせられた子供たち。救護班の一人が指さした部分には、下腹部の裂傷痕がいくつか。礼安が感じ取るに、歪な魔力がそこら中に渦巻いていた。それこそ、チーティングドライバーを使用した者と同じ魔力。
「こ、これって……!」
「――彼らは、チーティングドライバーの実験台にされた、と見ていいでしょうね」
 エヴァのその一言は、透にとっては最悪そのものであった。すんなりと事が運んだ理由はここにあったのだ。平穏な日常など決して与えない、債務者≪金づる≫としての責務を全うさせるためにあの手この手で透を絶望させることが、グラトニーの目的であったのだ。
「我々は手を尽くしましたが……今は危篤状態を回避させることしか出来ません。魔力の母体となる存在をどうにかする以外に、この子たちが助かる道はありません。もって――一週間ほどでしょう。あとはこの子たちの『生きる意志』次第です」
 しかし透は、そんな子供たちを見て、怒りに打ち震えていた。髪を掻きむしり、壁に拳を乱暴に叩きつける。
「……るせねェ……許せねェあのクソ野郎……!!」
 透が何より大切にしていた存在を傷つけられた。それこそが彼女の琴線に触れた。それは実に道理が通っていたのだが、その彼女の雰囲気は実に恐怖と怒りに満ちた歪なものであった。
「――天音さん。とりあえず今は体勢を立て直すべきです。ただでさえ、貴女は一度敗北し、子供たちを助けた際もかなりの傷を負っていました。自分の命を擲とうとする無茶は、仮にも先輩である私としては看過できません」
 透を案じるエヴァであったが、『急いては事を仕損じる』といった安定重視の考えが気にくわなかったのか、それとも『憎たらしい相手に負けた』という現実を突きつけられたことが気にくわなかったのか。彼女の怒りの炎に油を注ぐ結果となる。
「ああ、俺は弱いさ!! それでもガキどもをこうしたアイツが何より許せないんだよ!! 俺はあのクソ野郎を殺してやる、生きていることを後悔するほど惨たらしく――――」
「……礼安さん、今から私はらしくもなく怒ります」
 透がグラトニーに対しての恨み節を吐き出しているとき、エヴァは透を平手打ちした。そこまで戦闘のプロフェッショナルではないエヴァのため、痛みはそこまで無いだろう。しかし、透からは不思議とそれ以上の恨み節が漏れ出ることは無かった。
 なぜなら、エヴァは泣いていたのだ。平手を貰ったことに対して、何か言い返してやろうと顔を上げた透が、その顔を見てしまったのだ。何故泣いているのか分からないために、言葉を失ったのだ。
「――最初、貴女は子供たちが傷つけられたことに対し怒っているのを見て、多少の無茶は大目に見ようとも思いました。でも……今の貴女は英雄じゃあない。対象を殺すことを目的としたただの『復讐者≪アヴェンジャー≫』だ」
 エヴァの横に立つ存在、礼安。彼女はクランが襲撃してきたときも、フォルニカを相手にした時も『民間人を守る』『誇りを守る』『相手を闇から救い出す』ことを念頭に置いて行動していた。だからこそ、エヴァは礼安に惚れた。礼安の多少無茶とも思える行動も、どこか許せていた。
 しかし、今透が目的としているのは、『グラトニーへの報復、つまるところ殺害』。英雄である前に、人として許せなかったのだ。殺人を許容するなど、誰であれ肯定できるものでは無かったのだ。
「……貴女が英雄学園入試に首席で合格したと聞いて、かなり期待していました。ですが……ただちょっと力を兼ね備えただけの……復讐心に駆られた獣同然で見ていられません。今の貴女は――武器を卸す価値もない人。英雄として失格です」
 そのエヴァの言葉に、何も言い返すことが出来ない透。頬に未だ残るひりつきを感じながら、言葉を噛み締めることしか出来ずにいた。
 エヴァは涙を浮かべながら、その場を足早に立ち去る。残されたのは礼安と透のみ。
 しばらくの静寂。最初、救護班皆エヴァの平手打ちに驚愕したものの、自分たちの使命を全うするべく子供たちの治療に専念するため戻っていった。
 透は完全に意気消沈していた。先ほどまでの殺気は、全てエヴァの心からの叱責によってかき消されてしまった。
 そして礼安は、そんなダウナーな透に手を差し出す。笑顔ではなかったが、せめて気が紛れれば、その一心であったのだ。
「――透ちゃん。ちょっと屋上に行こうか。多分……今部屋には戻り辛いだろうし」
 透は俯き無言のまま、ほんの少しだけ頷いた。

 旅館屋上。普段は解放されていないものの、職員が一服するためなど、何か特殊用途で用いられる際、解放される。今回は礼安が旅館の主に許可を取り、「少しでも気が紛れるなら」と喜んで鍵を解放してくれた。
 辺りが高いフェンスで囲まれ、灰皿以外にはベンチがたった一つ。それだけの実にシンプルかつ開けた屋上である。
 透は力なくベンチに深く座り込み、礼安もその隣に腰かける。礼安は旅館内の自動販売機で購入した缶ジュースを一本手渡す。拒否することなく、透はそれを受け取るも、開ける素振りすらない。
 無論だが、透から話し出すことは無い。ただ黙ってもらった缶ジュースを見つめるのみであった。それを考慮していた礼安は、満天の星空を見上げる。
「……あそこまで怒ったエヴァちゃん初めて見たよ、まあまだ出会って数日だけどね」
 ほんの少しの冗談を交えながら、缶ジュースの封を開け一息に飲み干す。
「――天音ちゃん、私たちに話してくれた家族の話。あの話をしてくれている時の天音ちゃんの顔凄い良かったよ。本当に好きな存在の事を話してくれてる、それが何よりうれしかったし……天音ちゃん、楽しそうだったよ」
「――――俺は、そんなんじゃ――」
 空き缶を側に置き、透の手を両手で包み込む。まるで子供のような温かさが伝わってくる。礼安は、少しでも透の手が冷えないように、暖かいココアを用意した。伝わる人の温かさは、少なからず透の心を溶かしている証であった。
 透の目をしっかりとまっすぐな瞳で見つめる礼安。その瞳に、透は驚愕した。ここまで出会って間もない人間をここまで信じられる人間は、そういないだろう。実際透は若干の人間不信の気も混じっているのだが、礼安ほどの人間には出会ったことがない。
「正直、私には複雑なことは分からない。でも、透ちゃんが英雄として戦う理由は……もう見つかってるんじゃあないかな。その本当の願いに、本当の理由に……天音ちゃんの中にいる英雄は応えてくれると思うよ」
 今からでも遅くない、拙い表現でありながらも、礼安は透を見限ってはいなかった。一人の英雄として、再起のチャンスがあると芯の部分で理解していたのだ。
「……んなこと言ったってよ。初めてライセンスを顕現させた時以来……俺はアイツの声を聞いてないんだぞ」
「なら、自分を少しでも理解した今がチャンスだよ! 強みも弱みも、理解して受け入れる。そこからが、英雄として強くなれる第一歩だよ。一緒に『最強』の英雄、目指そうよ!」
「――本当に、お前……イカれてるよ。お節介が極まるとそうなるんだな」
 透が初めて見せた、呆れたような笑みに頬を緩ませる礼安。ほんの少し、関係性が進歩したような気がしたのだった。

 陰から二人の話を聞いていた人物、エヴァ。いくら相手が間違った発言をしてそれに対して指摘したとはいえ、やり過ぎた自覚があったために謝ろうと透の元に向かおうとしていたのだ。
「……礼安さん、やっぱり貴女は凄い。どれだけ突っぱねられようとも……それでも歩み寄ろうとするなんて。やっぱり……私はまだまだ未熟ですね」
 礼安同様、旅館内の自販機で自分の大好きなカロリーメイトを購入し、簡易的なお詫びをしようと考えていたエヴァ。芯の部分では認めずとも、それでも更生の余地がないわけではない、そう考えたエヴァの最も合理的な結論であった。
 しかし、先を越すはそれ以上の異常な優しさ。まるで慈母神の如く。万物を優しく包み込もうとする、それでいて自分がどれだけ傷つくかは一切度外視、まるでアニメやゲーム、特撮ヒーローの世界からそっくりそのまま出てきたかのような存在≪イレギュラー≫。
 だからこそ、エヴァにとって礼安はたまらなく眩しく感じるのだった。
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登場人物紹介

瀧本 礼安≪タキモト ライア≫

「誰かの『助けて』って声が聞こえたなら、そこに現れるのが私! 私たちが来たからにはもう大丈夫、安心していいよ!」

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……水色セミロング

因子……『アーサー王伝説』よりアーサー・ペンドラゴン

欲の根源……『赤の他人も友達も、総じて守るため


 自他ともに認める、究極のお人よし。

 過去自分が受けた災難を他人に経験してほしくないために、困っている人に迷わず手を差し伸べることのできる、揺ぎ無い正義感の持ち主。学園から支給されたデバイスドライバーをほぼ初見で扱った、イレギュラー的存在でもある。

 それには多少なり理由があり、現トレジャーハンターでもある父親が元々英雄で、幼いころから触れていた点にある。

 彼女の中にある因子は、『アーサー王』。

 アーサー王自体が持つ高いポテンシャルと、礼安の持つ天性のバトルセンスによって、強さが上位のものとなる。使用武器は様々であり、その場に応じた多種多様な武器を持つ。

 彼女が戦う理由は、『赤の他人も友達も、総じて守るため』。

 お肉とゲームが大好き。それでいて栄養が大体一部に行くのと、動きやすい引き締まった体形をしているため、少なからず疎ましく思う人間はいる。本人曰く、『太らない体質』だそう。


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エヴァ・クリストフ

強い意志がある限り、『武器の匠』として仕事をするだけさ

性別……女子

年齢……十六歳

年次……『武器≪ウエポン≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……金髪ロング

因子……刀鍛冶師・『村正

欲の根源……『???』


 この世界における、あらゆる武器のメンテナンスや製造が可能な『武器の匠』≪ウエポンズ・マスタリー≫。

 両親から継承し、若くしてプロ英雄たちの武器の面倒を見ている。そのため多くのプロ英雄たちは彼女に頭が上がらない。

 しかし同時にかなりの変態。この世に遍く存在する武器たちや、英雄の中でも女子や女性をこよなく愛しており(無論一般人含む)、所謂レズビアン。

 そのため、男がいるか、あるいは新たな扉を開きたくない女性は、こぞって彼女から距離をとる。本人はそろそろ変態気質を治そうとしているものの、一向に治る気配はない。何なら礼安たちの影響でもっと酷くなった。

 過去のトラウマから、男性と銃が大の苦手。彼女から語ってくれるときは、もう少し先になりそう。

 普段は非戦闘員であるが、親から受け継いだ『鍛冶屋の小槌』を使役し、辺りの無機物や有機物を武器として扱うことが可能。そのため、並の英雄よりも戦える。

 実はかなり頭脳指数が高く、作戦立案もできるほど。眉目秀麗さも合わせ、初見時の印象は普通ならとてもいい。普通なら。作中の女性キャラの中でも、屈指の『ナイスバディ』であり、主要キャラの中で一番『デカい』。僅差で次点は礼安。

 武器科でありながら、自分の開発した『デュアルムラマサ・Mark3』を用いて変身することが可能。厳密には英雄ではないため、変身時の掛け声が唯一異なる。

 アメリカンな大盛り料理、バーベキューが大好き。元々アメリカ出身のため、そういった豪快な食文化に慣れた結果。しかしそれよりも大好きなものは女子、女性を食べること。食人ではない。


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真来 院≪シンラ カコイ≫

「王の御前よ、道を開けなさい!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入学前→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……O型

髪型……クリムゾンレッドのショート

因子……『ギルガメッシュ叙事詩』よりギルガメッシュ王

欲の根源……『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため


 礼安とは腐れ縁のようなもの――と言いながら、早十五年。長い間礼安の側に居続ける、礼安にとって大事な存在。

 日本を代表する真来財閥の長女で、次期当主として家を背負う人間でもある。お嬢様言葉が崩れたようなラフな口調をよくしている。まあだいたい礼安のせい。

 礼安をとりわけ大事に思っており、少々過保護な面が垣間見える。しかし律するときはきっちり決めるため、周りからの人望は礼安同様厚い。本人はお人よしではない、と語っているものの、礼安ほどではないにしてもお人よしであり、おせっかい焼きである。見ず知らずの人間に対してもかなりのおせっかい焼きであるが、礼安が関わるとお母さんのようになる。

 彼女の中にある因子は、『ギルガメッシュ』。

 まだ力を制御しきれはしないものの、入学前の生徒としては異例。弓を主に使い、トリッキーな戦いを得意とする。

 彼女が戦う理由は、『己の誇り(礼安や、礼安の好きな場所)を護るため』

 実は、礼安と院は幼馴染ではなく、家族関係にある。礼安と同様、亡くなった母親に対して尊敬の念を抱いている。今は礼安の精神の安寧を保つため、父である信一郎と共に礼安のメンタルケアを行っている。

 大分スレンダー体型であるため、礼安の『一部分』を時たま羨ましく思うときがある。礼安はそんなありのままの院を「可愛い!」と語るが、院はそんな礼安を見て「私の礼安は私なんかよりももっと可愛い!!」と親バカ(?)っぷりをいかんなく発揮する。

 甘いものが好きで、礼安とそこ辺りの好みが合わないことが悲しいらしい。


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天音 透≪アマネ トオル≫

「俺が、最強だ!!

性別……女子

年齢……十五歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・一年一組

血液型……AB型

髪型……黒ベースに黄色のメッシュの入ったショート

因子……『西遊記』より孫悟空

欲の根源……『特になし』→『自分で自分を守れない、弱い奴を従えて誰も傷つかない世を創る


 英雄学園の一般入試を勉学方面、実技方面両方でほぼ満点をたたき出し、主席として新入生生徒代表である生徒。入学前時点での強さは、礼安と同格であった。

 しかし、礼安と院両人が神奈川支部との一件を経て、圧倒的な強さを得た上に、学園長の実の娘であることが発覚してから、『恵まれた存在』として両人を敵視していた。

 埼玉県内のスラム街出身であり、自力で生きる術を身に着けているため、家事能力や自分より下の年齢の子供の世話はお手の物。実際、血縁関係こそないものの、『ホロコースト事件』により両親を失った子供たち数名を疑似的な家族として匿って世話していた。

 埼玉支部(特にそこの支部長である、コードネーム・グラトニー)とは並々ならぬ因縁があり、元々はある程度恵まれた家庭であった天音家を、グラトニー自身の逆恨みによって崩壊させられたため、最初は殺意混じりに敵対していた。

 『勝気少女』編で礼安やエヴァから『英雄』としての心構えを説かれ、グラトニーへの復讐をすることは変わらなかったが、生きて罪を償わせる選択を取った。その際、敵対視していた礼安と完全に和解し、協力し合って埼玉の平和を勝ち取った。

 主要キャラ内で最もスレンダーであり、圧倒的モデル体型。貧困生活を送っていたため、贅肉などは無く、一番『小さい』。一人称も『俺』。弟妹達を食って行かせるため、厳しい世を若い中で渡り歩いてきたため、肝はかなり据わっている。

 側近である『剣崎奈央≪ケンザキ ナオ≫』と『橘 立花≪タチバナ リッカ≫』とは、同じスラムで育った幼馴染。二人が武器科に移った後も、弟妹たちと共に食事したり、遊んだりしているらしい。

 埼玉での一件が片付いた後から、礼安に対しては尊敬の念とほんのちょっぴり好意的な目を向けている。

 院と同様甘いものが好き。埼玉支部との一件後、二人でスイーツ巡りをしたり、可愛いものを集めたりしているらしい。


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丙良 慎介≪ヘイラ シンスケ≫

「英雄の時間≪ヒーロータイム≫と、洒落こもうか」

性別……男子

年齢……十六歳

年次……英雄学園入試主席入学→『英雄≪ヒーロー≫』科・二年一組

血液型……AB型

髪型……ダークブラウンのベリーショート

因子……『ギリシャ神話』よりヘラクレス

欲の根源……『???


 英雄学園東京本校にて、座学実技共に好成績を収めた、そんな一握りの存在が持てる『仮免許』を持つ、英雄学園の中でもかなりのエリート。

 一般人からの認知度も、英雄の中での知名度も高く、さらに立ち居振る舞いに嫌な点が見つからない、好青年の極み。そのため、両性から人気がある。決め台詞内の『英雄の時間≪ヒーロータイム≫』は、今は亡き丙良の先輩の決め台詞であった。

 かつての一年生時代に、入学前の生徒が見学していた丙良の先輩との実習授業内において、神奈川支部の襲撃が発生。その時点の未熟な力ではヘリオをはじめとした面々には敵わず、丙良は深い傷を負った。さらに丙良が庇われた結果、丙良の先輩とその入学前の志望生徒二人が目の前で皆死亡。

 首席で入学したから、と言って世の中は甘くない、さらに自分が敵わない存在などごまんといることに辟易した丙良は、ふさぎ込んでしまった。誰かと深く関わることで、その誰かが亡くなった際の精神ダメージを、もろに食らうことを恐れた結果、後輩や先輩、同級生において、深く関わる存在は実に少なくなってしまった。現時点において、彼と同級生で深い関係にあるのは、エヴァと信玄(『大うつけ者』編時点)のみ。

 しかし、神奈川支部との一件の中で、狂気的なほどに勇敢な礼安、そしてその礼安のお目付け役である院との出会いで、保守的な考えが一部改まっていく。『大うつけ者』編時点において、後輩内において深い関係を築き上げたのは礼安、院、透の三人となった。

 彼の中にある因子は、『ヘラクレス』。主要キャラ内で、最も防御力が高いため、より堅実かつトリッキーな戦いを好む。礼安とは能力的に相性が悪いと思われがちだが、『砂鉄』を操る能力を用いれば電気と土は共存できる。

 好物はピザ。特に安定と値段重視のマルゲリータ。

 礼安たちの『微笑ましいやり取り』に、一切介入しないようにしている。


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瀧本 信一郎≪タキモト シンイチロウ≫

「只今より、怪人○○の処刑を執行する」

性別……男子

年齢……五十歳

年次(?)……『原初の英雄』→私財を投じ『英雄学園東京本校』設立、同タイミングで学園長就任

血液型……AB型

髪型……紫色のロングを後ろで雑に束ねた雑ポニーテール

因子……『???

欲の根源……『???


 世に『英雄≪ヒーロー≫』の概念を生みだした張本人であり、世界を股にかけ自分の気に入った変なもの……もとい聖遺物を収集するトレジャーハンターでもあり、英雄学園東京本校学園長をはじめとして、世界中に様々な分校を作り名誉学園長となった、日本を代表する『原初の英雄』。

 現役時代、その圧倒的強さから『処刑人≪スィーパー≫』とまで語られる男である。

 しかし、今はその尖った異名などどこへやら、子煩悩かつ常時柔らかな笑みを絶やさない、柔和な人物に。五十歳とは思えないほどにしわが存在せず、全てを知らない人が彼を見たら二十代と空見してしまうほど。

 学園生徒と分け隔てなく接しているものの、実の娘である礼安と院に関しては目に見えてデレデレ。尋常でないほどの学内通貨をお小遣いとして支給している。週一のペースで。

 今も、来たるべく災厄の可能性を鑑みて、修行は怠らないようにしているものの、現役時代よりは戦力ダウン。本人はそれを酷く恥じている様子である。

 その理由が、何より礼安と院の母であり、信一郎の妻を亡くしたことに起因している。もう大切な存在を亡くしてしまわないように、いざというタイミングで自分も動けるようにしているのだ。

 他の英雄と異なり、デバイスドライバーの祖たる『デバイスドライバー・シン』を用いて変身する。デバイスドライバーと比べるといわゆるプロトタイプに位置するモデルだが、実際の出力量はデバイスドライバーの百倍ほど。力の暴走などのリスクを完全に取り払ったがゆえに、ニュータイプでありながらパワーダウンしている。『シン』は現状、信一郎以外に扱える者は完全に存在しない。

 今まで、数多くの事件を単独で解決してきたのだが、日本中を震撼させた『とある事件』は何者かと共に戦い勝利したらしいが、その人物は不明。

 ちなみに、それほどの功績を残しておきながら、生徒たちにはまあまあなレベルでイジられている。特に、一昔前の学園ドラマの熱血教師を夢見るがゆえに、時代錯誤とも思えるシーンを実現させたいと、本人は試行錯誤している。しかし生徒たちは「そんなの今のご時世ありえねー」と白眼視。透もその一人である。しかしそのイジリを本人も仕方ないと容認しているため、特に問題はない。


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