第24話「淡い期待」

文字数 521文字

私ね、彼氏ができたの。

 僕は呆然として、何も考えられずにしばらく固まっていた。


 正直なところ嫉妬や悲しみといった感情もあったが、彼女がそういう“普通のこと”ができるようになったのは嬉しいという気持ちもあった。そう自分に言い聞かせた。

そっか。お幸せにね。
 それを最後に僕らは連絡を取らなくなった。

 大学の勉強が忙しくなってきた僕は、次第に彼女のことも考えなくなっていった。いつも通り時は流れる。


 僕は普通に大学で勉強して、それが終わるとアルバイトをして、あとは猫を撫でたりして過ごしていた。それなりの成績で単位を取り、進級した。


 2年生になると講義の入れ方は自由になってきたが、僕は特に希望が無かったので取れるだけ講義を入れた。

 春が終わり夏が来る。夏が終わると秋になる。時はいつも通り、当たり前のように流れていった。


 1月になると、周りの同級生達は成人式や同窓会の話をしていた。


 "同窓会"

 僕は久しぶりに彼女のことを思い出した。彼女は同窓会に参加するのだろうか。尋ねてみようと思ったが、結局連絡はしなかった。

 元々は同窓会に行くつもりなど無かったが、彼女に会えるかもしれないというよこしまな期待もあり、僕は高校の同窓会に出席することにした。

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登場人物紹介

“不完全”な僕。世界から色が消え、ただ時が過ぎるのを待っている。

”完全”なクラスメイトの女の子。僕とは真逆の存在。

僕の母。父と2人で猫カフェを経営している。

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