第7話「デートの約束」

文字数 531文字

今度の土曜日、一緒に出かけない?
 彼女は僕の目を見つめながら言った。“なぜ僕なんかを誘う?”彼女と関わり始めてから、この疑問の繰り返しだ。彼女からデート(?)に誘われた僕はとてつもなく動揺し、鼓動が速くなり、顔が熱くなったが全力で平然を装った。
構わないよ。
良かった。ありがとう。
    彼女は下を向きながら微笑んでいた。ちなみに今日は水曜日なので、約束の土曜日は3日後だ。
気になっていた喫茶店があるんだけど、1人では入りづらくて。
女友達とじゃなくていいの?
うん、いいの。
そして彼女は少し間を空けて、足元の道路を見つめながら続けた。
私には友達がいないから。
どういうこと?
内緒。
 それから黙って歩いているうちに彼女のバス停に着き、他愛のない話をしながらバスを待った。ディズニーの新作について話していたところでバスがやって来た。
今日もありがとう。また明日ね。
うん、また明日。

さっきは本当に申し訳なかった。

だから、もう謝らなくていいって言ったでしょう。
 再び僕の頬を小突く。僕はまた謝りそうになったが、ぎりぎりで言葉を飲み込んだ。そして彼女はバスに乗り込むと、やはり一番後ろの席に座り僕に向けて小さく手を振った。以前よりも素敵な笑顔だった。

 次の日、彼女は学校を休んだ。

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登場人物紹介

“不完全”な僕。世界から色が消え、ただ時が過ぎるのを待っている。

”完全”なクラスメイトの女の子。僕とは真逆の存在。

僕の母。父と2人で猫カフェを経営している。

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