第39話「働いてみて思ったこと」

文字数 455文字

 そうして僕は大学での4年間を終えて大学院に進んだ。

 1年後に卒業した彼女は児童養護施設に就職した。お互いに忙しくなり会う頻度は減ったが、やはり不安はなかった。僕らはたまに会うと相変わらず公園でじっと座ったり、川沿いを歩いたり、彼女の家で寝たりした。


 ある日、僕らは手を握りながら定番の川沿いを歩いていた。

君は社会人の先輩だね。
まだ1年目だけれどね。
児童養護施設で働くのって大変?
そうね。

楽な仕事ではないと思うけど、学べることも多いわ。

子どもは好き?
彼女は口元を触りながら返答の言葉を考えた。
“子どもが好きか”と言われると正直まだ分からないわ。


でもね、施設にいる彼らと接していると、高校の近くの公園で初めてあなたを見た日を思い出すのよ。本当は優しい心を持っているけど、心を閉ざしてしまっているような目をしていたあなたを。


だから、あなたと同じように彼らのことも支えてあげたいとは思っているわ。昔の私達を助けるような気持ちでね。

やっぱり君は素敵だよ。
ありがとう。
 そんな風にして、いつも通り僕らの時は流れていった。
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登場人物紹介

“不完全”な僕。世界から色が消え、ただ時が過ぎるのを待っている。

”完全”なクラスメイトの女の子。僕とは真逆の存在。

僕の母。父と2人で猫カフェを経営している。

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