p59 択一問題
文字数 1,479文字
もう大変な暴れ泣きである。さすがの幻覚もタジタジである。
「柴田さんの話に戻すけどね、彼のことが大嫌いなのは、本当は大嫌いじゃないからだよ。友達だと思っているから、突き飛ばされたのがショックだったんだよ」
「あんなやつ、友達じゃないもン゛」
「友達だから、食料を分けてあげたいって思ったんじゃないかなぁ?」
「違う、あいつが腹を空かせてると、他の人が怖がるから。アベイユとか、高橋さんとか、中村さんとか」
「ソロは柴田さんが女の子たちから怖がられるのがイヤだったんだよ。怖いヒトじゃないって、アベイユたちに知ってもらいたかったから」
「そうだったとしても、リョウがあいつの肩を持ってオレを責めるのはおかしいもン゛」
「おかしくないよ! 」
リョウのひときわ大きな声に呆気に取られ、ソロは一瞬泣き止んだ。
「弱いオレをなんで責める」
「弱いからって、柴田一門にいいようにやられて、ソロは悔しくないの」
「落語家一門みたいな言い方すんなし」
返事の代わりに強く抱きしめられて、ソロはますます腕の中で暴れた。
泣き喚 きも再開である。
しかし、急に、本物のリョウのたくましい腕橈骨筋 が思い出されて、顔が熱くなった。あんなに骨太でたくましい腕に見えたのに、今、自分を無理やり押さえつけている腕の、なんと柔らかい弾力。顔に当たる胸筋の柔らかさと温かさ。
自分のささくれだった神経を包み込むような柔らかさに、ソロは切なくなってしまった。
幻覚なのが、ますます悲しい。
「ソロ、いじめてごめん」
「なんでオレを責めるん」
「やきもちだよ。ソロを責めるのがおかしいなんて、わかってる」
「やきもち? 幻覚なのに? 」
「だって、柴田さんを異性として意識するなんて」
「イヤか」
「なんか、負けた気分」
「ぜんぜん負けてないぞ」
幻覚が大きな声を出した理由を知って、ソロは急に機嫌が良くなってしまった。
「幻覚でも、ろョウは勝ってる」
泣き喚 くのもやめて、大人しくリョウの腕の中に納 まった。
「どうせ幻覚だよ。柴田さんなんて放って置けばいいのに。なんで」
「なんとなく」
「生理的にムリなのに? 」
「ソレとコレとは別のような。オレもよくわかんない。でも、さっきキャピタツの奴に突き飛ばされて、オレはショックだった。なんだか汚いものを見るような目で見られて、悪意むき出しっていうか、なんて言ったらいいのか」
「・・・・・・ごめん、ソロ」
急にトーンダウンしたリョウに、ソロの導火線も勢いがなくなってしまった。
「ろぉうは悪くない。サンタの病室で会ったばっかのオレを忘れて『なんでテメーがここにいるんだ』って突き飛ばしてきたキャピタルが悪い。常 にいつメシを食ったか思い出せないからって、いくら何でも忘れるの早すぎだ」
「誰も悪くない。でも、ソロ・・・・・・本当にごめん。さっきも自意識過剰だなんて、傷口に塩を塗るようなことを言って悪かった」
「リョウが謝ることない。悪くない。全部キャピタルが悪いんだ。ウンコも長い」
「彼も悪くないよ。柴田さんも一緒に拾ってくれたんだろ? どんぐり。それも灰にされちゃって気の毒だったね」
「キャピタルはどんぐり拾わないで殻ごと食ってたから、実質アイツが拾ったどんぐりは無い」
「アゴが丈夫なんだね」
「キャピタルは義雄 に見抜かれたぜ、ガラが悪いって」
「でも、柴田さんは自分なりにソロを友達だと思ってるんだよ。ちょっと食料を見る目で見ちゃうことがあったかもしれないけれど」
「アイツの肩なんか持っちゃヤダ。話は変わるけど、オレとキャピタルどっちがカワイイと思う」
「なぜ択一問題にする」
「いいから正直に言って」
「柴田さんの話に戻すけどね、彼のことが大嫌いなのは、本当は大嫌いじゃないからだよ。友達だと思っているから、突き飛ばされたのがショックだったんだよ」
「あんなやつ、友達じゃないもン゛」
「友達だから、食料を分けてあげたいって思ったんじゃないかなぁ?」
「違う、あいつが腹を空かせてると、他の人が怖がるから。アベイユとか、高橋さんとか、中村さんとか」
「ソロは柴田さんが女の子たちから怖がられるのがイヤだったんだよ。怖いヒトじゃないって、アベイユたちに知ってもらいたかったから」
「そうだったとしても、リョウがあいつの肩を持ってオレを責めるのはおかしいもン゛」
「おかしくないよ! 」
リョウのひときわ大きな声に呆気に取られ、ソロは一瞬泣き止んだ。
「弱いオレをなんで責める」
「弱いからって、柴田一門にいいようにやられて、ソロは悔しくないの」
「落語家一門みたいな言い方すんなし」
返事の代わりに強く抱きしめられて、ソロはますます腕の中で暴れた。
泣き
しかし、急に、本物のリョウのたくましい
自分のささくれだった神経を包み込むような柔らかさに、ソロは切なくなってしまった。
幻覚なのが、ますます悲しい。
「ソロ、いじめてごめん」
「なんでオレを責めるん」
「やきもちだよ。ソロを責めるのがおかしいなんて、わかってる」
「やきもち? 幻覚なのに? 」
「だって、柴田さんを異性として意識するなんて」
「イヤか」
「なんか、負けた気分」
「ぜんぜん負けてないぞ」
幻覚が大きな声を出した理由を知って、ソロは急に機嫌が良くなってしまった。
「幻覚でも、ろョウは勝ってる」
泣き
「どうせ幻覚だよ。柴田さんなんて放って置けばいいのに。なんで」
「なんとなく」
「生理的にムリなのに? 」
「ソレとコレとは別のような。オレもよくわかんない。でも、さっきキャピタツの奴に突き飛ばされて、オレはショックだった。なんだか汚いものを見るような目で見られて、悪意むき出しっていうか、なんて言ったらいいのか」
「・・・・・・ごめん、ソロ」
急にトーンダウンしたリョウに、ソロの導火線も勢いがなくなってしまった。
「ろぉうは悪くない。サンタの病室で会ったばっかのオレを忘れて『なんでテメーがここにいるんだ』って突き飛ばしてきたキャピタルが悪い。
「誰も悪くない。でも、ソロ・・・・・・本当にごめん。さっきも自意識過剰だなんて、傷口に塩を塗るようなことを言って悪かった」
「リョウが謝ることない。悪くない。全部キャピタルが悪いんだ。ウンコも長い」
「彼も悪くないよ。柴田さんも一緒に拾ってくれたんだろ? どんぐり。それも灰にされちゃって気の毒だったね」
「キャピタルはどんぐり拾わないで殻ごと食ってたから、実質アイツが拾ったどんぐりは無い」
「アゴが丈夫なんだね」
「キャピタルは
「でも、柴田さんは自分なりにソロを友達だと思ってるんだよ。ちょっと食料を見る目で見ちゃうことがあったかもしれないけれど」
「アイツの肩なんか持っちゃヤダ。話は変わるけど、オレとキャピタルどっちがカワイイと思う」
「なぜ択一問題にする」
「いいから正直に言って」