p51 寂しい企画

文字数 666文字

「それ去年の出来事だろ」


 古い情報を開示して時間稼ぎを試みたが、あっさり見破られた。


「リトル・マッスルは家族に何でも話す」


「仲良いんだな」


 やっぱりキャピタルが羨ましい。


 なんだかんだ言って、結局、大切に育てられているのだ、キャピタルは。



「話は変わるがソロくん、女性の知り合いがいたら、おじさんに紹介して」



 唐突な要望にソロは気持ちが爆速で冷めていくのを感じた。


「おじさん、キャピタルのお母さんに怒らんないの? 」


「リトル・マッスルのお母さんには捨てられた」


「そうかぁ。オレが知ってる女の人なんて、浮島の女王くらいしかいねぇよ」


 ソロの知り合いで『性別が女性確定』なのは自分の母と浮島の女王だけである。


「女王? 女王様ってそれは本当ですか」


『女王』というパワーワードに男嫌いのおじさんはヒドく食らいついて、声が一気にウキウキに浮ついた。


 そして丁寧な言葉使いになった。


「どんな女性ですか。ぜひ謁見したいです」


「キャピタルのお母さん、もしかしたら、謝ったら拾いに戻って来るかもしれないぜ」


 そんなに食いつくなど思いもよらなかったので、ソロは慌てて話題を変えた。


「どうせ誰も拾いに戻ってきませんので、おじさんに女王様を紹介してください」


「やってみなきゃ、わかんないだろ」


「安心してください。バンクのお母さんにもファンドのお母さんにもリトル・マッスルのお母さんにも捨てられてますから、おじさんはフリーです」


「えっ、ぎゃ、じゃ、じゃざ、残念会するか・・・・・・」


「そんな寂しい企画を提案しないでください」


 その時、軍のサイレンが鳴り響いた。




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