意表を突かれる
文字数 1,403文字
駅の駐輪スペースに自転車を停めて、外から店内を窺う。夏休みのランチタイムなので、私達と同じ年頃の客が多い。
ハンバーガーショップに入って、メニューパネルと睨めっこする。それぞれの注文が決まると、シュウがレジに並んで、私は空席を探した。窓際のカウンター席を二つ分、確保する。
隣の椅子に荷物を置いて、レジ前の様子を眺めた。シュウの番は、次の次。
女の子グループがいるテーブルで、格好良い人がいるという声を拾う。彼女達の目線を辿ると、予想通り、シュウがいた。
どこへ行っても注目の的だね。他人事のように眺めていたら、シュウと目が合った。フワッと笑ったので、私も笑い返す。
女の子達の目線がチクチク刺さるので、逃げるように正面を向いた。嫉妬しないで、私達は付き合っていないもの。
ガラス越しに外を観察していると、カウンターに商品の載ったトレイがコトンと置かれる。シュウが来たので、自分の荷物を移動させた。
「お疲れ様。私の分、いくらだった?」
「おごるよ。夏休み中、世話になったお礼」
「課題で面倒を掛けたのは、私の方だよ」
「出掛ける前に臨時収入をもらったんだ。結子ちゃんにごちそうしなさいって、母さんに言われている」
「了解。そういう事情ならば、ゴチになります」
お言葉に甘えると、シュウは嬉しそうに笑った。いただきますと手を合わせてから、包装されたハンバーガーを掴む。
食事の合間、シュウとお喋りをした。テレビやインターネットで知った情報も楽しいけど、お互いの黒歴史を披露して笑い合った頃が懐かしい。
由衣ちゃんへの思いの丈も聞いたな。切なさを抱えながら微笑むシュウを、私は横で眺めていた。
今のシュウに必要なのは、私ではなくて由衣ちゃんかもしれない。やりきれない気持ちを抱えながら、ハンバーガーに噛り付く。
食べ終わると、長居することなくハンバーガーショップを出る。クーラーが利き過ぎていたので、外気が丁度良く感じた。シュウは前髪をかきあげながら、空を仰いでいる。
「疲れた?」
「平気と言いたいところだけど、体がなまっていたからヘトヘトだね」
「じゃあ、家まで送るよ」
「ううん、一人で帰れる。第一、そのセリフは男が言うものでしょ」
「もしかして、私が送り狼になるって警戒している?」
「逆の心配はしないんだ」
「シュウが私をそういう目で見る訳がないもん」
笑いながら返せば、シュウは半目になって見てくる。自転車を取りに行こうとすると、シュウもついてきた。
駐輪スペースは、自転車がビッチリ入っている割に、人がまばらである。どの辺りに停めたか分からなくなったので、シュウに尋ねようとした。でも、真剣な目で私を見るから、言葉が詰まってしまう。
「結子ちゃんが好きだよ」
ふざけないでと言おうとしたけど、シュウは恋愛をジョークにする子ではない。私は、シュウの眼差しに囚われる。
「結子ちゃんに避けられたくなくて、はじめは黙っていようとしたんだ。でも、いつ、何が起きるか分からないし、現にオレは事故に遭った。だから、悔いは残したくない」
違う、それは由衣ちゃんに向けた恋心だ。だから、真に受けては駄目。
早かれ遅かれ、記憶は戻る。おかしなことを言ってごめんねと、後々、シュウは謝ってくる。
「ごめん。シュウをそういう目で見られない」
「そっか」
シュウは悲しそうに微笑む。今のシュウも大事だけど、記憶を失う前のシュウとの友情を裏切れない。
ハンバーガーショップに入って、メニューパネルと睨めっこする。それぞれの注文が決まると、シュウがレジに並んで、私は空席を探した。窓際のカウンター席を二つ分、確保する。
隣の椅子に荷物を置いて、レジ前の様子を眺めた。シュウの番は、次の次。
女の子グループがいるテーブルで、格好良い人がいるという声を拾う。彼女達の目線を辿ると、予想通り、シュウがいた。
どこへ行っても注目の的だね。他人事のように眺めていたら、シュウと目が合った。フワッと笑ったので、私も笑い返す。
女の子達の目線がチクチク刺さるので、逃げるように正面を向いた。嫉妬しないで、私達は付き合っていないもの。
ガラス越しに外を観察していると、カウンターに商品の載ったトレイがコトンと置かれる。シュウが来たので、自分の荷物を移動させた。
「お疲れ様。私の分、いくらだった?」
「おごるよ。夏休み中、世話になったお礼」
「課題で面倒を掛けたのは、私の方だよ」
「出掛ける前に臨時収入をもらったんだ。結子ちゃんにごちそうしなさいって、母さんに言われている」
「了解。そういう事情ならば、ゴチになります」
お言葉に甘えると、シュウは嬉しそうに笑った。いただきますと手を合わせてから、包装されたハンバーガーを掴む。
食事の合間、シュウとお喋りをした。テレビやインターネットで知った情報も楽しいけど、お互いの黒歴史を披露して笑い合った頃が懐かしい。
由衣ちゃんへの思いの丈も聞いたな。切なさを抱えながら微笑むシュウを、私は横で眺めていた。
今のシュウに必要なのは、私ではなくて由衣ちゃんかもしれない。やりきれない気持ちを抱えながら、ハンバーガーに噛り付く。
食べ終わると、長居することなくハンバーガーショップを出る。クーラーが利き過ぎていたので、外気が丁度良く感じた。シュウは前髪をかきあげながら、空を仰いでいる。
「疲れた?」
「平気と言いたいところだけど、体がなまっていたからヘトヘトだね」
「じゃあ、家まで送るよ」
「ううん、一人で帰れる。第一、そのセリフは男が言うものでしょ」
「もしかして、私が送り狼になるって警戒している?」
「逆の心配はしないんだ」
「シュウが私をそういう目で見る訳がないもん」
笑いながら返せば、シュウは半目になって見てくる。自転車を取りに行こうとすると、シュウもついてきた。
駐輪スペースは、自転車がビッチリ入っている割に、人がまばらである。どの辺りに停めたか分からなくなったので、シュウに尋ねようとした。でも、真剣な目で私を見るから、言葉が詰まってしまう。
「結子ちゃんが好きだよ」
ふざけないでと言おうとしたけど、シュウは恋愛をジョークにする子ではない。私は、シュウの眼差しに囚われる。
「結子ちゃんに避けられたくなくて、はじめは黙っていようとしたんだ。でも、いつ、何が起きるか分からないし、現にオレは事故に遭った。だから、悔いは残したくない」
違う、それは由衣ちゃんに向けた恋心だ。だから、真に受けては駄目。
早かれ遅かれ、記憶は戻る。おかしなことを言ってごめんねと、後々、シュウは謝ってくる。
「ごめん。シュウをそういう目で見られない」
「そっか」
シュウは悲しそうに微笑む。今のシュウも大事だけど、記憶を失う前のシュウとの友情を裏切れない。
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