0、届かぬ懺悔

文字数 607文字

 全部失ってしまった。
 何一つ、守ることが出来なかった。
 誰一人、幸せにすることが出来なかった。

 自業自得とでも言おうか。自分は、正しいことをしていたつもりだった。これで良いんだと、振り撒いてきた。その種が、毒花を咲かせるなど知らずに。

 自分が行ってきた事は、間違いだった。しかし、その間違いも今となっては、後戻り出来ない程の花を咲かせた。どうしようもないのだ。自分には、どうしようも出来ない。

 父上、母上、兄上……やはり私は、どうしようもないクソ人間のようです。
 私に期待をかけて下さった貴方方(あなたがた)のお気持ちを、踏み(にじ)る結果になってしまったことを、心からお詫び申し上げます。

 今更謝ったところで、もう遅い。誰も、此処には居ないのだから。そんなことは判りきっている。しかし私は、私に関わった全ての人に、心の中で謝罪を捧げた。

 どうか、どうか、こんな私に、もう一度チャンスを与えて下さるというのなら、やり直しを始めるその瞬間に──私を殺して下さい。

 居ない方が良かったのです。
 誰も幸せになりませんでした。
 誰も幸せに出来ませんでした。
 誰も守れませんでした。
 何も出来ませんでした。
 何も変える事が出来ませんでした。
 怠けた自分の本性を、正せませんでした。
 全部、失ってしまいました。

 私の所為(せい)で、救えたものも、救えませんでした。私──僕が居たから。何もかも全てを。

 お願いです。どうか僕を、殺して。
 救って下さい──
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