お呼び出し

文字数 1,068文字

「なっ!?」

 思わず声が漏れた。剣は弾かれ、箱には傷ひとつ付いていない。

「だらしないわね。どいてなさい」

 ラミッタは手から氷、雷、炎、光弾をめちゃくちゃに放つ。

 だが、箱は微動だにしない。

「これは……」

 ラミッタは表情にこそ出さなかったが、内心驚いていた。

「仕方ないわね、一旦作戦の練り直しよ」

 ギャラリー達の視線もお構いなしにラミッタは街へと歩いていく。マルクエンも後を付いていった。

「はぁはぁ、やっと追いついたッスよ……」

 ケイとシヘンが息を切らしながらラミッタ達の元へやって来る。

「何か、周りの人達……。全員こっちを向いていませんか?」

「ちょっとだけ目立ちすぎただけよ。疲れたわ、宿屋でも取って休みましょう」

 そんな会話をして街へ入るが、表には人っ子一人いない。

 みな、家の中で鍵をかけジッとしているのだ。

 街を歩き、宿屋を見つけると、ラミッタはノックをして大きめの声を出した。

「もしもーし、誰か居ませんかー?」

 しばらくしてから、扉がゆっくりと、少しだけ開く。

「あ、あの、外はもう大丈夫なのでしょうか?」

 宿屋の主人が顔を見せ、そう尋ねた。

「えぇ、大丈夫ですよ」

 そうラミッタに言われるも、主人は警戒しながら扉をもう少し開けて辺りを見渡す。

「よ、良かったぁ……」

 ため息を漏らしながら言う主人。街の人々も窓や扉から外の様子を伺っていた。

「そこの冒険者の方々!! 少しお話よろしいでしょうか?」

 宿屋に入ろうと思ったその時。治安維持部隊の者にマルクエン達は呼び止められた。

 ベッドで休もうと思っていたラミッタは、あからさまに不満げな顔をする。マルクエンは返事をした。

「お話とは、何でしょうか?」

「先程の戦い、お見事でした。そこで、あなた方の腕を見込み、街の議会と冒険者ギルドからお願いしたいことがございまして」

「お願いごとですか?」

 何だろうかとマルクエンは思う。ラミッタは大体察しが付いているようだが。

「ご足労願えませんでしょうか?」

「あーはい。分かりました」

 ラミッタは面倒くさそうだったが、言葉を返し、一行は治安維持部隊の案内で立派な建物へと連れて行かれる。




 建物の中へと案内され、会議室へと通される。そこでは五名ほど人が待ち、座っていた。

 マルクエン達が部屋に入ると一斉に立ち上がる。

「この街の議長です。この度は何とお礼を言って良いものか……」

 深々と頭を下げる男。それに続いて他の者達も感謝を述べ、頭を下げた。

「いえいえ、街が無事で何よりです」

 マルクエンが言うと「どうぞおかけ下さい」と対面に座る形で座席に案内される。
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