三奈乃の読書日記

[創作論・評論]

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わたし――南ノ三奈乃が読んで面白かったと思う本を紹介していきたいと思います。
純文学多めになるかな? ……と思っていたのですが、エンタメもマンガも……もうなんでもありになってきました!
※表紙イラスト/ノーコピーライトガール

ファンレター

「描写」する練習

読書日記ではお久しぶりになります^ ^
今村夏子さんだけでなく、朝井リョウさんの『何者』も読みました!
読中読後のザワザワした感覚、どう表現したらいいのかなぁ、なんて考えながら、南ノさんのレビューを読み返してみると、何と的確で分かりやすい書評なの! と感動していたところでした。

『読者は「語り手」を無意識に信頼している』——ミステリ好きで、叙述トリックが大好物の私も、「何者」は見事に裏切られました。
南ノさんの書評を先に読んでいたにも関わらず、です。
理香に抱いていた感情も、所詮は語り手を通して想像していたからに過ぎませんね。
全てがひっくり返った時、感情がぐちゃぐちゃに撹拌されて、でも、最後には希望を感じました。

そして、今回の乗代雄介さんの『旅する練習』。
恥ずかしながら全く存じ上げない作家さまですけど、他サイトの書評で何度か作品はお見掛けしており、タイトルも魅力的なので気になっておりました。
でもって、南ノさんのレビューを読むと……もう買わないといけない気がします!
舞台となった地域にも、少し馴染みがあります。
この利根川沿いの街(竜ヶ崎、潮来、香取、神栖など)にも、仕事でよく出向いておりましたので、親近感があります。

余談ですけど、この利根川沿の街は「チバラキ県」とか「チバラキ共和国」などと呼ばれています(笑)
そのチバラキの都心部に近い我孫子市と、チバラキの外れ鹿島市はすごく離れているイメージなので……と思ったところで、だから「旅」、ロードムービーとか道中記のようなお話なのかな、と勝手に想像しました。

そして、道中の「描写する練習」に興味津々です。
人と人との伝達手段で、もっと利用されている方法が「言葉」と聞きました。
といっても至極当たり前ではありますけど、それなのに、言葉での表現ってものすごく難しいと思うのです。
事実を伝えるならまだしも、感覚や風景などの「描写」は、むしろ絵や写真、音楽などに託した方が伝わることもあるのかな? と思うこともあるぐらい、言葉での描写は難しいと思っています。
で、ふと気付いたのですが、朝井リョウさんの『何者』も含め、南ノさんの書評を読むことも私にとっては「描写」の練習になっているのだなぁと思いました。
とにかく、ものすごく読んでみたい本です!

返信(1)

茉莉花さま、お読みいただきありがとうございます!
そうですか!ついに『何者』を……
茉莉花さんでも、やっぱりあのラストには……「裏切られた」んですね…^^
変な言い方ですが、ほっとしてしまいました。レビューにあんなふうに書いてしまいましたけど、茉莉花さんはミステリーを読み込んでおられる方だし、もしかしてわかっちゃうかも…と実は心配だったんです…^^;
「全てがひっくり返った時、感情がぐちゃぐちゃに撹拌され」る…と書いて下さいましたが、私も正にそういう気分になりました!茉莉花さんとあの本の読後感を共有できて、なんだかすごく楽しいです(*^^*)

『旅する練習』ですが、この作品のラストはある意味…ある意味ですが…『何者』を超えていると私は思います。もしお時間がございましたら、ぜひぜひ読んでみて下さいませ~♪^^
「利根川沿の街は「チバラキ県」とか「チバラキ共和国」などと呼ばれている」……そ、そうだったんですか(笑)!でも、茉莉花さんが「チバラキの都心部に近い我孫子市と、チバラキの外れ鹿島市はすごく離れているイメージ」と仰る通り、距離的にはかなり離れているため、亜美ちゃんと「私」は、途中で練習もするし、亜美ちゃんの母親から日が暮れる前にホテルに入るように言われていることもあって(夜はホテルに泊まるんです)、何日もかけて歩いていくのです。
ですから、正にロードムービーの雰囲気があり、同時に弥次喜多道中記的な面白さもあるという感じです。

「感覚や風景などの「描写」は、むしろ絵や写真、音楽などに託した方が伝わることもある」……本当にその通りだと思います。言葉で風景を描写するのが至難の業だからこそ、「写生文」などという文章修行法ができたのかもしれないですよね^^
この小説の面白いところは、「私」がノートに書いた「風景描写の練習」だけでなく、地の文でもやっぱり風景描写があるんです。しかも、一回訪れた場所を日を改めてもう一回訪れているとか……けっこう微妙な時間のズレがあったりします(それが一種の仕掛けにもなっているんです)。
インタビュー記事によると、作者である乗代さん自身が、何度も小説の舞台を訪れて、作中人物と同じことをしたんだそうです。今どき珍しいというか……本当に「足を使って」書いた作品だったみたいです。

拙いレビューをご丁寧に読んで下さっただけでなく、身に余るお褒めの言葉をいただき、恐縮の至りですが、とっても嬉しいです!
本当にありがとうございます(*^^*)

追伸:『54字の物語』集、最新更新分、拝読させていただきました。今回も、すっごく面白かったです!
時事ネタって、私は個人的に、とても好きなんです。ただ、読むのは大好物なんですけど、自分では書けなくて……54字という短さの中に茉莉花さんの知性が光るというか…とにかく、すごくかっこよくて、憧れてしまいます♪^^