ファンレター
「きことわ」のご紹介を読んでいると幼い頃にどこかで嗅いだ懐かしい香りが蘇ってくるような気がしました。南ノさんの書かれる書評は、情感たっぷりな上に、理論的で説得力があります。まっすぐに進んでいるように感じる時間の中にも過去が滑り込んでくる、等の説明も頭で消化する必要がなく、すっと入ってきます。(まるでブドウ糖ゼリーだ!)「きことわ」がどのように時間を題材に物語を構築しているのか、ああ、読んでみたい。って気持ちになりました。(「幽霊」はストーリーから何からすっかりすべてを忘れていましたが、あの蚕のくだりだけはなんとなく覚えていました。名文はやはり、霧散せずに記憶の下に沈殿するんだなあと実感)
私、純文学、ほんっとうに苦手なんです。今まで読んだ「純文学」、古今東西の名作にみな挫折してきました。あの夏目漱石の「吾輩は猫である」さえも最初だけしか読めませんでした。なんでこんなに読めないのか。多分、頭の中で咀嚼するのがめんどくさいのだと思います。私の純文学の印象は深ーい所に味があって、その真髄に振れるには自分も深いところに潜らなくてはいけない(時には一緒に悲しい思いをして)というもので、即物的な私には到底無理。って遠ざけていました。でも、南ノさんの書評のような導きの綱があれば、純文学であっても物語世界に潜れるかも、って気がしてきました。私だけの感覚(読書としては邪道かも)ですが、「さあ、この話は時間をどう料理してるのかな」という読み手としてのテーマがはっきりしたほうが、挑んでいけそうです。
正月は「きことわ」読んでみようかな。(どん底の前に……)
あ、南ノさん、お忙しくされていると拝察しております。拙作への感想はもちろん、私が差し上げたファンレターへのお返事も無理されないでくださいね。何よりも健康が1番、肉体的にも、精神的にも無理は禁物です。くれぐれもご自愛ください。
返信(1)
北杜夫の「幽霊」のこと、不二原さんはきっと言及して下さると思っていました!嬉しい~^^
純文学…と言っても、私も純文学系の作品が全然読めなかった時期があって(今でも五大文芸誌なんて、殆ど読んだことがありません^^;)不二原さんが前のレターで書いて下さった、「心が強いとき」でないと読めないというの、私も本当によくわかります。不二原さんはそういう時SF系を読まれるのだと思いますが、私はそういう時はミステリ―か時代小説系で、一時期はそういうのばっかり読んでました^^ゞ
それにしても「吾輩は猫である」…あれは、けっこう読みにくいですよね!「坊っちゃん」がすごく読み易いのに比べて、あれはなんだか読みにくいです、本当に!(ユーモアのレベルが高すぎて注釈読まないと意味がわからないし、注釈やたら多いし…)むしろ漱石の作品の中で一番読みにくいんじゃないでしょうか。
「きことわ」はストーリー的には別に何が起こるわけでもないのですが、読んでいるとけっこう文章のリズムや情景が心地良くてよかったです^^
不二原さん、お気をつかわせてしまってすみません。不二原さんも日々のお仕事でお疲れの上、大作の御執筆、体力的にも本当に大変だと思います。どうかご自愛下さいませ。「青銀の風」は本当に面白いので、絶対に読み続けます!(^^)/