【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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21件のファンレター

☆NEW!!☆アルベール・カミュ『異邦人』 #ノーベル文学賞
皆さまに、ぜひとも読んでもらいたい! と思う作品を紹介しています。
ノーベル文学賞って気になるけど、難しそう……そんな受賞作の中身もネタバレなしで解説。
現在、お題企画「戦争について考える」に参加中です。

表題は『断片的なものの社会学』(岸政彦)のオマージュです。
※表紙はAdobe StockからFranzi Drawsさまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

「ペンギンの憂鬱」と「何が残るのか」

mikaさん、こんばんは。
アンドレイ・クルコフ「ペンギンの憂鬱」についてのmikaさんの作品読了後、「ロシアがウクライナへ侵攻した後、何が残るのか?」を読ませて頂きました。
クルコフという作家さん、全く知らなかったので、こういう方もいらっしゃるんだ、と知ることができました。ありがとうございます。
「ペンギンの憂鬱」、すごい可愛いんだけど、淋しそうな後ろ姿の… 素敵なタイトルです、笑。

やっぱり傷跡、こどもの頃の心の傷みたいなものが… 大なり小なり、誰にでもある、とはいえ、やはり戦争、虐待(戦争自体がとんでもない虐待)、これは強く強く、長い時間をかけても、消し難い、癒し難いものとして残るのでしょうか。

まったく、言葉、言語には全然罪はないです。でも言語まで「差別」されてしまう。失語症になってしまいますよ…。
ロシアの侵攻が始まって、日本でレストランを経営するロシア人が嫌がらせを受けたりしたらしいけど、情けない話です。
差別は「森だけ見て木を見ない」ですね。

そしてやっぱり教育って大事なんだなぁと思いました。教育というか、事実、あったことをそのまま伝える勇気、とでもいうのか。
学生時代、政治学の先生と「教科書裁判」の傍聴に行ったことがあります。もう内容を忘れているのですが(笑)、今ウィキペディアで見ると、教科書に家永三郎さん達が書いた戦争についての記述が、「暗すぎる」等の理由で検定に通らなかったとか。
明るい戦争なんてなかろうに、と思いました、笑。

ところで、先日は長い長いレターに、返信をありがとうございました。すごい沁みる言葉もあって、嬉しかったです。(とくに「実存」の、強靭な精神がなければ耐えられないのでは、には、深くうなずきました)

村山さんも「スマッシュ!」を書かれたし、ぼくもまた何か書きたいと思っていて、ほんとにいい機会に恵まれて…。
作品について、また頂いた返信の返信も書きたいと思ったりしますが、これからこの課題文学?を通じて、それぞれの作品について深掘り?していく、とかもアリかもしれないけど、何も決まっていません、笑。

でも三者三様(自分のことはさておき)みたいな感じで、面白く、興味深く作品を読むことができています。
どうもありがとうございます。
今後とも、こりずに(笑)よろしくお願いいたします。

返信(1)

かめさん、こんにちは。お読みいただきありがとうございます!

わたしが『ペンギンの憂鬱』と初めて出会ったのは、2014年の読書会です。
当時、ロシア語の原文も読みたいなと思って、海外発注したんです。
『ペンギンの憂鬱』の原書である≪Пикник на льду≫(氷上のピクニック)と、その続編の≪Закон улитки≫(カタツムリの法則)の両方。
そうして家に届いたのは、なぜか続編の≪Закон улитки≫(カタツムリの法則)だけでした。
いったいなぜ!? ちょっと雑すぎでは?? と不思議で仕方なかったです。
(日本の大手書店だったら、上下巻の小説を注文したお客さんに、下巻だけ送ってよこすなんてことないですよね。)

今考えてみると、2014年の時点でロシア国内では≪Пикник на льду≫(氷上のピクニック)がすでに手に入りにくい状態だった、つまり絶版状態だったのではないか、と思われます。

≪Пикник на льду≫(氷上のピクニック)はウクライナでは25万部を売り上げたそうで、30ヵ国語に翻訳され、ウクライナ語版は2000年に刊行されています。
そんなベストセラーが、ロシア国内では絶版状態……。刊行年が古いというだけでなく、何らかの別の理由があったのでは、と邪推してしまいますね。

2014年は、2月にマイダン革命(尊厳革命)が起こり、そこからクリミア危機、ドンバス戦争(ウクライナ東部紛争)が雪崩のように始まった年でした。
この2014年の出来事が、現在のロシア・ウクライナ戦争まで続いています。

2014年4月24日から25日にキエフで開催された「ウクライナ・ロシア対話会議」に、アンドレイ・クルコフは出席していました。
この会議の目的は、ロシアとウクライナの知識人が連帯し、両国の間に勃発した紛争に対抗するための象徴的な行動を行うことでした。
この会議には、現代ロシア文学を代表する作家リュドミラ・ウリツカヤや詩人レフ・ルビンシュテインも出席していました。

政治的な緊張状態にあったなかで、両国の作家や学者たちが自分の名前と顔をさらして、連帯をアピールするというのは、とても勇気がいる行動ですよね。
しかし、本格的な侵攻が始まった今となっては、もう「対話」で紛争解決できる段階ではなく、本当に残念でなりません。


おお、かめさんは「教科書裁判」を実際に傍聴されたのですね!
一連の教科書関連裁判のなかで、「沖縄集団自決・軍関与裁判」などは、今取り組んでいるお題とつながっていると思います。
加害者と被害者の間で事実認識がこうも食い違うのは、加害者本人が加害者という自覚が全くなかったのだろうな、と感じてしまいます。

中高生が自死する事件が起こると、学校でいじめがあったか調査が行われ、調査の結果「いじめはなかった」と学校が発表するという場面を報道でたびたび見ますよね。
これも、いじめの加害者たちはいじめをしていた認識がないのかもしれないですよね。
加害者が加害の自覚がないままでは、反省も後悔もしないし、また同じことを繰り返してしまうでしょう。

かめさんの『戦争について考える』と村山さんの『スマッシュ!』も拝読させていただきました!
またあらためてそちらに伺いますね。
年内は残り1か月になりましたが、引き続き「戦争」について一緒に考えていきましょう。
どうもありがとうございます!