バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門

作者 mika

[歴史]

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バイブル・スタディの仲間たちの会話をちょっとだけ覗いてみてください。
寝ころんでスラスラ読める! 「物語」がわかれば、聖書は楽しい。
聖書を最初から最後まで読み通すのは大変です。途中でいやになってしまうことも珍しくないでしょう。
なんとなく難しそうでも、聖書のことばの向こうには、豊かな歴史と文化が広がっています。
どなたでも、実際に聖書を読んでみようというかたのお役に立てればうれしいです。


アイコンはTopeconHeroesダーヤマ様の「ダ鳥獣戯画」より使用させていただきました。

ファンレター

古代の巨大建築

昔、ウルのスタンダードを見た時のことを思い出しました。古代の戦争を描いた壁画は、虐げられた人々の悲鳴まで聞こえるような迫力でした。あのような蹂躙の結果、遠いバビロンまで連れて行かれたイスラエルの人々は、どれほどの辛酸をなめたことでしょうか。
その先でジッグラトのような巨大建造物を見たら。悪の殿堂に見えて当然、という気もします。威圧的な塔の存在は、高い建築技術へのあこがれよりも、人心の離反と分散を招くのかな……という気がしました。

古代バビロニアの創造神話。物語のモチーフだけ見れば、旧約聖書と似ていますよね? でも神と人間の関係性から考えると、共通点は少ない……という理解で良いのでしょうか^^?(素人の感想ですみません)
聖書について疑問点があっても、教会の牧師さんに質問はしにくいものです。人間関係がちゃんとできていれば別なんでしょうけど、そうでない限り「その質問自体が失礼だ!」と叱られそうで怖いのです(笑)。その意味でも、mikaさんのこのチャットノベルは意義があるな~と思いました^^。

返信(1)

あおぞらさん、お読みいただきありがとうございます! ウルのスタンダードを実際にご覧になったんですね! 大英博物館に所蔵されているんですよね。「虐げられた人々の悲鳴まで聞こえるよう」とは…その迫力がすごくよく伝わってきます。
「諸民族の離散」を表した言い伝えが古くからあったとしても、離散の原因となった町および塔の名前を「バベル」としたのは、バビロン捕囚を生きのびた編集者の手が加えられているだろうと考えます。
「モチーフだけ見れば、旧約聖書と似て」いるけれど、「神と人間の関係性から考えると、共通点は少ない」という理解は、その通りです!
『エヌマ・エリシュ』は混沌の大水から光が現れ、天空、大地、太陽、星々、最後に人間が生まれて、神々は安息に入ります。この天地創造の順番は『創世記』と似ていると思います。もちろん違ったところもたくさんあります。初期の考古学者たちは創世記1章2節の「深淵」を意味する「テホム」というヘブライ語が、バビロニアの女神ティアマトと結びつくと論じていたそうです。しかし現代では、この説は言語学的に全く無理があると言われています。「ノアの箱舟」のお話と『ギルガメシュ叙事詩』や『アトラ・ハシース叙事詩』はたいへん似ていますよね。創造物語や洪水物語だけでなく、海の怪物のお話なども他宗教から素材をとったと考えられています。
こうした類似はおそらく意図的になされたものだろう、と言われています。捕囚時代にイスラエルの民はバビロニアの神々を信じる人々の中で自分たちのアイデンティティを保たなければなりませんでした。『エゼキエル書』には捕囚の真っ只中の困難な暮らしが描かれていて、バビロンには多くの外国人が住んでいたことが分かります。イスラエルの民がダビデ王朝以前から語り伝えてきた天地創造やノアの物語についても、捕囚時代のグローバルスタンダードに合わせて、バビロニア神話風に書きかえたのではないかとわたしは考えます。やむを得ずバビロニア風に表現形態を変えても、根本的な信仰のメッセージは変えなかったからこそ、創世記の創造物語には人間の尊厳があるのだと思います。
古代のバビロニアの神々もカナンの神々も、支配者階級の守護者であり、一般の人々は神々と支配者に仕える奴隷として位置付けられていたそうです。一方、イスラエルの神は虐げられた者たちの守り手であり、人間は神の奴隷ではなく、神から愛と恵みを注がれる存在です。イスラエルの民が信じた神と人間の関係は、古代ではきわめて画期的だったと言えます。

このチャットノベル、「意義がある」と言っていただけて、報われる思いです^^ たしかに、教会でいきなり牧師に「ノアの箱舟」は『ギルガメッシュ叙事詩』に似ていますよね?、なんて突撃するのは難しいですよね。このチャットノベルが少しでもあおぞらさんの聖書に対する疑問を解消するお手伝いになれば、うれしいです^^ 引き続きよろしくお願いいたします!