バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門

作者 mika

[歴史]

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バイブル・スタディの仲間たちの会話をちょっとだけ覗いてみてください。
寝ころんでスラスラ読める! 「物語」がわかれば、聖書は楽しい。
聖書を最初から最後まで読み通すのは大変です。途中でいやになってしまうことも珍しくないでしょう。
なんとなく難しそうでも、聖書のことばの向こうには、豊かな歴史と文化が広がっています。
どなたでも、実際に聖書を読んでみようというかたのお役に立てればうれしいです。


アイコンはTopeconHeroesダーヤマ様の「ダ鳥獣戯画」より使用させていただきました。

ファンレター

エジプトへ行く

こんばんは。聖書の解説、興味深く読ませていただいております。
結婚と同時に兄妹の契約を結ぶというお話に関心をもち、レターを書かせていただきました。

パートナーをどう見るか、であったり神を信じるか、という議論ももちろんなのですが、
自分としては、人間関係は契約である、と当時既に看破されていた、と読みました。
二重の関係は曖昧にも思えますが、しっかり契約することでその両義性はどちらも正当化され、公開できる。
西欧や中東における、契約に対する姿勢の根本をみたように感じました。

聖書そのもののお話から逸れて申し訳ありません。
引き続き、拝読させていただきます。よろしくお願いいたします。

返信(1)

村山さん、お読みいただきありがとうございます!
現代では考古学の新しい成果によって、族長物語(アブラハム、イサク、ヤコブ)の史実性が少しずつ明らかになってきています。ヌジ文書(粘土板の史料)には「結婚と同時に兄妹の契約を結ぶ」という社会的・法的慣行が見られるそうです。村山さんが「人間関係は契約である」とおっしゃる通りだと思います。
実は、アブラムがサライを「妹」と称して妻を王宮に売る話は、この後にもう一度描かれるんです。アブラムがまたやらかしてしまいます…。さらに、アブラムの息子イサクもまた保身のために妻リベカを「妹」と称する話があります。
遊牧民は常に「寄留者」として、その土地の階級社会の中できわめて弱い立場に置かれていました。そのような不安と恐怖の中で生き抜いた族長たちの物語には、弱い立場の者が強い立場の者に対して、うそをついて難を逃れるエピソードが繰り返し語られています。現代の目から見ると、ずるがしこいとも読めるエピソードですが、古代の遊牧民たちにとっては生活の知恵だったのかもしれませんね。
サライが本当にアブラムの「妹」(異母妹)だったのか、そうでないのかは、長い歴史の中で議論されてきました。わたしの意見では、「 テラの系図/アブラハムの旅立ち」の回で紹介した通り、アブラムの兄弟ハランの娘イスカとサライが同一人物だった、というユダヤ伝統の解釈が説得力あるように思います。イスカ=サライ説に基づけば異母妹ではなく姪であるので、レビ記の近親相姦を禁ずる法に適っているのです。

イエスは「わたしの母、わたしの兄弟とは、神の言葉を聞いて行う人たちのことである」(ルカ8:21)と言っています。キリストの前では性別も人種も年齢も関係なく、神を結び目とする兄弟姉妹であると証ししています。日本の教会でも、日頃から信徒は山田兄弟、佐々木姉妹というように呼び合っていますよ。修道士と修道女だけがブラザー、シスターではないんです。なので、アブラムとサライも、神の前では夫婦であり同時に兄妹と言えるかもしれませんね。
次回はアブラムの甥ロトのお話です。引き続きのぞいてみていただけるとうれしいです^^