バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門

作者 mika

[歴史]

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バイブル・スタディの仲間たちの会話をちょっとだけ覗いてみてください。
寝ころんでスラスラ読める! 「物語」がわかれば、聖書は楽しい。
聖書を最初から最後まで読み通すのは大変です。途中でいやになってしまうことも珍しくないでしょう。
なんとなく難しそうでも、聖書のことばの向こうには、豊かな歴史と文化が広がっています。
どなたでも、実際に聖書を読んでみようというかたのお役に立てればうれしいです。


アイコンはTopeconHeroesダーヤマ様の「ダ鳥獣戯画」より使用させていただきました。

ファンレター

バベルの塔と『創世記』の元ネタ

今回も面白かったです!
「バベルの塔」については、人間が天に届く建物を造ろうとしたこと自体が悪かったのかと思っていました。そうではなくて、その目的が自分たちの名を高めることにあった点こそ、間違いだったのですね!しかもその背景には古代建築技術の向上があったというお話は、とても興味深かったです^^
『創世記』については、この物語がどこから来たのか、というのがとても重要なんですね。たとえ物語的には似たところがあっても、『ギルガメシュ叙事詩』『アトラ・ハシース叙事詩』と、『創世記』では「神の描き方が違う」ということ、そして、その違いについてのmikaさんの解説が感動的でした。正に「倫理」の問題なんですね^^

それから、私のブックレビューの方にも、ハイジの続編に関する追加のご教示ありがとうございました!あのおじいさんは言わばインテリの世捨て人という感じだったのですね。だから、おじいさんには魂の救済が必要で、ハイジには、より将来的で現実的な救済が必要だった。ハイジが最後にクララの医師の養女になれたというのは、正に最高のハッピーエンディングだったわけですね。逆に結末から考えてみると、作者の意図がとてもはっきり見えてくるような気がしました。そういう意味では、アニメ版というのは、原作本来の姿をかなり歪めてしまっているように思えます。改めて、原作を読んでみたくなりました(^^)

返信(1)

南ノさん、お読みいただきありがとうございます!
そうなんです、「レンガを焼く」というのは当然のことだと思いがちですが、雨の少ない中東地域では「レンガ」と言えば「日干しレンガ」を指しています。なので、焼くことで石材に匹敵する堅いレンガができると分かったのは、たいへんなイノベーションだったでしょうね。
大事業を成し遂げて、自分たちの名を残すことに執着するあまり、信仰を忘れ去ってしまうことを聖書では戒めているのですね。

バビロニアの創造物語や洪水物語と、創世記はたしかにモチーフが類似していますが、人間の描き方と神の描き方が全く違うんです。物語が伝える信仰のメッセージが違うということは、バビロニアの宗教とイスラエルの宗教が全く違っていたことを示していると思います。全く違う宗教であるにもかかわらず、物語の素材や表現形態がこんなに似ているのは、バビロン捕囚時代の影響ではないかと言われています。
イスラエルの神は、本質的に倫理の神なのだと思います。理由もなく気まぐれで人間を滅ぼしたり、救ったりしません。バビロニアの神々やカナンの神々は支配者階級の守護者で、一般の人々は神々と支配者に仕える奴隷として位置付けられていました。古代では「神にかたどって」という言葉は、王の称号(地上における神の代理人)として用いられていたそうです。この用例は古代エジプトでも見られるのだとか。
エジプトで奴隷だった時代も、バビロン捕囚時代もイスラエルの民は「王を地上の神」と信じる人々に囲まれて暮らしていて、自分たちの信仰の危機に直面していたはずです。支配者階級ばかりでなく、全ての人間が「神にかたどって」造られているという創世記のメッセージは、聖書的信仰の特徴が端的に表れていると思います。

『ハイジ』の「おじいさんには魂の救済が必要」で、ハイジには「より将来的で現実的な救済が必要」だったというのは、おっしゃる通りです。キリスト教伝道のための小説には、トルストイの『光あるうち光の中を歩め』やフローベールの『三つの物語』など名作がたくさんありますが、わたしは『ハイジ』が一番完成度が高いと感じます。フローベールのようなアイロニーがないし、トルストイのような押しつけがましさがないので。ヨハンナ・シュピリが描く子供の素朴な信仰には胸打たれます。
ハイジの原作は『ハイジの修行と遍歴の時代』という名前で、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』と『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』を明らかにもじったもので、作者の深い教養が伺えますね。クララがアルプスに来る続編は『ハイジは習ったことを役立てることができる』というタイトルです。日本では両方を一つの本にまとめて収録しているようですね。ただ、完訳本じゃないと、アニメ版と同じく聖書にまつわる部分を削られてしまっている可能性があります…。アニメの『ハイジ』は高畑勲監督、宮崎駿監督らの貴重な初期作品、日本人スタッフによる完全オリジナル作品として楽しめば良いかなと思います^^