三奈乃の読書日記

[創作論・評論]

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53件のファンレター

わたし――南ノ三奈乃が読んで面白かったと思う本を紹介していきたいと思います。
純文学多めになるかな? ……と思っていたのですが、エンタメもマンガも……もうなんでもありになってきました!
※表紙イラスト/ノーコピーライトガール

ファンレター

練習する時間、ひとは輝いている。本人は気付かないものだけど。

乗代雄介さんと言えば、僕は乗代雄介さんが野間文芸新人賞を受賞した『本物の読書家』で、主人公が目指す先であるとある町(常磐線下りだと今は終点になることが多い駅です)で働いています。その物語は川端康成を巡るお話でもあります。そしてこの作品『旅する練習』もまた、文豪を巡る話でもあり、三島由紀夫賞受賞作なのですね。おー、すごい。と、いうのも、とある知り合いの書評家さんの話によると、「純文学作家がほしいのは芥川賞ですが、でも、芥川賞は新人の賞です。講談社の“芥川賞”が、野間文芸新人賞。新潮社の“芥川賞”は三島由紀夫賞です。新人賞の芥川賞、野間文芸新人賞、三島由紀夫賞のあとは、狙うのは純文学作家の場合、読売文学賞、谷崎潤一郎賞でしょう」だ、そうです(新人賞欲しいのに僕は、こんなこと書いちゃうからどんどん遠のくのでしょう)。そうそう、利根川沿いに柳田國男は子供の頃住んでいて、その家が今は記念館になってるんですよね! 我孫子から利根川という川を越えて茨城に入ると柳田が住んだ町があり、そして、ジーコ像がお迎えしてくれる鹿島スタジアムを鹿島臨海鉄道沿いに、(この物語では行かないけど)もしも歩いて、今度は那珂川という川を越えて那珂湊に入っていれば、そこには〈自然主義文学〉の国木田独歩が訪れた記念の石碑が建っています。「挙げて永劫の海に落ちゆく世々代々の人生の流の一支流が僕の前に横たわっているのである 独歩」と、そこには刻まれています。
いやもう、南ノさんのこの読書レビューが臨場感こもってて、リフティングのように言葉がぽんぽん跳ねていて、それでいて文豪に倣ってノートに「この物語の風景」を描写する練習をしているかのようにも思えたのです。こりゃ読むっきゃないな! と思いました。あと、なんだか我孫子にある志賀直哉の白樺文学館にも、練習しに行きたくなりました、もちろん、この人生を小説を書きながら生きていく旅のための練習に、です。

返信(1)

るるせさん、お読みいただきありがとうございます!
この作品の核にあるのは、るるせさんがレターのタイトルに書いて下さったように、「練習する時間、ひとは輝いている。本人は気付かないものだけど」…正にこれだと思います!
それから、最後の「この人生を小説を書きながら生きていく旅のための練習に」…すごく美しい御言葉に、じーんとしてしまいました(*^^*)

文学賞の話ですが、話題性は突出している芥川賞にしても、文藝春秋の賞というのは動かせない事実ですし、読者が「読みたい」と思わせられる作品という点からみれば、新潮社の三島賞、講談社の野間文芸新人賞、決して芥川賞に引けを取らないですよね。(るるせさんはメフィスト賞に注目されているから、芥川賞は獲っていないけど三島賞を獲った舞城王太郎とかを想起されているのかな、とちらっと思いました^^)

私のレビューでは、長くなりすぎると思って割愛してしまったんですけど、作品の中に「ジーコ像」、しっかり出てきます(笑)…というか、「ジーコが鹿島アントラーズでしたこと」がけっこう重要なファクターとして物語に絡んでくるところが面白いです。

それから、ご紹介下さった国木田独歩の記念碑の言葉、素敵ですね!独歩の自然描写としては『武蔵野』が第一に挙げられると思いますが、『忘れえぬ人々』など、人間を「風景のように」描いた作家であったとも言えますよね。
あと、乗代さんの『本物の読書家』、未読ですのでぜひ読んでみたいと思います!
乗代雄介さんにしても、るるせさんにしても、ご自身の根っこの部分で日本近代文学の伝統とつながっている方の文章は、やっぱり信用できる(よくわからない言い方ですみません…汗)と改めて感じた次第です。

るるせさんのレターから、いろいろ勉強させていただきました。本当にありがとうございます!(*^^*)