【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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21件のファンレター

☆NEW!!☆ウィリアム・フォークナー『エミリーへの薔薇』 #ノーベル文学賞
皆さまに、ぜひとも読んでもらいたい! と思う作品をネタバレなしで紹介しています。
ノーベル文学賞って気になるけど、難しそう……そんな受賞作家の作品も3000字程度で解説。
現在、お題企画「戦争について考える」に参加中です。

表題は『断片的なものの社会学』(岸政彦)のオマージュです。
※表紙はAdobe StockからFranzi Drawsさまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

ドストエフスキー『鰐』

「2000字書評」の縛りがなくなって、大幅改稿されたドストエフスキー『鰐』の書評。とても興味深く拝読しました。ドイツ人が話すロシア語の文法の混乱が、深い寓意につながるというところが、すごく面白かったです。しかも、この「役人が」と「役人を」の違いをロシア語原文を用いて詳しく解説して下さるなんて、本当に贅沢な書評ですね(*^^*)
それにしても、こういう思想問題をめぐる深い寓意の込められた作品をユーモア小説として楽しめるとは、当時のロシアの読者ってすごくレベルが高かったんだなあ、と思いました。ユーモアにもいろいろな種類があることについて、改めて考えさせられました。

返信(1)

南ノさん、改稿版をさっそくお読みいただきありがとうございます! 台詞の解説を「すごく面白かった」と言ってもらえて、とてもうれしいです^^
おっしゃる通り、ユーモアにはいろいろと種類がありますよね。ドストエフスキーも若い頃は、詐欺師同士の騙し合いの『九通の手紙にもられた小説』やドタバタ喜劇の『他人の妻とベッドの下の夫』を書いたりしています。流刑地から帰還した後に書いた『鰐』は、やはり笑いの質が変わっているように思います。『鰐』の奇想天外な設定は、ゴーゴリの『鼻』の影響があると感じます。キャラクターの極端なデフォルメと強烈な風刺は、同じくゴーゴリの『査察官』や『死せる魂』を彷彿とさせますね。事件が未解決のまま終わるところは、後のカフカの『城』と重なりました。
あと、ロシア的笑いと言えば、やはりアネクドートですね! スターリン時代、政治アネクドート(政治風刺)を語った者は、10年以下の禁固刑が科せられたそうですが、だからこそ政治アネクドートはソ連時代に最も盛んだったとか。アネクドートを「検閲を得ていない民間口承芸術」なんて言ったりします。当時のアネクドートは今読んでも面白いので、同時代の人々にとっては命がけの笑いがあったでしょうね。