2.  戦友の現状

文字数 1,062文字

キョウの電話の後、僕らは地元の安いラーメン屋にまず集まった。
キョウに聞くと、ショウタとは夜に町の中心部にある焼肉屋に集まることになっているという。
キョウは僕と久々に会った時、いつもみたいに軽い冗談を言って笑っていた。でも今日のキョウは、どこか暗い顔つきをしている。
お互いにラーメン屋に入っては370円のラーメンと、100円の替え玉を注文して食べ始めた。
麺をすすりながら、急に呼び出してそんなに急ぎの件だったのかと僕が聞く。
するとキョウは更に顔を暗くした。そして箸を止めて話だした。
「実は今日会うショウタなんだが、あいつ今すごくヤベェ状況らしいんだ……」
僕も一旦箸を止めて、キョウの話を静かに聞き続ける。
どうやらショウタは高校卒業後、定職につかずにアルバイトで働いているみたいだ。
ショウタと同じ高校に入ったヒロミによると、昔からの過眠症が治らず、高校に入ってからも寝坊や授業中の居眠りを繰り返したらしい。それで勉強できずに、在学中に留年こそしなかったものの大学入試は落ちてしまったとのことだ。
それで高校卒業後に定職を探したらしいが、高卒の人間が自分一人で就活するのは難しく、更に持病の過眠症がある為に成果は思わしくなかった。
すると大学入学も就職もしていない状況に、ショウタの家族や親族が圧力をかけてきたらしい。更に努力するように、ショウタに迫ったとのこと。
それで更に努力しているうちに、ショウタは心身ともに疲弊してしまった。
ショウタは周りがうるさく思ったのか、金も持っていないはずなのに実家を出て一人暮らしを始めた。それで今は昼間はずっと寝て、夜の居酒屋のアルバイトだけで生計を立てているらしい。
ショウタの幼馴染のリンによると、特に最近のショウタは自暴自棄になっているとのことだ。
それをリンから聞いたキョウが、なんとかショウタと会う機会を作ったらしい。
僕を誘ったのは、僕が一回学生時代に精神崩壊を経験しているから、何か力になってほしいと思ったからとのことだ。

僕はキョウの話を一通り聞いて、思わずショウタと会うのをためらった。
僕は何か励ましの言葉をかけるの苦手で、恐らくショウタに会っても何も言ってやれないだろう。
それに僕個人の意見だが、本当に気が病んでしまっている人間には、変に言葉をかけない方がいい。
変に「頑張れ」などの言葉をかけるのは、かえって相手本人の思い煩いになるかもしれないからだ。
でもせっかくキョウが誘ってくれたことと、久々にショウタに会ってみたい気持ちもあった為に、そのまま僕はショウタに会うことにしたのだった。
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