第5話 平行世界、再び

文字数 3,399文字

エンド「うっわ…なんで雨なんか降るかなぁ」
イゼ「うう…ベトベトする」
マイン「早く着替えてきなよ。僕達は後でいいから」
イゼ「はーい。わかってるよ」
エンド「サクラも行きなよ」
サクラ「私はいいですよ。」
エ「え?」
よくよく見たら全く濡れていない。
サクラ「傘、さしてました」
エンド「…お前なぁ!」
サクラ「あっちょ…あーっ!やめっ!ちょ!」
マイン「オイ」
エンド「う…」
マイン「場所を考えろ」
エンド「うう…」
マイン「全く。ファイナルに笑われるぞ?」
エンド「…あはは。笑われるで済んだら良いんだけど」
恐らくグーは飛んでくるだろうなぁ…

幽々子「おかしいわねぇ…」
妖夢「…そうでしょうか?」
幽々子「…この冥界に、雨が降るなんてことがあったかしら?」
妖夢「私が覚えている限りでは、1度も。」
幽々子「そうよねぇ。」
妖夢「何もなければいいのですが…」
幽々子「妖夢。「何も無い」は絶対に無いわよ。この幻想郷で、こんなに不思議なことが起こった。これはもう、

のよ。」

「あっめ♪あっめ♪ふっれ♪ふっれ♪かぁーさっんが♪」
土砂降りの雨。
ここは白玉楼に続く道。
合羽を着た女の子が階段を上っていく。
「もう少しだね」

マイン「…誰か来る」
エンド「…ああ。確かに感じる」
「なぁんだ。気づいちゃったのね」
全身を凍りつかせる寒気。
「じゃあ…もういいや。」
マイン「ダメだ…動けない…ぐっ!?」
氷柱が突き刺さる。
エンド「ま…マイン…!」
マイン「構うな…!」
「そっちも…逃がさないよ?」
全員に氷柱を突き刺す。
「ほら…こっちに来て、もっとよく顔を見せて…?」
マイン「お前…!?」
「ほら、見てよ。『妖夢』。こいつら、もう捕まっちゃった。」
妖夢?「っ…!」
違う…この人は妖夢さんじゃない…
別の幻想郷…平行世界の妖夢さん…!
となれば…

ファイナル?「一言で言えば…悲惨だな。俺にとっては見慣れた光景だが」
霊夢?「で、これからどうするのよ」
ファイナル?「神社だろ。」
霊夢?「元凶が狙ってるのはそこ、と?」
ファイナル?「憶測に過ぎん。この世界には借りがある。まずはこっちで何が起きているのかが知りたい」

霊夢「なんでここに来たのよ?」
ファイナル「お前ならこの雨の原因が分かるかもと思って来たんだ」
霊夢「分かるわけ無いじゃない…」
ファイナル「うーむ…やっぱり永琳先生の所に行くべきか…」
霊夢「…いや、待ちなさい。ここに誰か来る。あんたに似た霊力と…私?」
ファイナル「は?な訳…」
神社の階段を登ってくる2人。
確かに俺と霊夢の気配だ。
─誰だ?
ファイナル?「…よう。久しぶりだな」
ファイナル「お前…」
ルイン「ルインでいい。ファイナルだと混乱するからな。」
霊夢?「私の方は苗字でいいわよ。博麗ね。」
ファイナル「ああ、わかった…だが、何をしに来たんだ?」
博麗「気付かない?この雨が異常なものだってこと」
ルイン「場所を問わず、幻想郷全てを飲み込んでいる雨雲。幻想郷の誰のせいでもない、それはつまり異変では無いと言うこと。…ところでお前はどこかでこいつを見なかったか?」
白いレインコートを着た少女の写真。
ファイナル「…いや」
ルイン「こいつの名前はアイル。水を操る能力を持つ少女だ。あー…ゼンって覚えてるか?」
ファイナル「ああ、あの鳥人の…」
ルイン「つまるところそいつだ。だけど気は抜くなよ。見た目だけで判断すると、命はないと思え」
ファイナル「そんなやつは今まで散々見てきたさ。そいつを見くびって死んで行ったやつらもな。」
ルイン「…そうか。」
ファイナル「とにかく、今はこいつだ。こいつさえ止めれば雨は止むんだろ?」
ルイン「多分な」
ファイナル「確証がないのが痛いな…」
ルイン「ここに来るまで影の襲撃はなかった…逆に考えれば、アイルの近くに居るという事もありえる」
霊夢「それでしょ。奴らが考えることよ。どうせ叩きに来るだろうと思って防御を固めてるんだわ」
博麗「早速行きたい所だけど、ちょっと気になる場所があるの。付き合ってくれる?」
ファイナル「構わない」

白玉楼
エンド「っ…っは…」
マイン「…ダメだったか……」
博麗「やっぱりね。ここに来た時に妙な霊気を感じたと思ったら」
ルイン「…大丈夫か、エンド」
エンド「あ…れ?にい…さんが…ふたり?…れいむさんまで…」
マイン「…そういう、ことか……ファイナル、風呂場を…多分、イゼ達が…」
ファイナル「霊夢」
霊夢「はいはい、分かってるわよ」
ルイン「……」
博麗「…行けばいいんでしょ?」

しばらくして。
エンド「いっつ…まだ痛むなぁ」
マイン「…改めて人間じゃないと感じるよ」
副産物と言えど竜の力は強い。
傷はもう癒えている。
霊夢「戻ったわよ」
ファイナル「どうだった」
霊夢「結構危なかった。扉が閉められてて、みんな倒れてたわ。もう少し遅かったら手遅れだったかも。」
博麗「今は別の部屋で寝かせてる。しばらくしたらまた見に行くわ」
ファイナル「エンド。ロッキーさん達は何処へ?」
エンド「多分紅魔館じゃないかな。…幽々子様ー。ちょっといいですかー?」
奥の方へと歩いていく。
幽々子「なにかしら?」
エンド「妖夢さんにもこの事を伝えて貰えないでしょうか?」
幽々子「わかったわ。ちょっと待ってて。」
半霊と少し話し、半霊がどこかへ飛んでいく。
幽々子「…ごめんなさいね。あなた達の惨状に気づけなくて」
エンド「無理もありません。あの雨音で気付くは難しいでしょうし」
幽々子「…あなた達がここに来てから、散々な目に合わせてるわね…」
エンド「…それを呼び込んでいるのは俺達です。あなたが落ち込む必要はありませんよ。」
幽々子「でも…力になりたいの。」
エンド「…ありがとうございます。幽々子様。」

「ねぇねぇ、妖夢」
「喋るな!…もう、お前の声すら聞きたくない…っ!」
「…へえ。こわかったんだ?」
「そんな訳…ひっ!?」
「わたしはいつでも妖夢をころせるんだよ?」
どうしようもない感情。
今、こいつにだけは絶対に見せたくなかったこの感情。
─恐怖だ。
「その顔。かくしてもむだなのに。」
「…っ…!」
呼吸が早くなる。
はち切れんばかりに脈打つ心臓。
「はっ…はっ…!!
まともな呼吸すら出来ない。
自分が崩れていく。
心の壁が、理性の塊が、溶けていく─
私は──
「たす、けて」
口から零れた言葉は自分にも聞こえなかった。

ロッキー「レグルス」
レグルス「違う、どうしてでしょうか…ふむ…」
ロッキー「おいレグルス!」
レグルス「む?おお、ロッキー様。なにか?」
ロッキー「どうにも奴らの様子がおかしい。」
レグルス「おかしい、と言いますと?」
レミリア「誰かを探してる。多分ね。」
レグルス「おや。レミリア様ではありませんか。」
レミリア「今すぐ神社にいくわよ」
レグルス「博麗神社に?何故でしょう?」
レミリア「…霊夢なら、あるいはわかってるかもしれない。」

博麗神社
レミリア「霊夢ー?いるかしらー?」
レグルス「…返事がありませんね」
レミリア「どうしたんだろ?」
ロッキー「1度戻ろうぜ。いつ帰ってくるかも分かんねぇんだぞ?」
レミリア「…はぁ。それもそうね」
来た道を引き返そうと振り向いた視線の先に─
『奴』が居た。
レグルス「む?…女の子…ですかね?」
ロッキー「…誰だ?」
レミリア「いや、まさか、ね…」
声が震えている。
レミリア「逃げるわよ!急いで!」
「…あー。逃げちゃった。…次、いこ。」

レミリア「なんでアイルがいるのよ…!」
ロッキー「アイル?」
レミリア「あいつの名前よ。」
レグルス「むう…なんでしたかね…」
ロッキー「お前が頭を抱えるなんて珍しいな」
レグルス「…ああっ!そうでした!『雨の使者』でしたね!…にしては殺気がありすぎですが」
レミリア「毒雨…私たちには何の意味もない。だけど…」
ロッキー「人ではない者には毒となる。つまり…」
レグルス「…ファイナル様」
ロッキー「その辺はあいつもわかってると思うぜ。だが…鉢合わせになると不味いかもな」
レグルス「急がなければ…」
レミリア「まあ待ちなさい。雨に晒されるといけないのは紅魔館にも居るはずよ?」
レグルス「…そうでした」
転移門を開く。
レグルス「急ぎましょう。アイルよりも早く。一手先を打ちましょう」
レミリアがにやける。
レミリア「賛成よ。行きましょう」
ロッキー「…早く行くぞ。…こうなった以上、やるだけやってやるぜ…」
止まない雨。
人里の者は何の疑いも持たず、日々を過ごしていく─
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