第3話 生き様

文字数 2,238文字

ファイナル「…そろそろ駄目か。そりゃそうだ」
霊夢「でもまぁ、よく頑張った方じゃない?」
ファイナル「だな…にしても寂しくなるな」
霊夢「あら。あんたが花が好きなんて初耳なんだけど」
ファイナル「…まあ、あいつを思い出すってだけなんだが。いつも俺を花屋に連れ出してよ…」
霊夢「へぇ。まともに向かい合った時間は短いくせに思い出は沢山あるのね」
ファイナル「その頃は見るもの全てが新鮮だったからな。」
霊夢「いい人だったのね」
ファイナル「こいつみたいに静かに散っていったけどな。それでも…立派な生き様だった。」
霊夢「…それで、話を戻すけど」
ファイナル「人里か」
霊夢「本来は私が注意するべきなんだけどね…噂が噂を呼んで手がつけられなくなってるのよ」
ファイナル「この前行ったら石を投げられた」
霊夢「ああ…酷いわね」
ファイナル「殺しちゃ駄目なんだろ?」
霊夢「当たり前よ」
ファイナル「なら我慢だな」
霊夢「…怒らないの?」
ファイナル「俺に石を投げる分は、な。ただ…」
霊夢「ただ?」
ファイナル「エンドやキルア様、妖夢達に投げるようなら絶対に許さん。」
霊夢「…一応、そう言っておくわ。」
ファイナル「頼む」

人里
「あ…また来たの?」
妖羅「当たり前だろ?」
「今がどんなことになっているのかわかってるんでしょ?」
妖羅「だからだよ…」
「…もう、知らないからね。」
妖羅「守ってみせる。君も、幻想郷も。」
「絶対だよ…?」
彼女の手を握る。
微かに震えていた。
「お母さんや…お父さんみたいに…いなくならないでね…?」
雫が彼女の頬を流れる。
そう、彼女は親無し子だ。
行く宛てもなく、何かを食べるささやかな金もない。
それでも誰かを求める彼女に、惹かれてしまった自分がいる。
─だから、あんなことを言ったのだ。
妖奈「お兄ちゃん!すぐそこまで来てるって!」
声を抑えながら喋る。
妖羅「…わかった。」
「この辺にあのガキ共が…おい。こいつらを見なかったか?」
「…しらない。」
「…チッ。行くぞ。」
妖羅「大丈夫…だな。」
「…わたし、えらい?」
妖羅「えらいぞ。」
妖奈「…どうしよう…あまりここに来るとバレちゃうよ…」
「私が預かろうかしら?」
妖羅「れ…レミリアさん…良いんですか?」
「だあれ?このひと…」
妖羅「悪い人じゃないよ。…お願い出来ますか」
レミリア「私の友人の子供の頼みよ。聞いてあげる。ついでに、あなた達も紅魔館(こっち)に来なさい。ファイナルには話をつけておくから。」
妖奈「ええっ!?私もですか!?」
レミリア「あら?嫌かしら?お友達と一緒の方がいいと思ったのだけれど…」
妖奈「あ、いえ!ご一緒させて下さい!」
レミリア「決まりね。咲夜。」
咲夜「お任せ下さい。お嬢様。」

ファイナル「…美味いな」
妖夢「でしょう?今日は上手くできたと思ったんだ。」
ファイナル「…大丈夫なのか。仮にも庭師だろ。手入れは…」
妖夢「もう終わってるよ。だからこうして一緒にお茶を飲んでるんでしょ?」
ファイナル「…ならいいんだ。最近剣術練習も思うように出来てないだろ?」
妖夢「それは…そうだけどさ」
レミリア「失礼。」
ファイナル「邪魔すんな」
レミリア「あっそ。じゃあ要件だけ言って帰るわ。あなたの子供達とそのお友達、少し預かるから。じゃね。」
ファイナル「…待てい!」
レミリア「なによ!邪魔って言ったのはあなたでしょ!」
ファイナル「急に我が子を「預かる」って言って「あ、はいそうですか」で終わらせるバカがいるか!詳しく話せ!」
レミリア「仕方ないわねぇ…」
その後
ファイナル「…はぁん。そういう事か」
レミリア「理解したかしら?」
ファイナル「…変なことするなよ?」
レミリア「する訳ないじゃないの!」
ファイナル「じゃあ頼むぞ。」
レミリア「分かったわよ。それじゃあね」
ファイナル「全く…」
妖夢「なんだったの?」
ファイナル「ああ…妖羅達を紅魔館で預かるだと。多分昨日言ってた「女の子」の事だろう。妖羅の事だ。ほっとけなかったんだろ。」
妖夢「そっか。確かにね。」
ファイナル「…また2人だ。久しぶりのな。」
妖夢「うん。本当に、久しぶり。…ねぇ、ファイナル…」
そっと手を繋ぐ。
ファイナル「…どうした、急に。」
彼の頬がちょっと染まる。
妖夢「…好き。これからも、ずっと。」
ファイナル「俺もだ。妖夢」
繋いだ手を強く握る。
彼の顔を見て、
「変わらないね。」
と一言。
彼は少し照れながら微笑んだ。

「わぁ…大きい」
レミリア「そういえばその子の名前は?」
「アイ。」
レミリア「アイ…アイね…」
愛、なのか。
それとも哀なのか…
妖羅「部屋に行こう。父さんの部屋ならみんな入れる。」
レミリア「あそこでいいの?」
妖羅「あまり迷惑をかけたくありませんし。」
レミリア「そう…なにか欲しいものがあったら遠慮なく言ってね」
妖羅「ありがとうございます。心遣い、感謝します。」

〜香霖堂〜
エンドが急いで店内に入ってくる。
霖之助「おやおや。今度は弟さんか?」
エンド「霖之助さん…ちょっと匿ってくれないか」
霖之助「…訳ありかな。なら早く来るんだ。」
エンド「ごめん。助かるよ。」
「オイ!ここにこんな奴が来なかったか!?」
写真を見せつける。
霖之助「いいや。ここには来てないね。」
「本当だろうな!」
霖之助「本当さ。信じてくれよ。」
「…フン!行くぞ!」
霖之助「騒がしい連中だね…こんな辺境まで追いかけてくるなんて。」
エンド「ごめん…本当に助かったよ…」
霖之助「いつでも来るといいよ。僕に協力できることなら何でもしよう。」
エンド「…頼りにさせてもらうよ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み