自分自身への恐怖

文字数 937文字

わたしがわたし自身に異変を感じたのは6歳ぐらいの時だったと思う。
わたしは母と父に手を引かれて電車に乗った。確かその電車は、押しつぶされるほどではないまでも満員だったと思う。
しばらくすると、わたしは突然大泣きしだした。泣き喚くが、何も言わない。
両親はさほど困った様子も見せず、周りは心配そうにこちらを見る。
親切な男性が席を譲ってくれるがわたしは座りたいわけではない。拒否する。
何が何だかわからない。
なぜ泣いているのか、何に困っているのかわからない。
何も求めていない、何を恐怖に思っているのか
自分が理解できない、自分がコントロールできない。自分が空の上から客観的に自分を眺めている。だけどどうしても理解できない。
わたしは何を求めて叫んでいる?

10歳を過ぎてからもパニックは続き、呼吸困難になりその度に自傷をした。
動物のように雄叫びをあげては自分を家具や壁に打ち付けあざだらけになる。パニックを起こしている間は歯止めは効かない。一度始まったら何かが吐き出されるまではずっと衝動だけに振り回されて動く。
これでは体がもたないと、年を追うごとにルールを作り、自分の脳に指令を出した。
「このまま自傷を続けては骨が折れかねない。骨が折れれば生活はずっと困難になる。今の生活とは比べ物にならないほど悪化する。他人を巻き込んで迷惑をかけ、自由に動くこともできなくなる。後遺症が残る可能性だってある。どれだけパニックになろうとも、どれだけ叫ぼうとも自分の体に衝撃を与えるな。」
さらには歳をとるごとに、怒りや混乱から生じる混沌とした衝動の物理的な痛みは大きくなり、20代後半からは血管がちぎれるような、呼吸が止まるような体中の痛みに苦しむことになり、「怒る」ということができなくなった。
そして解決策として、負の感情を捨てて「無」にすり替えることで代替えとした。
怒りそうになったら無視をする。怒る前に立ち去る。連絡は躊躇いなく断つ。
パニックを起こせば他人に迷惑がかかる。周りに人がいればその人を傷つけるかもしれないし、自分自身の自傷にも繋がる。そして自傷すれば最悪他人にも迷惑をかける。
他人への害を及ばせないように自分を制御する、「自己防衛」という概念が20代後半からわたしの生活のキーワードになる。
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