「継続できない」の発端

文字数 1,400文字

わたしは「空気が読めない子供」でもあった。良い言い方をすれば素直、とことん正直で忖度しない。幼少期はこれが特別顕著だった。
わたしは11歳の時、当然のように親が言うままに中学受験をした。当時偏差値70・65・63ぐらいの3校。3校目は必ず受かると言われていた「滑り止め校」だった。
結論から言うと、2校目の、「面接のなかった学校」のみに受かった。
1校目の偏差値が高い学校については「落ちちゃった、仕方ないね」と言われたが、3校目の合格発表にわたしの名前がなかったことには驚かれた。
「なんで受からなかったんだろう?」
と驚く母の横で
わたしはなんとなく
(面接の時の発言の何かだろうか)
と思っていた。

中学に入ってからのいじめは顕著だった。
わたしは誰とも分け隔てなく話しかけたりして、ご飯を一緒に食べようとなどしていたが、ある日
「ごめん、もうあなたは呼ばないでって言われたから来ないで」
と言われ
放課後入った部活では、誰かに何か話かける前から、わたしが立っているだけで残りの部員が全員体育館の逆側に立ってわたしを避けて談笑している状態だった。
わたしはその頃まだいじめという存在を知らず、(わたしの体操着が変なのかな)なんて純粋に思っていた。
わたしが勉強ができなくなったのは、中学一年生のある日、小テストを返してもらっている時だった。
隣に座っていた一目置かれるほど勤勉だった生徒が、わたしに何点だったのか聞いてきたので教えたところ、突然大声で泣き始めた。
「なんでわたしはたくさん勉強してるのに、勉強していない彼女の方が点数がいいの!」
と大声で泣き叫んでいる。クラスは静まり返ってみんながこちらを見ている。
先生がわたしを見て口を開く。
「テストの点数を見せたりするのはやめてください。禁止しているはずですよ。」
何故わたしが責められているのだろう。わたしが何をしたのだろう。わたしは、勉強をする意味がわからなくなってしまった。

極め付けとなったのは、その当時にはまだ珍しかったオンラインでの「いじめ」だった。
わたしの行っていた中学には、「2ちゃんねる」の掲示板があった。そこでは学校に関係する匿名の誰かが赤裸々に先生の噂話や特定の生徒に関する情報を流したりしていた。
ある日、同じ学年の目立つ女子の噂や悪口が同掲示板に書かれ始めて、それは半年以上続いた。
その生徒は他のクラスだったのでほとんど見かけることはなく、学校に来ているのかどうかも知らなかったが、あとで聞く分には、どうやら中退したようだった。
数ヶ月か数年かが経った、中学2年か3年の頃わたしがそのターゲットになった。

「こいつうちの学年だろ」
「ブス、デブ、きもい」
「学校やめろ」

辞めていった前の標的の悪口が収まったのは6ヶ月後のことだった。とっさにその「いじめ」たるものは半年はおさまらないのだろうと言うことを感じた。
毎日掲示板には細々と、しかし継続的にわたしの悪口が書かれる。面と向かってのいじめならばその人たちだけを避ければいい、だけどオンラインのいじめでは本当に誰がどんな顔をしているのか想像もできなかった。
「全員が敵なのかもしれない」
そう思うと、クラスの前まで足を運んでも、扉が開けられなくなった。扉が開けないまま30分、45分と時間が過ぎた。
授業の終了を告げる鐘が鳴りそうになり、急いでトイレに隠れた。それからというもの、一日中トイレや保健室に籠る日々が続いた。
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