答えはすぐには出ない

文字数 496文字

わたしを含め、わたしの知るアスペルガー症候群の人間は、よく黙る。
沈黙を楽しんでいるわけではなく、考えているのだと思う。
最も顕著なのはわたしの父だった。
母が何度も繰り返し
「ご飯のおかわりいる?」
と聞いても数分間は黙っている。
何度も何度も聞かれて、母が近くまできて「ごはん!いるの!?」と聞いてもまだぼーっと母を眺めることもあり、結局諦めたようにお椀を差し出す、そんな父を見てきた。
わたしも情報が一気に入ってくると黙り、すぐに回答ができない質問が問われれば、正確な答えを出さないといけないと、その答えが嘘ではないようにその回答に少しでも不確実な事実があれば全力でその正当化に努めるべく黙りこむ。
そしてしばらくの時差の末、答えを出すこともあるし、相手がすでにその件については忘れているようだったら、言わないこともある。

この現象を
「挨拶をしない」
「返事をしない」
と捉える人がいることを最近学んだ。
そして実際にわたしは挨拶・返事をしないわたしたちの挙動を見てきて、しかしどうしても事実の整合性が確立されていない回答を無責任に口に出すことも耐えがたく、この葛藤を共有すべく、この項目を含めておこうと思う。
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