(二)-10

文字数 364文字

「俺は元佐賀藩士にして日本陸軍熊本鎮台第六砲兵大隊大隊長、大島邦秀中佐だ! いざ尋常に勝負!」
 大島はサーベルを振り上げて正面の侍に斬りかかった。
 サーベルは日本刀よりも短いが刀身は平べったくやや幅が広い。そのため日本刀よりもやや軽い。日頃から鍛錬を積み佐賀の乱などでも実戦経験を積んだ本職の軍人が日本刀よりも取り回しの良いサーベルを軽く振り回す。
 対して侍たちの側は江戸時代が成立して以降四〇〇年もの間に社会の支配体制を維持する官僚として生きてきた。そして江戸幕府が終わりを告げてすでに数年経っている。戊辰戦争を戦い、実戦を経験した者もいるかもしれないが、その後は生活もままならぬ状態でまともに鍛錬を続けている者は多くない。武士たちは、さび付いた技量と侍としての魂と誇りだけでこの本職の軍人と刃を交えなければならない。

(続く)
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