第11話 セイント・フェアリーの最後

文字数 3,409文字

 国際連合臨時総会で、
「条件無しでの日本・セイント・フェアリー間の緊急停戦、和平会談要求」
「国連加盟周辺諸国の日本管理占領実施による即時停戦案」
が緊急上程されたのは、日本・セイント・フェアリーが開戦して、10日目、宇宙空間で戦闘母艦ギャラクシーからなるセイント・フェアリーのモビルスーツ支援艦隊が、十数回に及ぶα号等との宇宙空域戦で壊滅したことが確認された直後だった。この緊急上程された決議案は、僅差で否決されたが、セイント・フェアリーへの直接支援禁止の決議案も、同様に僅差で否決された。
「力よ!レベル4よ!」
「馬鹿野郎!もうボロボロなのに、その上…は無理を通り越して無謀だ!」
「そ、その言葉、そっくりあなたに返してあげる!」
 三日月珊瑚礁基地内での戦いは、その最終段階、統合管理室及び動力室内に入っていた。
 ラ号潜水艦とその艦隊と基地防衛艦隊との戦闘は、日本側がほぼ制したが、まだ散発的な抵抗が続いていた。ラ号からの支援も、その被害もあり十分とはいえなかったし、基地侵入の増援部隊は一応ほぼ予定どおり突入できたが、その物資補給が十分できなかった。
「短魚雷、多数接近中!」
 遊弋していた艦隊からの攻撃が、たびたび行われ、そのたびに作業の遅れが発生した。
「何で、セイント・フェアリーを、虐殺するの?!」
と叫ぶ団体の乗る大小様々な船の行動も、セイント・フェアリーの寿命を延ばしていた。
「珊瑚礁基地内の銀河連盟市民、全員の確保、避難完了しました。」
 その声に、セワシ達は大きな安堵のため息をついた。さっきまで、泣き叫んで助けを持てめていた女性が、
「セイント・フェアリーを助けて!見棄てないで!」
と騒いでいたが、セワシ達にとっては、もうどうでも良かった。
 統合管理室では、佐藤、加藤二尉達が、セイント・フェアリーの戦闘ユニットを装着した戦闘員とモビルスーツ2台と死闘を演じていた。
 動力室でも、突入部隊が戦闘ユニット装着部隊と死闘演じていた。
「うわー!」
「あー!」
 佐藤、加藤二尉がモビルスーツのコックピットを破壊して、それを投げ飛ばした。戦闘員達のかなりが、それに巻き込まれた。
「斉射!」
 戦闘服の6人が、持てる火器全てで斉射した。統合管理室内はほとんど壊滅した。その影響で基地内の機能が一時停止、その間をついて動力室の破壊にも成功した。これで、セイント・フェアリーの中央指揮機能は消滅した。
「ちょっと、こっちにまわさないでよ!え?もう転送機で?いい加減にしてよ!局長が?分かったわよ、対応してあげるわよ。」
「どうしたんだい?」
「セイント・フェアリーと日本との戦争終結、セイント・フェアリーの保護のための秘策があるから教えに来たいとおばさんを送ったから、任せるってさ。」
「は?」
「え~?」
「分かっているわよ。私がやってあげるわよ。」
 モリモリが、いかにも嫌だ、という顔で席を立った。それから、10分後、別室で、モリモリは長々とそのおばさん、ほんとうにおばさんという印象しかでてこなかった。
「銀河連盟が、宇宙の意思として、神々のような演出の下で、彼らの前に現れるのです。」
“それができないから、こうなっているんじゃないの!”
「厳かに即時停戦、武器を置くことを提案するのです。その提案を拒否した場合、宇宙に対する犯罪として、即座に殲滅すると告げます。」
“それは、提案とは言わないわよ。”
「もちろん、戦争の主な原因は日本を存続するかどうかという問題ですから、殲滅の対象は日本に限られます。保護すべき対象である、セイント・フェアリーを殲滅しては本末転倒でしょう?」
“おい、おい。”
「そして、日本に対して、天皇制の廃止、天皇制の断罪、有害な日本人の除去、二割程度でいいでしょう、セイント・フェアリーが認める日本人以外の統治者を認めることを日本に提案します。」
「天皇制の廃止だけでも受け入れないでしょう、日本人は。」
「チャンスを拒否するのであれば、日本を殲滅するしかあり得ませんね。」
「しかし、既にセイント・フェアリーは壊滅寸前です。そのようなことのできる状況にはありませんが。」
「なんですって?すぐにセイント・フェアリーを保護しなさい。必要なら、日本を殲滅なさい。」
「残念ながら、私達には、そのような権限も、力もありません。私達は、指示された通り動いているだけですので、本部に言っていただけないでしょうか?」
「あなた方役人はいつもそうです。少しは、考えることができないのですか?私は、銀河連盟総長とは親密な関係にあり、彼女も同意しているのですよ。」
「それでは、正式な命令書をもらってきて下さい。急がれた方がいいかと思いますし、私も業務がありますので、お帰りになって下さい。」
 金切り声での長い捨て台詞を残して彼女は帰って行った。
「でも、どうして彼女のような考えが出てくるのかしら?」
 実は、セイント・フェアリー的な存在には、過去のテクノロジーへの関心だけでなく、生きた存在としての愛着から始まる種の保存を求める動きが流行、一部で、していたのである。そ
して、どういうわけか、セイント・フェアリーが地球の、日本的な物をつくり上げたのだという話が一時話題になって、一部には今だに信じられているのだ。
 モリモリが疲れきって戻ると、全てはほぼ終わろうとしていた。
「お前らには、まだ大和魂が残っているんだ!生きて戻るんだ!」
 黒人の隊長の言葉に、隊員は苦笑しながら、力が沸いてくるを感じた。
「重い!」
「あんたがフラついているからでしょう?」
 激痛の中、もう変身もできず、薬も使用できなくなった2人が肩を貸しながら、フラフラと進み、戦闘服の6人は自分のことだけで精一杯という状態でとぼとぼと続いた。
「ごめん。私…セイント・フェアリーだったの。一緒に行けない。」
 隊員の1人が、もっとも奮戦、活躍中した1人だったが、が基地の奥に向かって駆け出した。
「ま、待ってくれ…俺も…俺は…。」
「ダメデス。カノジョハアナタガシヌコトヲノゾンデイマセン。」
 ロボット戦闘員?が彼を押さえていた。
「あいつら、付喪神になるのかな?」
「は?」
「なに、それ?」
 セイント・フェアリーからは、十数人が事前に離脱、日本側に保護されただけで、壊滅した。
 今度は、セワシ達は、その保護方法で頭を痛めなければならなかった。 
 彼女ら、彼らの大方は、恋人と言える存在がいたが、銀河連盟本部は、保護団体、セイント・フェアリーに限らず、いや、その星の一部の問題因子抹殺事業に限らず、希少生物などの保護団体である、からの要請もあり、引き渡しを、銀河連盟機関あるいは銀河連盟が認める団体での保護が方針だった。とにかく、とりあえず保留ということで、セワシ達は引き延ばし、先送りにしてしまった。それが、了解されたのは、どこの管轄の星でも大なり小なり同様な状況となったからである。
「とにかく、任期中はこのままで…。」
「後にやらせる?賛成!」
「ちょっと、あんた達!」
「このあたりの微妙なところは、モリモリの意見を。」
「どうなの?彼との関係は?そのあなたの意見を聞きたいわ。あ~、彼との関係の方を先に聞きたいわね、どうなの、どうなの?」
「おいおい・・・、でも、それは大切だな。どうなんだ、進展状況は?」
「あれとは~、え?関係ないでしょう!あ~、あれからお付き合いを続けているわよー!」
 彼らは、どんどん脱線していったが、現実逃避したかったのである。モリモリの恋?話も現実のことであるが。
 恋は、しかし、三人の現実逃避だけにとどまらなかった。セイント・フェアリーの戦闘員、十数人が自衛隊により救出されたが、そのうちの一人が米国軍人と恋愛関係があり、そのことが世間に流出してしまった。日本人との関係者は、機密が保たれていたため、この二人だけがクローズアップされてしまった。何と、日本人とはそのような関係が生じなかったことについての考察が、考察合戦が始まったてしまった。そのうち、日本人男女とセイント・フェラリー戦闘員との恋愛?関係の情報がある程度公開されたのだが、
「あくまで、この二人の関係についての論究であり、日本人との関係がどうあろうと関係ない。」
と日本人研究者により無視された。彼らにとっては、日本人の反省点を明らかにすることが重要だったからだ。
「これが日本人の小さな長所で、大きな欠点なんだよな。」
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