第7話 セイント・フェアリーとともに

文字数 3,199文字

「トム。あなたの考えていることはわかるのよ。でも、日本人は卑劣な屑なのよ。赦すことはできないの、生きることが、存在することが許されない存在なの。」
「しかし・・・、彼らは私達とともにエンジェル・アーツと戦ってくれた戦友、彼らのおかげで勝利できた・・・、それを・・・。」
 モビルスーツから降りてきた金髪の美人、ヒルデの言葉に国連軍米国軍大尉にして、既にトリプルエースであるトムは言葉を詰まらせていた。
 セイント・テイルスは、その性格故に、エンゼル・アーツとは異なり、地球人と積極的に接触するために、地球人的な形態をとっていたし、友情、時には愛情すら互いに持つことすらあった。
 ヒルデは、トムに対して、軽度のツンデレで、任務以上の感情を持っていた、本人はそれゆえ絶対に認めないだろうが。
「それが、やっかいなんだよな。」 
 セワシ博士は、ため息をついていた。トムの方は、彼女に特別な感情を抱いていることを自覚していたが、それ以上に複雑な思いを持っていた。エンジェル・アーツの本拠地で救出した銀河連盟市民の確認、負傷者の治療、事情聴取が一段落した彼は、部屋に入ってくるなり、画面を見詰めていた。
「だめよ、同情したら。奴らはサムライを騙る屑なんだから。」
 ヒルデの後ろから現れた、やはり金髪だが、ヒルデに比べると少しスリムな感じの美人だった。ジャックリーンという名前を与え得られていた。
「侍というのは、日本で。」
 知日家のトムが言いかけると、
「あなた、何も知らないのね、だめよ。サムライはね、キムの国の茶道、書道や学問、浮世絵、短歌、俳句などの文化を嗜み、剣術、空手、柔道などを鍛錬を怠らず、勇敢で、人のために尽くす、古代から存在した人々なの!日本人はそれを騙って、文化のぶの字も知らない無知蒙昧な、残酷な輩なの。日本にしかいないのは、地球史上例のない悪逆非道な戦争、侵略、暴政、圧制を行って、真の武士を殺しつくした結果なのよ、わかった?」
 彼女がまくしたてるのを、”侍というのは、封建時代の日本で生まれた土地所有者、騎士のようなもの・・・なんだが・・・。”という言葉を飲み込んだ。
「彼は優しいのよ。いいかげんにしてよ。」
 ヒルデが抗議した。
「甘すぎるのよね、ねえ、あんたも、そう思うでしょう?」
 ジャックリーンは傍らの銀髪の耳ず横に長くなった少し華奢な、おとなしそうな美人に同意を求めた。
「まあ・・・そう・・・でも・・・まあ・・・いろいろあるんじゃないかと・・・、でも、私達の役割は決まっているから・・・。」
 彼女はあいまいに笑って、答えた。ディードと名付けられていた。
 初歩的な(あくまでも銀河連盟の現時点での水準と比較してだ)クローン技術を利用して作られた人造人間達であるが、異なる意志、感情を与えられていた。高度な学習能力もある。もちろん、思考、行動が暴走に至らないように制限されるようになっている。地球人から好感を得られるように、彼女らは美男美女ばかりである。地球人達は、総じて好意を持つが、彼女らも同様なものを持つ場合も、けっこうある。なぜ、そのような設定をしたのか、セワシ達はため息をつかざるを得なかった。
「エンゼルアーツの本拠地にいた理由は、聴取できたの?」
「できたよ。」
「どういう理由だった?」
「それが~、ね…。」
 何人かは何と、考古趣味、ずっと昔の機器の収集だった、彼らは、本人達は、過去の記録をと…結構高尚な考えを持っていたのだが、一応。他の何人かは、セイント・フェアリー支援のため、あるいは捕らわれていたセイント・フェアリーの戦士の、個人的な思いのある者限定、だった。あと一人は、何とか説得できないか、で乗り込んだらしい、ただし…。
「とにかく、迷惑なことばかり、意味は違っても!」
 他の二人も同意だった。
「所内会議の時間ですが?」
 女性型アンドロイドが、指摘した。
 所内会議とは、研究所に勤務する幹部科学者、技術者による対エンジェル・アーツ、セイント・フェアリー、そしてホワイトムーンのための兵器開発の報告会であり、彼らが3博士に助言を求める場であった。
「日本人は改良は得意だが、独創力がなく、応用に走り、本質を疎かにする。」
と言われていた。彼らも、当初はそう思っていた。
 しかし、日本人は本質にこだわり、自分達で初期の試行錯誤を実践しながら進む傾向が強いことが分かった。彼らは、得た技術を元に愚図に発展する、進化するのであり、返って臨機応変に、素早く改良を進める能力はそれ程ではない、と思うようになった。それでも、エンジェル・アーツ以下のための、此方が与えた兵器の生産、改良は緊急を要するため、それを加速させるため、3博士が助言、彼らが全ての研究を統括していると思われているのだが、する場でもあるのだ。
「なるほど、そういうことですか?気がつきませんでした。そちらの方向で進めてみたいと思います。」
「早速、協力の打診を先方にしてみます。」
 彼らは、驚き、感激し、自分の無知などを恥じながら、会議が終わるとそれぞれの部署に散っていった。
「君達に残ってもらったのは、他ではもない。新しい、対セイント・フェアリーのための新しい兵器の製造に関する打ち合わせをするためだ。」
 セワシ博士は、彼らの、数人の若い科学者と技師達の前に画面を表示させた。一目見ただけで彼らの表情が一変した。
「みんなには、自分の仕事に集中してもらいたいの。みな、素晴らしい仕事をしているわ。でも、これからはセイント・フェアリーの戦力全てを相手にしないといけないの。だから、新たな兵器が必要なの、わかるでしょう?」
 ノッソリ博士の言葉に、彼らはゴクリとつばを飲み込んだ。
「これをあなた方に任せるのは、あなた方ならやれると判断したからよ。期待に応えてちょうだい。」
 モリモリ博士の心の奥底までつかもうとするような視線に身震いしながらも、自信とやる気にも身震いしていた、三人の前の男女達は。
「や、やります。」
「や、やってやります。」
「やりとげますわ。」
「ま、負けませんわ。」
「期待に応えてみせます。」
 三博士は満足そうに、頼むぞという笑顔を向けながら、"苦労かけてごめんよ~。"と心の中で大きなため息をついた。苦労しないデータを渡すことができるのだが、そうではない苦労しなければならない状態で、自分達の構想として提示したのである。これも、彼らの意志ではもちろんなく、銀河連盟からの指示なのである。"間に合わなかったどうするんだよ?""間に合わないことは許されないのよね。""馬鹿野郎、糞女!"
 時間がないようで、あるともいえる。セイント・フェアリーはかなりの損害を受けている。今すぐ、その状態で日本に侵攻した場合、こちらも損害多数とはいえ、何とか撃退、防衛はできるだろう。彼らほどの損害比率ではないからだ。彼女らは、自力での戦力再建を図っていると同時に、国際連合に協力、主に必要な物資の、兵器、人員の製造に必要な物資の、供給を要請している。その協力要請に応える決議案の採択は遅れ、日本との和解を求めること、当面の休戦のため両者への戦闘に必要な物資の禁輸決議案と日本への戦略物資だけでなく、必要な物資提供も含めた全面禁止決議案と日本への国際連合の宣戦布告決議案は上程、否決が繰り返されていた。各国の判断での日本攻撃参加を容認する決議案も、紛糾の中、審議はなかなか進んでいない。何か国かは、少なくない国が既に日本攻撃に参加することを宣言、準備を始めている。日本政府も、何とか外交努力で時間を稼ごうとしている。のん気な平和主義者の期待のように、自分達の政府へのデモで、セイント・フェアリーが翻意する可能性は皆無だ。彼女らは、そのように作られているからだ。
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