第13話 「早く逃げて」「そううまくいくと思う?」「何故?」

文字数 3,203文字

 自衛隊の陸空海からの総攻撃が、これまた世界中の非難の大合唱の中、開始された、ホワイトムーンへの。
 主力は各地の陸上自衛隊機甲師団。各機甲師団が侵攻する中、それを支援する機動支隊、ブラックも加わった空からの地上支援、海側からの海上かのの護衛艦による対地攻撃。
「みんな早く逃げて!」
 長身で髪の長い魔法少女ドリームイエローが、拉致され、あるいは占領管理され、各種工場、兵器から衣食住までの、で強制懲罰奉仕されている男女の脱出を促していた。
「有難う。でも・・・。」
 同様に走り回る小柄なショートカットのブルーが、不思議そうに質問した。彼女は拉致され、改造・洗脳されていた魔法少女だが、イエローは人造魔法少女だった。ブルーは洗脳が解けた、だから・・・だが、イエローは違った。
「私はあなたとは違う。でも、何が正しいか、すべきことは何か分かっているの。この人たちを人質に、見せしめの処刑をさせてはならないと。」
「ありがとう。」
 ブルーには、涙をにじませながら、そう言うしかなかった。脱出口が目の前に見えてきた時、
「そううまくいくと思う?」
 猛犬戦隊ノラクロが、中背でマッチョではないが逞しい少年、その扉の前に立ちふさがっていた。彼も、人造戦隊だった。
 足を止めた、数十人の男女は怯え、魔法少女二人は身構えた。
「さあ、早くいけよ。追手は引き受けた。あまり時間は稼げないかもしれないが。」
と扉を開け、彼らの横をすり抜け、彼らの後方に向って身構えた。追手の足音が聞こえてきた。
「何故?」
「もう、君が全部言っているだろう?」
「わかったわよ。ブルー、あなたは行って、みんなを守って!」
「そ、そ、そんな・・・わかったわ。みんな行きましょう。二人の気持ちを無駄にしちゃだめよ!」
 感謝の言葉が二人の背に次々に投げられた。

「脱出者発見!数は78名、魔法少女一名が先導。ドリームブルーと確認。」
 AIの音声。
「ニャー、ニャオン、ニィアー。」
 脇のサバキチ・フォン・エルリック。
「脱出者確認。位置、情報を共有する。攻撃等注意されたし。本機は、彼らを、魔法少女と協力し援護、護衛する。至急、収容のためのヘリを送られたし。よし、サバキチいくぞ。魔法少女と初めての共闘だ。」
 翼をバンクさせながら、彼らの方向に降下していった。
「にゃおー!」
 複数のハッピー、ホッビーが空中から、地上からのパンダが脱出者に襲い掛かろうとしていた。
 パンダに下方機銃を放ちながら、ハッピー、ホッビーには機首の2機銃の銃弾を見舞う。パンダの背中に、ハッピーの胴体、ホッピーの人間のような顔を機銃弾が貫通する。
 それをかいくぐって迫ったホッビー一匹に、
「ドリームファイフー!」
の声とともに放たれた火炎の渦が包み込んで、一瞬で灰にしてしまった。

「主様~、だめだニァ~。AI、何とか言うニャ!」
 サバキチ・フォン・エルリックは、
「ニァー、ニァオ、ニャン。」
と訴えた。
「キケンジカンガナイ。ジカンガナイ。ハヤクテッシュウ。」
 AIの音声が響く。
"その通りニァー、主様!"
 しかし、ブラックは、戦隊少女隊員、勿論人造戦隊少女である、二人を両脇に抱え、魔法少女、勿論こちらも人造魔法少女、を一人を背に負ぶってよろよろと駆けていた。
「定員オーバーニャ!(ニャオーオーン!)」
「テイインオーバー。」
「おっさん。忠猫もAIも言っているよ。」
「あたし達、おじさんのような人と戦えて、そして知って幸せだった。だから、もういいよ!」
とか細い声で言う3人。
 後方では爆発音、撤退するホワイトムーンの機体等の発進音が交差していた。
「君達は心を持った。そして、君達のおかげで、多くの同胞が救われた、皆無事に脱出できたんだ。その君達を見捨てるなんて、天皇陛下に申し訳ないし、俺自身が許さないんだ。」
は、荒い息をしながら叫ぶように言った。
 ようやく愛機にたどり着き、彼女達を押し込んだ。
「ふえ。」
「はへ。」
「ほえ。」
と不自然な恰好になった3人の上に、重石のように座ったサバキチは、
「ニャオン(動くな。静かにしているニャ。)」
「ドウジョウシャ。コティセヨ。」
「よし。行くぞ。俺の腕を信じろ!俺は信じる、俺の愛機を!」
 自分に言い聞かせるように、機体を起動した。よろめきながらも、彼の愛機は動き出し、飛び出し、爆発の炎、衝撃を避けながら、狭い侵入口を逆に進み、見事にホワイトムーンの難波基地を飛び出した。
「囚われていた日本人は全員収容。改造魔法少女達も全員保護。あ、ブラック魔王も、もとい、ブラック一佐も脱出しました!」
 断末魔の基地、脱出者への攻撃が、空陸から数倍の激しさになった。
「人造体の始末、どうしようか?」
「あの3人、絶対、ブラックおじ様、と言って離れようとしなくなるわよ。」
「彼、少女多妻者と非難されるんじゃない?まあ、それは私達の管轄外だけど。」
「引き離されることになったら、良心がまた痛みそうだよ。」
 ホワイトムーンの拠点は、一つ、また一つと、陥落していった。
 同時に、彼女らが選抜した「良き日本人」達の実像も明らかになっていった。
「そもそも、彼らは日本人なの?」
 ホワイトムーンに保護されていた、一部は堅固な要塞に守られた都市の中で生活していたグループもいれば、要塞内のコールドスリープ施設で眠っていたものもいた、「日本人達」のことだった。
 戦いが、自衛隊の進撃が亜空間内の「鬼が島」、どうして、そのようなネーミングになったのかわからないが、へに進んだ。そこが、ホワイトムーンの最後の根拠地だった。
 その直前に、そこに半ばが保護された、というか、護られている「日本人達」と改造少女達のような存在と拉致などにより集められ奉仕させられている日本人達の取り扱いが問題になっていた。
 国連からは、良き「日本人達」の保護を要求してきた。
「わが国民であり・・・」
とまで矛盾する国々までいた。銀河連盟も、何故か彼らの保護の優先を打診してきた。もちろん、本来の日本人の保護のために必要な装備の提供は渋りながらである。彼らが、宇宙に提供する「日本人」ではないかと、何故か、いう考えを持つ一団が根強く残っているらしい。
 日本国内では、日本人の救出、保護が優先し、彼らの保護は二の次、配慮はするが、とする、犠牲が出てもやむを得ないというものが大半の意見だった。ただ、
「日本人は日本人だけではない。」
「我らの同胞を守ろう。」
という少数グループが海外のホワイトムーン支援団体と共闘して活動していた。
「作り物が何を言うか!」
 人造魔法少女達は、実態を語ると打って変わって、物呼ばわりの非難の応酬を受けたが、それにもめげずにあらゆるところで訴えた。改造魔法少女達も、裏切り者が、恩知らず、などの非難を受けても、同様に訴え続けていたが。ほんの少しづつではあるが、国際世論、宇宙世論を鎮静化させていった。その代わり、彼女らを引き取りたいという声も、少しづつ少なくなっていったが。
「おじ様。私が先導して、人々を助けます。大体の場所や施設の内容を知ってます。」
「ブラックおじ様。まだ洗脳が解除それていない魔法少女達を、絶対説得します。」 
「お・・・もとい、ブラック少佐殿。救っていただいた命、何時散ろうとも惜しくはありません。」
 3人の人造魔法少女達は、目をウルウルさせて、同行、作戦参加を懇願した、ブラック魔王少佐に。
"俺は、ロリコンじゃないですよ。どうしましょう?"
とブラックはセワシ博士の方に救いを求めるように顔を向けた。
「ミャーアーン!(何とか言ってニャ、博士!)」サバキチ・フォン・エルリック
「ハンダンハ?セワシハクシ」AI
"もう・・・ロリコンハーレムでも作ってくれ!"
と心の中で心臓の軋む音を感じながら叫んでいたセワシ博士は、静かに頷くしかなかった。
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