第5話 エンゼルアーツ殲滅戦

文字数 3,384文字

 国連は、エンゼルアーツとの決戦、彼らの本拠地、ゴビ砂漠に建設され、幾重ものバリアにより守られていた、への総攻撃を加盟国全てが一致協力して行うことを決議した。既に、国連軍として編成がなされており、決議はその決意表明、意思確認、事後必要な費用分担、参加機材の損傷の修理、死傷者への社会福祉等の費用である、の各国が負担金を拠出する約束のためである。セイント・フェラリーとの共同作戦の決議、それに必要な付帯決議もなされた。
 そして、どういうわけか日本に対しても戦力の拠出、それとは別個に各国軍事支出に対する負担、さらに、ご丁寧なことに、各国は日本の死傷者への負担は一切しないことが定められた。日本は手持ち弁当で参加するが、他国の負担の義務は持つということである。
 そのうえ上に、セイント・フェラリーの日本攻撃については、加盟国には義務は課さない、任意での参加とすることが決議された。つまり、日本をセイント・フェラリーとともに攻撃することは、国連としては、止めないし、罪には問わないということである。ただし、セイント・フェラリーの日本攻撃に反対する決議も上程はされている。ただし、賛成は過半数に届かず没だった。日本攻撃容認決議も棄権する国が多数出て、賛成票は加盟国の過半数をかなり下回っていた。
 そして、その日、日本の自衛隊からエンジェルアーツ殲滅のための部隊が出撃していった。
 だが、戦いはそれ以前に始まっていた。航空機なら、滑走路に並んでいる、出撃前の段階で叩く、それが常識的である。α号以下5隻の飛行船のような形状の航空戦闘艦の出撃は、エンゼルアーツの戦闘機、ミサイルの迎撃の真っ只中だった。宇宙空間への複数ミサイルから2種の高射機関砲、多連装無誘導多連装ロケット弾、携帯ミサイルまでの正に十重二十重の防空網に、三種の高度での各種の有人、無人戦闘機による迎撃網が全開だった。万能戦闘艦マイティ型3隻も、その迎撃戦闘に加わっていた。
 α号以下5隻自身も、戦闘しながらの出撃になったものの、幸いなことにほとんど損害を受けることなく、飛びたつことができた。基地施設、戦闘機の損害はかなりでたものの。
 α号以下4隻は、二つに分かれ、エンゼルアーツの静止衛星軌道にある2隻の要塞空母に向かった。ロケットで打ち上げられ、切り離された宇宙重戦闘機の一群と合流し、目標に向かった。要塞空母は、形はいわゆる空母とは似ても似つかぬものだし、大小様々な戦闘機等を搭載しているものの(その意味では空母だが)、防御兵器だけでなく、長距離攻撃兵器までどっさりもっている、その形はごつい、装飾過剰な鍋と蓋のような形だった。
 その中では、はっきりロボットと分かる、見える構成員が、その役目に応じて、右往左往していた。単純な無人施設よりも、半ば独立した個体多数が、別系統で支えるシステムがより有効であるからだ。エンゼルアーツのような存在、無慈悲に一つの星の住民を殲滅する役割を持ったものには、誰も愛着も感じさせない、無味乾燥なものが好ましいと思ったのだろう。そのことでの記録は、残っていないので不明だが。
「誰もいないよな?」
「探知機器には、反応していないから大丈夫よ。」
「ゴビ砂漠の本拠地も同じよ。観測ロボットとか強制転送装置はいらなかったんじゃない?」
「念には念を入れることが、必要だろう?費用と手前がかかって、文句を入れられたけど…、なにかあってからだと…。」
「本当ね。怒られるのは私達だもんね。」
「せめて、費用と手間もケチって文句言うな!と言いたいわね。」
 目的の性格が性格だけに、はっきりと無味乾燥な機械と分かるだけに、エンゼルアーツには、これを助けたいとかいう者達には、三博士は出会っていない。
 それでも、銀河連盟市民保護は万全を期さなければならない。だから、最後の最後まで、ということで、秘かに蚊程の大きさの監視飛行ロボット多数を転送していた。それが、銀河連盟市民を確認したら、即座に彼らをこちらに強制的に転送できるようにしていた。
 この転送装置を使って…等等簡単に全てを終わらせることは可能である。だが、それは禁止されている。
 エンゼル・アーツの要塞空母から、各種戦闘機、戦闘艇・艦が発進すると同時に、空間探知阻害弾が散布された。元々、セイント・フェアリー側のモビルスーツの活動を絶対的に優位にするための兵器だった。圧倒的に数的劣勢があるものの、これがあればセイント・フェアリー側が短期間で勝利が得られる可能性が高かった、高いと思っていた。実際、初戦では、かなりの損害を与えた。が、直ぐにエンゼルアーツ側は、それが散布された位置に、無差別集中攻撃することである程度の戦果を得る手法を編み出した。さらに、同様な兵器をつくり、対モビルスーツ用の小型宇宙自立型魚雷などを作成、さらに、まるで照明弾のような要領で一定の範囲では、それを無効化する兵器まで開発してしまった。エンゼルアーツを、優秀に作り過ぎた結果だった。それでも、セイント・フェアリーが日本を除く地球上の各国との連合・提携関係を作り上げ、数的にも対抗できるセイント・フェアリー・地球連合軍を形成させる時間を与えたのは確かである。
 このような兵器、銀河連盟にとっては、過去の遺物であるから、日本側に、彼らの全てを無効化できる兵器を与えれば、直ぐに片がつくが、それは許されていない。
 同様な対策を取ったα号以下が接近。両側の戦闘機による前哨戦が開始された。
 地球人の感覚では異形?としかいえないエイと古代魚が合体したようなエンゼルアーツの戦闘機と三角形の全翼機のような形の日本の42式戦闘機(よんに戦が通称)Cが空中戦に入っていた。エンゼルアーツの戦闘機のビーム砲を回避して、ミサイルを放ち、優越する機動力で後方に回り込み機関砲弾を放つ。一見ひどく旧式、原始的、前時代的兵器のように見えるが、逆に威力、効率はいいのだ。α号以下の近接防御火器も火を噴き始める。エンジェルアーツ側の重攻撃機をも撃墜しながら、要塞空母との直接の戦闘も開始する。エンゼルアーツの要塞空母の各種ビーム砲を回避、直撃を耐えながら、魚雷、ミサイルなのだが何故か大型のものを魚雷と言いたがるのだ日本人は、を回転発射機から放ち、船体から迫出した砲塔から誘導噴進砲弾が打ち出される。両者の姿は、かつての洋上での戦艦同士の砲撃戦のようにすら見えた。要塞空母のバリアが輝き、歪む。地上から発射されたミサイルが、迎撃ビームを回避しながらバリアに直撃する。続けて第二陣が来る。何度目かの主砲の斉射で1弾がバリアを貫いて直撃し、数発の衝撃波がその船体に打撃を与える。一発の魚雷の爆発の衝撃波が直撃、続けて一発が船体そのものに直撃、船体の第一装甲、第二装甲を打ち破り、内部に衝撃を走らせた。エンゼルアーツのダメージコントロール隊が駆け付ける。その前に、エンゼルアーツ側の潜入型アンドロイド、日本人の女性としか見えない外見だ、が立ちふさがった。携帯型対戦車ミサイルを矢継ぎ早に打ち放し、彼らを阻止する。メイン電子頭脳が、その事態に混乱しながらも、的確な対応を各方面に指示をだしていた。が、41式攻撃機D4型の編隊から大型ミサイルが放たれ、既に飽和寸前のバリアを突き破り、船体に直撃した。地上からの第三陣のミサイルが迫り、既に十数か所を直撃され、いたるところで応急修理隊が懸命の作業をしている中で、α号らの砲撃、魚雷攻撃は続行されていた。
 二隻の要塞空母は、時を経ずして爆沈した。その一隻から、自衛隊の戦闘機が飛び出していた。
「ナニヲキケンナコトヲシタ?」
「地球人としての礼だよ。それと・・・せ、戦友としてみすてられなかった・・・だけだ。」
「バカ・・・。」
 破損個所数か所の女性型アンドロイドと既におっさん化しかけている自衛隊二尉は悪態をつきあっていた。
「ツンデレ同士なんだから。」
「純粋の機械と人よ?」
 その機内の映像を見ながら、セワシ博士とノッソリ博士が突っ込みを入れていた。
「ゴビ砂漠の方は、まだまだ佳境よ。それに、あと一人残っていたわよ。」
 銀河連盟の市民が、総攻撃開始後に、なんと考えていなかったエンゼルアーツ支援者が数人確認されたのである、念のため送っていた捜索ロボットによって。


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