第17話 まだまだ日本にいるのね。

文字数 1,514文字

「モリモリがさあ、ゴールインしたのは、二人のラブラブイチャイチャの呆れるような、のろけ話を散々聞かされて、わかっていたから、当然かなとわかるし、納得できるけどさ・・・。なんで、セワシが、しかも上司とそういうことになったの?」
「わ、私は・・・。とにかくセワシのことはわからないわね、確かに。」
と女二人に睨まれて、セワシは冷や汗を流しながら、説明しなければならなかった。ちなみにモリモリの薬指には指輪が輝いていた。

「あなたもいい歳ね。付き合っている女性なんかいるの?」
 慰労ということで、夜、おしゃれなバーに連れて行かれて、酒をおごられた、上司に、のセワシだった。しかも、二人っきりで夜景の見える席だった。夜景、人工の光の点滅に過ぎないが、空気が澄み、地面の光も、地面を走るものも、空中を飛び交うものも光を抑えているから、星々もよく見える。日本は、地球は、努力しているがその域までは到達はしていない。それを持って、殲滅の一つの理由にしているわけだ、かつての銀河連盟の構成星系は。そんなこと言ったら、今現在の自分達もなかったのだ。こうして、口うるさい、結局は助けてくれたとも言える、美人だが年上の上司と、こうして室内の席から夜空の星々を見ながら、酒を傾ける自分達はいなかったろう。セワシは、そんな感傷に浸っていた。それが既に、この場所に酔い、思う壺にはまっていたのである、と後から思い当たった。
「私になんて、そんなのいませんよ。それを言うなら、課長はどうなんですか?」
「私なんて、もっと歳が上じゃない。誰にも相手にされないわよ。」
「そんなことはありませんよ。とても魅力的ですし、もし今、手を握られて、結婚して、なんて言われたら私なんか、頭に血が上って有頂天になって、即、はい、と言ってしまいますよ」
 あくまで、お世辞だった、彼女はすこぶるつきの美人だったが、かなり年上だったから、そのような感情はなかった。何故か、彼女の顔がパっと輝いたのを、心配になったものの、わかっているだろうと思っていた。
「じゃあ。」
と言って彼女はやにわに彼の手を握り締め、
「あなたが好きよ、結婚して。」
 驚いた。彼女の顔が真剣そのものだったので、驚き、慌て、怖くなったが、彼女は揶揄っていると分かった。最後は、
「何、本気になっているのよ。冗談よ。」
と言って笑い飛ばすだろうと思った。はい、と言わなければ、
「やっぱり嘘じゃない。」
と怒られるかもしれないとも思った。
 だから、
「はい。もちろんです。」
 零コンマ1で反応した。しかし、彼女は、ホットした表情になり、
「はい。不束者ですが、末永くよろしくね。」
そこまでいっても、冗談だと、揶揄っていると思った。
「もちろんです。」
と言ってしまった。その後は・・・、そのまま行きつくところにいってしまった。そしてあれよあれよという間に、婚約、結婚が決まってしまった。
「後悔しているような…していないような…。」
 ため息を何度もつくセワシに、
「もう諦めなさいよ。」
と自分の薬指の指輪を幸せそうに見るモリモリと、
「私ばかり、何にもないんだから…。」
とぶつくさ言うノッソリだった。
「と、とにかく、あいつらはどうなんだい?」
 あいつらとは、エンゼルアーツ、セイント・フェアリー、ホワイトムーンの元戦闘員達のことである。
「私の子達は、思ったより成長してくれているわよ。」
と何故かノッソリは胸を殊更はって応えた。エンゼルアーツの元戦闘員で、宇宙防衛研究所が引き取ったものは、人間的な反応すら示せるようにまで成長していた。もう直ぐ完璧、それが少し寂しいセワシだったが、彼女らは彼女を母のように慕って、この後も離れようとしなくなるのである。
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