第4話 屋根裏の管理人

文字数 317文字

夏花は、それから僕になぜか懐いた。
目の前にいる夏花は、あの頃よりも都会に染まっている。長い髪の毛先は金色に色が抜けている。
「乾杯!」
そう言ってストロングゼロを流し込む彼女は、サークルの誰よりも廃墟に熱を上げていた。細い足で歩き回り、このビルを見つけたのだろう。

荒れた室内、灰を浴びたような壁に、真夏の青空みたいな色で描かれた落書きがある。それは長い髪の天使だ。パイプ椅子やデスクが散らばった床には、シンナーの残骸もあれば、美しい外国の海を写した写真が棄てられている。

鼠か、猫か。
天井に足音が聞こえた。
「あ。来た。」
夏花が見上げる。
「野良猫かな。ホームレスとかいないよな。」
「違うよ。」
夏花は嬉しそうに広角を上げた。
「管理人さんだよ。」
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