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文字数 568文字
「…腹がへったよーーーーーっっ!!」
案の定、まこが騒ぎはじめたのは二時間目も終わらないうちだった。
「あー、そーかそーか、よしよし」
「ハラが、へった、んだ。」
「いいこだから席に戻って自習しな」
「チッ! せめて朝メシは喰ってから着げーるんだったぜっ」
「まったくだ。これで三日間は、メシ抜きだろうおまえ。」
……………。
ジト目光線が飛んでくる。
「冷たいなぁ、貴明っ」
「良い子のたかクンは年長者の味方でね」
「なーにが言いたいのかな?」
「 わかっていると、思うが」
周囲(まわり)のクスクス笑いにニガ虫を噛みつぶしている貴明である。
これではまるで、あぶない世界じゃないか。
「おれたち、親友だよなっ♪」
めげない。
貴明のネクラなもの言いでひるむくらいの浅いヤワいつきあいではない。
「 あ~~~…」
根負けして、早弁用だったパンを放ってやった。
「サンキュっ! え、ベントーじゃねーの?」
「今日は学食なんだ」
「ふ~ん……?」
とりあえずの収穫に意識気をとられたのか、めったにない事にも興味関心は示さず席にかえってゆく。
「やあだ、まこってば、早弁すんのー?」
キャラキャラ笑った女のコたちからお昼のピクニック用、ポットの紅茶をわけてもらって元気に食っている。
……今日はいい御身分だね、マコト君。
横目でにらんで、貴明はプリントに注意をもどした。