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文字数 1,494文字
「………えーい畜生、もう一本!」
はああっ …気合いもろとも貴明にぶつかっていくくる。
無制限勝負だから二人とも動きづめだ。借り物の防具も竹刀もさすがに学校備品だけあって体に合わないが、打ち込みはじめてしまえばそんなことはすぐに忘れる。
すり足で小手を狙う。はらって右胴にいく。
すくい上げて反すかたなで面、とっさによけてまた小手。
びしばしと、打ちこまれる数が多いのはまこの方だ。さすがに、半年のブランクはきついらしい。
「動きが甘い!」
すりぬけざまに見事な、胴をとられてとってみせるとやけを起こす。捨て身で免にいこうとしてこようとするのを
「上段にばかり構えるなって言ったろ!」
「ったぁ~~~~っっ」
痛烈に小手から竹刀をはじき飛ばされてす。よけそこなって尻もちをつく。
(おまえ、ホントにおれに惚れてんの?)
内心、ついあきれて訊いてしまうほど、それは厳しい一撃だった。
手加減がない。
それが、嬉しい。
「……くそっ!」
かまえ直すなりまた始める。
貴明は剣道で食べていくつもりだ。
まこはただただ、動くのが好きで、負けるのが嫌いだ。
二人で道場をやろうかなどと言っていたこともある。
たんなる子供の夢だったのだが、貴明は、もしかして違う意味で話していたのかも知れない。
好きだ、と言われて、まず感じたのは…
頭にくる、だった。
「おまえまで、女と思ってつきあってたのかよ」
なにを考えたのか冬休みにはいってから三日とあけずに電話をしてくるよこす貴明と、まこはさんざん喧嘩をしたのだ。
「そんなこと言ってないだろ」
「じゃあどういうつもりだよ」
まこの志望校を訊き、いっしょに受験しようという。
市内でもそれなりのレベルの公立校は、まこには楽だが、貴明にはけっこう苦しい賭けだったはずだ。
「おまえが男の恰好だろうがスカートはいて化粧しようが、オレは構わんけどな。世間さまにゲイだって思われるのがヤなだけで…」
「それじゃなにか? おまえは自分の世間体のためにおれの一生を犠牲にしよーってワケ」
「…先にひとを変態あつかいしたのはてめぇだろうが」
「エイズやだ」
「ならんとゆうにっ」
どこまで行っても話題は平行線で。
「だいたい
↑
(ここまでバッテンで全没w)
すくい上げて返すかたなで面、とっさによけてまた小手。
びしばしと、打ちこまれる数が多いのはまこの方だ。さすがに半年のブランクはきついらしい。
「動きが甘い!」
すりぬけざまに見事、胴をとってみせるとやけを起こした。
捨て身で面打ちにくるのへ
「上段にばかり構えるなって言ったろ!」
「ったぁ~~~~っっ」
痛烈に、小手から竹刀をはじき飛ばす。
よけそこなったまこは尻もちをつく。
「………おまえ、ホントにおれに惚れてんの?」
「 雑念!」
無責任な発言にいちいち相手をしていたら、まことつきあってなぞいられない。
ばすっと面をひと打ちしてやると、ふぃぎゃあと喚いて、それでも飛びおきるようにまこは構えなおした。
眼が、強い光をおびている。
手加減がない。
それが、まこにとって一番嬉しいのだということを、貴明は知っている。
「………くそっ!」
一瞬の間をとってまた始まる。
陽が、西にかたむくまで二人は疾りつづけていた。
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(参照したければ資料) ↓
http://85358.diarynote.jp/201705122043043563/
[(草稿 9) (まるごと半分まで「没」ページ☆)]
2017年5月12日 [リステラス星圏史略 (創作)]
(http://85358.diarynote.jp/?theme_id=18)