第6話 キャバクラ
文字数 723文字
突然あたりがキャバクラに変わった。ジャズの曲がほどよく流れ、明るい照明の下、豪華な店内で椅子にガマ、横須賀さん、ママ、マリアが座り、テーブルには高そうなシャンパンと沢山のグラスが置かれていた。誰の経験なのかすぐにわかった。マリアだ。ここは前にマリアがいたキャバクラだ。
と思った瞬間、バン、と大きな音がして、振り向くとマリアが右耳を抑えて床に倒れこんでいた。その横には仁王立ちした知らない若者が顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お前が悪いんだからな!」
最悪の展開に身動きできず、おろおろして彼女の右耳のあたりを大丈夫だろうかと見やる。そういえば、スナックでは彼女は自分のやや右側に立っていた。つまり彼女の右耳のあたりに自分の正面が来ていた。この時、右耳が不自由になってしまったとしたら?
はっと気づいた。であれば良く聞こえないのも当然だ。マリアさんはいつも、聞き返すときには左耳を自分の方に傾けていたのではなかったか。
男はそれだけ言うと会計で何か大声で言うと店内から出て行った。マネージャーらしき男がペコペコ謝っている。マリアはその場で座りなおした。
自分は、マリアのことを理解力が不足しているなどと考えていたのではないか。なんて思いあがったことを。彼女のことをまるでバカのように扱っていた。なんて最低な男なんだ、この自分は。マリアと目が合うと、マリアがかわいそうで、自分が情けなくて涙が出てきて、
「ごめん。痛かった?」
と手を差し伸べていた。
マリアは手を取り、立ち上がった。痛々しく右顔面を抑えながらもにっこり笑って言った。
「大丈夫よ、泣かなくても。あなたの優しい気持ちは伝わっているから」
自分は声を出して泣いた。ただただ申し訳なかった。
と思った瞬間、バン、と大きな音がして、振り向くとマリアが右耳を抑えて床に倒れこんでいた。その横には仁王立ちした知らない若者が顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お前が悪いんだからな!」
最悪の展開に身動きできず、おろおろして彼女の右耳のあたりを大丈夫だろうかと見やる。そういえば、スナックでは彼女は自分のやや右側に立っていた。つまり彼女の右耳のあたりに自分の正面が来ていた。この時、右耳が不自由になってしまったとしたら?
はっと気づいた。であれば良く聞こえないのも当然だ。マリアさんはいつも、聞き返すときには左耳を自分の方に傾けていたのではなかったか。
男はそれだけ言うと会計で何か大声で言うと店内から出て行った。マネージャーらしき男がペコペコ謝っている。マリアはその場で座りなおした。
自分は、マリアのことを理解力が不足しているなどと考えていたのではないか。なんて思いあがったことを。彼女のことをまるでバカのように扱っていた。なんて最低な男なんだ、この自分は。マリアと目が合うと、マリアがかわいそうで、自分が情けなくて涙が出てきて、
「ごめん。痛かった?」
と手を差し伸べていた。
マリアは手を取り、立ち上がった。痛々しく右顔面を抑えながらもにっこり笑って言った。
「大丈夫よ、泣かなくても。あなたの優しい気持ちは伝わっているから」
自分は声を出して泣いた。ただただ申し訳なかった。