第7話

文字数 504文字

奈津が少年を連れて部屋に行くと、リョウは目を円くして文庫本を放り出した。
「おい、少年、少年だよな?どうしたんだ」
茶化しながら、リョウも口角が上がっている。シュウは気恥ずかしそうに頭をかいた。
「ちょっと手を加えてあげたのよ」
リョウの反応に自信を持った奈津は胸を張った。
「へぇぇ、すげぇ」
リョウはしばらく口を開けていたが、モジモジしている少年の肩を抱いて「おまえ、男でやっていけなかったら、女でもいけるぞ」と変なことを言った。
「自信持てよ。格好良いぞ。いや、可愛いって言った方がいいのか?」
シュウはついに笑った。
「ありがとうございます。まだ、『格好良い』の方がいいです」

翌日昼過ぎ、リョウと奈津は遅めのチェックアウトをした。旅館の朝食で満腹になったら、また眠くなってしまったのだ。
「ごゆっくりしていただけましたか」
女将が笑いかける。
その時、ガラガラと戸が開いてシュウが帰ってきた。長かった髪がすっぱりと切られている。
「あれ、さっぱりしたねぇ」
女将も少し驚いていた。
「うん」
少年は笑い返して、意味ありげに頷いてみせた。前髪が眉毛にかかる程度に短くなり、だいぶ爽やかになっていた。
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