第4話

文字数 347文字

旅館の夜は楽しく過ぎた。山の幸に彩られた夕食を堪能し、2人は貸し切り温泉に浸かった。
「シュウ君、どう思う?」
リョウは湯船の中で奈津に問いかけた。黒の濃淡に縁取られた山並みが美しい。
「可哀想だけど、そんなに酷いいじめでもなさそうだよね」
奈津も中学生の頃、標的になったことがある。机に花が置かれたり靴がなくなったりと、古典的な手口は一通り経験した。でも、一番辛いのは「無視」だった。こづき回される程度なら、我慢できる。ケガさえなければ。
「そうだよなぁ。でもあの子、少し心配だな。危ういっていうの?気が弱そうだから」
「そうかもね」
なんだ、この男、人のことちゃんと心配するんだ。奈津はお門違いだと分かりながら、考えずにいられなかった。その半分でも、私の方に注意を向けてくれればいいのに。
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