第3話

文字数 429文字

土曜日の遅い朝、テレビからの聞こえてきた声に私の中の何かが反応した。

40歳になった私は地方情報誌のライターをしている。
19歳の運命だと思っていた恋の後、人並みにそれなりに恋はしたが結婚には至らなかった。気ままな生活。
1人で暮らしていると音に敏感になる。
なんだろう。この声。懐かしく、切ない。
画面には私の暮らす地方都市を有名人が旅をしている場面。有名な温泉地のレストランを紹介している。地元産の小麦粉を使ったピザを爆食で売れている美女が頬張っている。
「こちらの生地は地元産の小麦粉を使用し、地元野菜をトッピングした当店イチオシのメニューです。」
この声。
そうやはり秀ちゃんの声。20年ぶりに聴く大好きな声。
画面には数秒しか映らなかったが、あのコックコートで黒いマスク姿の男性が秀ちゃんなのだ。
全身の細胞が目覚める感覚がした。
まわりのもの全てがフィクションに感じながら暮らしてきたが、秀ちゃんが私の人生に再登場した今。再びノンフィクションのストーリーが動き出した。
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