第2話

文字数 650文字

秀ちゃんは私の勤める結婚式場からほど近いワンルームのアパートに暮らしていた。足を踏み入れた瞬間、また恋に落ちていく感覚がした。
足の踏み場がないくらい散らかっていて壁一面によくわからないフィギュア。
男の子の部屋。ゆるぎない男の子の部屋。この部屋を片付けたくてたまらなかった。
「ハムスターいるんだ。」
「え?どこに?生きてる?」
生存の危ぶまれるハムスターはケージに守られて無事だった。
徹夜で温泉からアパートへ戻ってきた私たちは肉体的に結ばれて私は夢心地のまま出勤した。
肉体的に結ばれても精神的な繋がりは持てないことを当事の私は知らなかった。
相手も同じ熱量で恋に落ちておると勘違いさえしていた。ただ、そういう精神状態に陥れる事は貴重で尊いものと今でも信じている。

実家暮らしだった私は初めての無断外泊の言い訳と恋人への別れ話と寝不足を解消し2日後、秀ちゃんのアパートを訪ねた。応答なし。携帯電話にも連絡してみたが、応答なし。
そういえば次の約束もしていなければ、愛の告白のしていないし、もちろんされてもいない。
でも、私の心は信じて疑わなかった 運命の恋を。

拒絶されていることは分かったが、諦めきれない私は秀ちゃんのアパート近くに部屋を借り、偶然の再会を期待した。運命的な繋がりを信じていたから偶然はもはや必然であるはずだった。
退社後 秀ちゃんのアパートをただ見つめる日々。ストーカー。ストーカーするにも秀ちゃんの情報が少な過ぎてできない。
そしてある日気が付いた。私が切なく見つめていた部屋にもう住人はいなかった。


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