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文字数 812文字

 すると、返事もなくガチャリと扉が開いた。
60代位の頭の禿げ上がった、頭の横に白い毛の残る人が、訝しげに出てきた。
 私はニッコリ笑うと、

「気象庁から来ました。山野影虎(ヤマノカゲトラ)と申します。斎藤さんの使いで来ました」

と言うと。
天地さんだろう人は、ニッコリ笑って、

「そうか、そうか、待っていた。さあ、入って入って」

と歓迎された。
 ホッ、良かった。気難しそうな人ではなかった。私は、

「お邪魔します」

と靴を脱いでスリッパは無く、そのまま、靴下履きのままで廊下を、天地さんの後に続いた。
天地さんは裸足だった。
 やっぱ一人暮らしかな?そんな気がした。
案内されたのは、天地さんの部屋の様だった。
大きなデスクが中央にあり。色んな書類が積んであり。他にも、いくつか普通サイズの机があり。パソコンやらノートやらが置いてあった。

 更には、奥に何やら分からない、所謂ガラスのケースがあった。
何か小動物を飼っているのだろうなとは、臭いで分かったが。トカゲ?なのか、亀なのか虫なのかは、分からなかった。
それがいくつもあって。何やら野性的な臭いがした。金魚の類ではないなと直ぐに分かった。

 私を大きな中央デスクの、長い方の辺の壁にくっつけた、ソファーに座るよう促した。
天地さんは対面に椅子を持ってきて座った。
私は座る前に、名刺を出そうとした。すると、

「いやいや、要らないよ。もう仕事はしてないから」

と言って断られた。一応、名刺をデスクに置いてソファーに座った。
 すると、天地さん立ち上がり、

「コーヒー?お茶?水?」

と聞くので。

「コーヒーがあれば、お願いします」

と答えた。天地さんはガラスケース集団の反対側に行くと。お茶セットの様な物が置かれた、キャビネットの上で。インスタントコーヒーを淹れてくれた。私は、

「クリームと砂糖も、あれば」

と、こっちを見て伺う、天地さんに言った。
 とってもフレンドリーなんだ。良かった。
私の緊張は、段々と解れていった。
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